日経ナショナル ジオグラフィック社

この湖における針鉄鉱のサイクルが季節的なモンスーンによって引き起こされた可能性があると、研究チームは考えている。マグラス・フラットでこれまで発見された花の化石は、ほとんどが開花前のものであることから、毎年同じ時期にこの現象が起こっていただろうと見ている。また、現代の生態系では春と夏にしか見られない昆虫の化石も多く見つかっている。

マカリー氏とフリース氏は、マグラス・フラットの推定年代をさらに細分化しようとしている。そうすれば、熱帯雨林だったマグラス・フラットがどのようにして今のような乾燥した灌木(かんぼく)地に変化していったのかを理解し、さらに現代の世界にある熱帯雨林が、この先気候変動にどう反応するかについても手がかりが得られるかもしれない。

過去から未来へ

中新世の初期から中期にかけて、大気中の二酸化炭素の濃度はおよそ400~500PPM(PPMは100万分の1)だった。これは、近い将来、人間活動によってもたらされると推定される二酸化炭素濃度の値に近い。また、中新世は長い間温暖な気候が続いていた時期だった。特に1700万~1400万年前の中新世中期は最も暖かく、ちょうどマグラス・フラットの化石の時代がこの期間に含まれていた可能性がある。

中国科学院の古生物学者である王波氏は、今回の研究には参加していないが、次のように述べている。「今回の論文は、現代の地球温暖化に直面している熱帯雨林の生態系が、これからどのように変化していくのかを理解する助けになるかもしれません。論文によると、オーストラリアでは熱帯の生物相が少なくとも南緯37度まで達していたようですが、それがいつ現れ、いつ消えたのか、なぜそうなったのかまではわかっていません」

その変化についてさらに詳しく調べるために、マカリー氏とフリース氏は、マグラス・フラットでの発掘調査を続ける。「鳥の羽が非常に良い状態で化石化することはわかりましたが、鳥の体全体の化石も見つけたいです。きっと、それも保存状態がかなりいいはずです」

しかし、既に発見されている化石に関してだけでも、研究することは山ほどある。「この先10年は、研究対象に困ることはないでしょう」と、マカリー氏は言う。

(文 MICHAEL GRESHKO、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2022年1月15日付]