日経PC21

前の第11世代から大幅に性能アップ

ここで、CPUの基礎知識をおさらいしておこう。図4はインテルCPUの世代の見分け方と現行ラインアップだ。現在、市場では、前述の第12世代のほか第11世代と第10世代のCoreシリーズを搭載したパソコンが販売されている。

図4 インテルの現行CPUのまとめ。デスクトップパソコン向け、ノートパソコン向けともに世代が新しいほど高性能だ。世代は、プロセッサーナンバーの冒頭2桁の数字で判別可能。例えばCore i9-12900Kであれば、先頭の2桁が「12」なので第12世代だ

CPUは、世代が新しいほど、内部構造などが改良されており性能が高い。例えば、第11世代のCore i3の性能が第10世代のCore i7の性能を上回るなど、世代が変わると下のシリーズのほうが性能が高くなる場合もある。性能を重視するなら、多少高価であっても最新世代のCPUを搭載した製品を選択したい。

デスクトップパソコンは、すでに第12世代Coreを搭載した製品が発売済み。ノートパソコンは、搭載製品が4月くらいから登場し始め、ラインアップが充実するのは夏以降になるとみられる。性能重視でノートパソコンを選ぶなら、第12世代搭載製品が出そろうまで待つほうが選択肢が増える。

性能よりもコストパフォーマンス重視というのであれば、価格がこなれている第11世代Core搭載ノートパソコンも十分選択肢になり得る。第11世代Coreは第10世代Coreと比較すると格段に高性能で、機能は第12世代Coreと遜色ないからだ。

CPUの選択肢としてはAMDのRyzenもある。図5はRyzenの世代の見分け方と現行ラインアップだ。Ryzenは、デスクトップパソコン向け、ノートパソコン向けともに、4000シリーズ、5000シリーズなど、千の値の数字が大きいほうが世代が新しい。デスクトップパソコン向けでは、当面は5000シリーズが第12世代Core対抗となる。ノートパソコン向けでは6000シリーズが近々登場予定だ。

図5 AMD のRyzenは、4000シリーズ、5000シリーズ、6000シリーズに分かれる。数字が大きいほど世代が新しく高性能だ。シリーズはプロセッサーナンバーで確認できる。デスクトップ向けで4000Gのように末尾にGが付くものはGPUを内蔵したシリーズ。ノート向けは全シリーズでGPUを内蔵する

最近、費用対効果の高さから国内外のパソコンで採用例が増えているRyzenだが、インテルの第12世代Coreとの性能差も気になるところ。日経PC21編集部ではデスクトップパソコン向けCPUを用いて各種検証を行った。

第12世代は性能が格段に向上

検証に用いたのは、第12世代の最上位「Core i9-12900K(16コア/24スレッド)」と第11世代の最上位「Core i9-11900K(8コア/16スレッド)」、AMD CPUの最上位「Ryzen 9 5950X(16コア/32スレッド)」と「Ryzen 9 5900X(12コア/24スレッド)」だ。

まずはCPU単体の演算性能から見ていこう(図6)。シングルコアの性能で比べると、Core i9-12900KのスコアはCore i9-11900Kより266も高い。CPUの演算性能を測るベンチマークソフト「CINEBENCH R23」のシングルコアのスコアでこの差はかなり大きい。第12世代Coreはコア自体の演算性能が前世代から大幅に向上していると見てよい。マルチコア性能は、コア数やスレッド数が増えていることもあり、格段の差だ。AMDのCPUと比較してもその優位性は明らか。最上位のRyzen 9 5950Xに対しても、シングルコア性能、マルチコア性能ともに大きな差をつけた。

図6 「CINEBENCH R23」でデスクトップパソコン向けCPUの演算性能を比較した結果。第12世代の最上位Core i9-12900K(16コア/24スレッド)は、シングルコアの性能が前世代の最上位Core i9-11900K(8コア/16スレッド)よりも大きく向上している。そのため、コア数が増えていることもあり、マルチコア性能は格段の差だ。前世代では後じんを拝していたAMDのRyzenに対しても、シングルコア性能、マルチコア性能ともに大きく上回っている

図7は、実アプリを動作させシステム全体の性能を計測する「PCMark 10」の結果だ。すべての項目でCore i9-12900KがCore i9-11900Kを大きく上回っている。実アプリの処理性能に関しても優秀だ。AMD CPUに対してもすべての項目で上回った。

図7 実アプリを動作させてシステム全体の性能を計測する「PCMark 10」のテスト結果。「Essentials」はアプリケーションの起動速度やウェブブラウジング関連の処理性能を、「Productivity」は表計算アプリやワープロアプリの処理性能を計測したスコアだ。また、「Digital ContentCreation」は写真や動画編集、3次元レンダリングなどデジタルコンテンツ制作に関わる作業の処理性能を、「Gaming」はゲーム関連の処理性能を計測した数値だ。全体的にCore i9-12900Kが高い性能を示しているが、コア数/スレッド数よりもコア自体の性能が強く影響するEssentialsでAMD CPUを大きく上回っている点に注目したい

図8は実際のゲームベースのベンチマークテスト結果だ。第12世代Coreが他を圧倒しており、ゲーミング用途でも威力を発揮することがわかる。

図8 アクションゲーム「WatchDogs Legion」で実ゲームベースの性能を比較した結果だ。同じグラフィックスボードを使用しているため、スコアの差はCPUによるところが大きくなる。こちらは前世代のCore i9-11900KもAMDのRyzen 9より高いフレームレートを実現しているが、Core i9-12900Kはより高いフレームレートをたたき出している。ゲームにおいてもCore i9-12900Kは抜群の性能を発揮すると見てよい

以上の結果から、第12世代Coreは前世代と比べ性能が格段に高く、AMD CPUを大きく上回る性能を有することがわかる。ノートパソコン向けもアーキテクチャーは変わらないので、性能に関して期待が持てそうだ。

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デスクトップ向けの下位がEコア非搭載の理由とは