進化で失くし進化で復活 2億年ぶりにカエルに下の歯

2021/12/3
ナショナルジオグラフィック日本版

進化理論「ドロの法則」に反して、失われた歯を再び進化させたフクロアマガエル属の1種ガストロテカ・グエンテリ(Gastrotheca guentheri)の標本。手のひらに乗る程度の大きさだ。米フロリダ自然史博物館蔵(PHOTOGRAPH COURTESY OF ZACH RANDALL, FLORIDA MUSEUM OF NATURAL HISTORY)

フクロアマガエル属の1種ガストロテカ・グエンテリ(Gastrotheca guentheri)は、手足が長く、目の上の角が特徴的だ。さらに不思議なことに、G・グエンテリの顎には歯が完全に生えそろっている。

ちょっと待った、カエルに歯なんてあっただろうか? 実はあるのだ。多くのカエルは、上顎に数本の歯をもっている。しかし、現存する約7000種のカエルのほぼすべては、下顎の歯をもっていない。その唯一の例外がG・グエンテリであることを初めて証明した分析結果が、2021年11月9日付で学術誌「Evolution」に掲載された。

G・グエンテリはアンデス山脈の雲霧林に生息している。他のフクロアマガエル属と同様に、オタマジャクシは自由に泳ぎ回るのではなく、親の背中にある袋の中で育つ。

残念ながら、G・グエンテリは1996年以降目撃されていない。それ以前もほとんど目撃されておらず、研究もされていなかった。博物館に収蔵されている標本の数も少なく、全世界で30体に満たないと言われている。結果として、歯の実物を撮影した画像もなかった。

研究が進んでいないため、G・グエンテリについては多くの疑問が未解決のまま残されていた。下顎に歯があるように見え、長く歯だと考えられてきたものの、これは本当に歯なのか。そして、顎はどんな形をしているのか、といったごく単純な謎もその一つだった。

米フロリダ大学の博士課程に在籍する爬虫(はちゅう)両生類学者のダニエル・パルー氏は、この知識の穴を埋めたいと考えた。氏は米フロリダ自然史博物館の同僚とともに、マイクロCT(コンピューター断層撮影装置)スキャナーを使って、何十年もアルコールの中に保存されていたG・グエンテリの標本6体の頭骨の画像を撮影した。すべて米カンザス大学自然史博物館に収蔵されていたものだ。

G・グエンテリの顎と歯の世界初のCT画像(CT SCAN BY DANIEL PALUH)
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失われ、取り戻された歯