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空飛ぶ学者が調査 イラン「ルリスタン青銅器」の謎

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ナショナルジオグラフィック日本版

1920年代後半、精巧な青銅器が古美術品市場に溢(あふ)れ出した。人物や動物をかたどった馬具やピン、浮き彫りを施したカップなど、どれも繊細で美しい品々ばかりだったが、その由来について詳しく知る者はいなかった。美術商たちに尋ねても、詳しい地名や集落ではなく、イランのザグロス山地にある一地方を示すのみだった。ルリスタン(現在のロレスタン)だ。

ルリスタン青銅器の氾濫は、1928年秋、イラン西部のハルシンという静かな町から始まった。ある農民が畑で美しい青銅器をいくつか発見したのがきっかけだ。噂は広がり、やがて町には美術商が殺到するようになり、青銅器は博物館や個人収集家へと売り渡された。

学者や地元の人々の間からは、自分たちも青銅器を発掘したいという声が多かった。当時のイラン考古学局長アンドレ・ゴダールは、地元の人々が遺跡を発見する方法についてこう書いた。まず、泉を見つける。泉が見つかれば、近くに集落と墓地があった可能性が高い。

この方法は、単純で効果的だった。水源を探せば、古代のネクロポリス(墓地)はそう遠くなかったのだ。

空飛ぶ考古学者

西洋の考古学者で最初にルリスタンの青銅器を調査したのは、ドイツ生まれの考古学者エーリッヒ・シュミットだった。1935年に開始された調査は、妻メアリー・ヘレンのおかげで先進的なものとなった。

メアリー・ヘレンは、飛行機を使って上空から遺跡を観察することを提唱し、実際に飛行機を購入した。「イランの友」と名付けられたこの飛行機は、ルリスタンだけでなく、シュミットがその後に研究することになるペルセポリス(ペルシャ帝国の古都)など、イランのさまざまな遺跡を調査する際に使われた。観測飛行はイランの許可を得た後の1935〜36年、1937年に行われている。シュミットの空撮は遺跡の記録としてだけでなく、発掘を計画的に進める上でも貴重なものとなった。

1938年6月、シュミットのチームはルリスタンの集落跡、スルフダムを探検した。無許可の発掘によって多くの青銅器が既に持ち去られていたものの、地元当局が略奪を規制するようになったことで、シュミットは残された遺物の発掘に力を注ぐことができた。

チームはスルフダムで、青銅器や象牙、陶磁器などを発見することができた。1920年代に出回っていた青銅器と同様の技術や様式を持つ品々だ。スルフダムでの発掘調査は、神殿や礼拝所と見られる建造物を中心に行われた。石を縦に並べて壁とし、大きな石板を天井にした石室墓からも遺物が出土している。

ルリスタン青銅器の年代を確定することは困難だった。考古学者は地層をもとに年代を推定するが、大規模な略奪によって周辺の地層が破壊されていたからだ。

ルリスタン青銅器の年代を特定することができるようになったのは、比較的最近のこと。1965年から1979年にかけて、ベルギーのゲント大学とブリュッセル王立博物館がルリスタン西部で発掘調査を行い、多くの出土品を含む集合墳墓を発見した。地層が無傷だったおかげで、より正確な年代を測定できた。結果として、ルリスタンの青銅器は紀元前11世紀~紀元前7世紀半ば、いわゆる「ルリスタン後期鉄器時代」と呼ばれる時期に作られたことがわかった。

美しい品々を作ったのが誰だったのかは、いまだに不明だ。この地域に住んでいたインド・ヨーロッパ系のメデス人や、ロシア南部を起源とし、紀元前8世紀にルリスタンに移住した可能性のある遊牧民キンメリア人などが考えられている。

一方で、この地域で発見された剣に刻まれた楔形(くさびがた)文字は、紀元前16世紀ごろにルリスタンに定住し、紀元前12世紀初頭までメソポタミア中南部を支配したカッシート人の存在を示唆している。

豊かなイメージ

ルリスタンからは驚くほど多様な品が出土しているが、そのほとんどは馬具、スタンダード(儀仗[ぎじょう]の先端に固定されていた装飾品)、そしてピンの3つに大別される。短剣、槍(やり)、斧(おの)などの武器を含め、他の青銅器も発見されているが、それほど多くはない。

出土したスタンダードの特徴は、ヤギなどの動物をモチーフにした複雑な図像だ。なかでも最もよく知られて特徴的なのは、いわゆる「マスター・オブ・アニマル」と呼ばれるモチーフだろう。動物の首をつかんだ人物(通常は男性だが、女性もある)をかたどっている。

動物の種類はさまざまで、大型ネコ科動物や猛禽(もうきん)類から、グリフィンやスフィンクスといった神話に登場する獣まで、多岐にわたる。こうしたモチーフは他の古代文明にも共通している。マスター・オブ・アニマルは、シュメールやメソポタミアの美術にも登場し、自然に対する人間の支配を象徴するものと考えられている。

壮麗な馬具類は、それらを作った人々が遊牧民だったことを裏付けている。考古学者のパオロ・マッティアエは、次のように書いている。「最も頻繁に発見されるのはハミ(馬の口にくわえさせる馬具)だ。動物をかたどった2枚の頬当てには穴が開いており、そこにハミとなる棒状の部分を差して使う」。図像のレパートリーは、雄牛、ライオン、アイベックス(ヤギの仲間)などだが、グリフィンやスフィンクスという場合もある。

また、日用品も発見されている。最もよく知られているのはピンで、その用途はいまだに議論の的だ。ある学者は、ピンは奉納品であると考え、また別の学者は、衣服を留めるという実用的な目的のために使われたと考えている。ピンのモチーフは、女神、動物、そしてマスター・オブ・アニマルなど、さまざまだ。

最後に紹介するのは、底に小さな隆起のある円筒形の容器、ビーカー。外側には浮き彫りが施され、使用人や音楽家を従えた重要人物が登場する晩餐会(ばんさんかい)などが表現されている。

(文 ANTONIO RATTI、訳 桜木敬子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 日本版サイト 2022年1月11日付]

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