肝臓と胆嚢(のう)、胆管の構造

健康診断の検査値でおなじみの「γ-GTP」は、胆管でつくられる酵素だ。肝臓の細胞が壊れると血液中に放出されるため、その量によって肝機能を調べることができる(原図=123RF)

酒を飲み過ぎて肝臓に脂肪がたまる「アルコール性脂肪肝」になると、γ-GTPの値は高くなる。γ-GTPが100を超えるような場合は、脂肪肝などによって肝臓に障害が起きている可能性があるので、医療機関を受診したほうがいいそうだ。

「ただし、γ-GTPはアルコールに敏感に反応するので、肝臓に大きな障害がなくても、普段からよくお酒を飲む人は値が高くなります。そのような場合は、一定期間禁酒したあとにまた検査すれば、γ-GTPは下がります。一定期間禁酒したあとの検査でもγ-GTPが下がらなければ、やはり肝臓などに障害がある可能性が高くなります」(浅部さん)

γ-GTPは肝機能に関するメジャーな検査値だが、アルコールの影響を受けやすく、検査の前によく飲んだ日が続くと高く出てしまうことがある。また、酒にすごく強い人は、たくさん飲んでもγ-GTPがあまり上がらず、気づかないうちに肝臓がダメージを受けているということもある。この値だけを見て肝機能を判断するのはキケンなのだ。

γ-GTPよりも浅部さんが「怖い指標」と考えているのは、「ALT」だ。ALTは肝臓でつくられる酵素で、アミノ酸の代謝に関わる働きをしている。肝臓の細胞が壊れると血液中に放出されるため、やはり肝機能の指標として使われている。

「ALTの基準値は、5~30U/Lです。これが50を超えるような場合は、医療機関を受診してください。もし100を超えたら、脂肪肝や慢性肝炎の疑いがありますので要注意です」(浅部さん)

脂肪肝は、肝硬変や肝臓がんにつながることも

酒飲みに多いのは、何と言っても脂肪肝だろう。脂肪肝とは、何らかの原因で肝臓の細胞の30%以上に脂肪(中性脂肪)が蓄積している状態のことだ。前回、解説したように、酒を多く飲むと中性脂肪がたまりやすくなるので、脂肪肝は酒飲みの宿命といえるかもしれない。

浅部さんは、「日本人の成人の約3割は脂肪肝であるという報告もあります。特に中高年男性なら半数が脂肪肝であると考えられるぐらい、身近なものです」と指摘する。

脂肪肝がやっかいなのは、放置するとやがて肝臓がカチカチに硬くなる「肝硬変」につながる場合があることだ。

「脂肪肝には、いくつか種類があります。お酒を飲み過ぎた人がなるのが『アルコール性脂肪肝』、お酒をあまり飲んでいなくても食べ過ぎや運動不足などで肝臓に脂肪がたまるのが『非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:ナッフルディー)』です。脂肪肝は男性に多い疾患ですが、閉経後の女性も注意が必要です」(浅部さん)

NAFLDの80~90%は、長期にわたって経過を見ても脂肪肝のままで病気は進行しない(単純性脂肪肝)。しかし、残りの10~20%は徐々に悪化して、肝硬変や肝臓がんを発症することがある。この脂肪肝から少しずつ進行していく病気は、「非アルコール性脂肪肝炎(NASH:ナッシュ)」と呼ばれる。

脂肪肝の分類

脂肪肝は、脂肪の蓄積具合によって、軽度、中度、重度の3段階があり、腹部エコー検査やCT(コンピューター断層撮影)検査によって診断される。怖いのは、「肝臓は沈黙の臓器」というだけあって、自覚症状がほとんどないというところだ。

「アルコール性脂肪肝であれば、原因がはっきりしているので、飲酒量を減らしたり、場合によっては断酒する必要があります。NASHの場合は、病名に『非アルコール性』という言葉が入っていますが、お酒と無関係ではありません。というのも、NASHの人が飲酒すると、肝臓の炎症がひどくなることがあるのです」(浅部さん)

ああ、耳にしたくない「断酒」というワードが! 「脂肪肝で断酒」なんてことにならないためにも、健康診断の検査結果、特にALTは軽視してはならないのだ。

なお、NASHをそのまま放置すると、5~10年かけ、じわじわと肝硬変や肝臓がんへと進行していく場合がある。食生活を見直したり、ダイエットや運動に加え、アルコールも適量といわれる1日20g(純アルコール換算。ビールなら中瓶1本、日本酒なら1合)以内に抑えたほうがいいそうだ。

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健診の数値が悪い人はお酒を飲み続けてもいいのか?