脂肪肝で断酒は避けたい 気をつけたい肝機能のALT値

日経Gooday

コロナ禍での運動不足などにより、健康診断の結果が悪化したという人も多い。その場合、これまでと同じようにお酒を飲み続けてもいいのだろうか(写真はイメージ=123RF)
日経Gooday(グッデイ)

お酒が好きな人は、「自分が酒を飲み続けることでどのような病気のリスクが上がるのか」をきちんと把握することが大切です。酒ジャーナリストの葉石かおりさんが、肝臓専門医の浅部伸一さんに、新年に改めて理解したい「健康診断の結果を基に考える酒による病気のリスク」について話を聞きました。

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あけましておめでとうございます。

さて……正月といえば、やはり酒。みなさん、どのくらい飲まれただろうか。

コロナ禍では、飲食店での酒類の提供がなくなったこともあり、「飲む機会が減った」という方も多かったと思う。

そして、緊急事態宣言が明け、久しぶりに外で酒を飲んで、「あれ、弱くなっている」と感じた人もいるのではないだろうか。前回(外飲みが増える今 改めて知るアルコールと肝臓のこと)、自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科元准教授で肝臓専門医の浅部伸一さんに、しばらく酒を飲まないでいると酒に弱くなってしまうメカニズムについて聞いた。

アルコールの代謝経路には大きく2つあり、そのうちの1つは薬などの代謝で使われる「MEOS(ミクロゾーム・エタノール酸化酵素系)」という酵素群によるもの。酒を飲み続けるとMEOSが誘導されて、アルコールの代謝に使われるようになり、次第に酒に強くなってくる。これがいわゆる、「鍛えられて強くなった状態」だ。ところが、しばらく飲まないでいると、MEOSがアルコールの代謝に使われなくなるので、弱くなってしまう、というわけだ。

一方で、「コロナ禍では、毎晩自宅で飲んでいたので、酒量が増えてしまった」という酒好きもいるだろう。家で飲むと、終電を気にする必要もなく、ダラダラと好きなだけ酒を飲めてしまう。気がつけば飲む量がどんどん増えてしまい、「このままで大丈夫だろうか」と不安になってくる。

若い頃のようには飲めないし、いっそ酒量を減らそうか。それとも休肝日を決めたり、酒の種類を替えたりしようか……。今年の正月に、こんなふうに酒との付き合い方を改めて考えた人も多いかもしれない。

酒との付き合い方を再考するには、飲むことで病気のリスクがどれぐらい上がるのか、ということがポイントとなる。

そこで、健康診断や人間ドックなどの検査結果の数値を基に、飲酒と病気のリスクをどう考えればいいのかについて、浅部さんに引き続き話を伺おう。

「γ-GTP」は飲み過ぎただけでも上がる

筋金入りの酒飲みは、健康診断の「数値の悪さ」を自慢しがちである。筆者の周囲でも、特に肝機能の指標とされるγ-GTPが「3桁だった」などと言ったりする人が多い。

先生、そもそもγ-GTPは何を表しているものなのでしょうか。

「γ-GTPは胆管でつくられる酵素で、たんぱく質を分解し、肝臓での解毒作用に関わっています。肝臓や胆管の細胞が壊れると血液中にγ-GTPが流れ出てくるので、肝機能の指標として使われます。基準値は、検査する医療機関によって異なりますが、50IU/L以下などとなっています」(浅部さん)

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脂肪肝は、肝硬変や肝臓がんにつながることも