2021/12/6

この営巣地を見つけたメスのカラカルを捕獲して別の場所に放したところ、近くに定着させることに成功した。ところが、そのメスの子どものうち、1匹のオスが母親のいたペンギンの営巣地に現れ、捕獲されるまでの1年近くの間に推定260羽ほどのペンギンを殺した。このオスも、のちに近くの自然保護区に移されたが、数日後に保護区を出て、車にひかれてしまった。

幸い、カラカルが積極的にペンギンを探し求めているという証拠はない。しかし、偶然にも営巣地を見つけたカラカルは、「まるでお菓子屋さんを見つけた子どものようです」と、ケープタウンの沿岸環境管理責任者を務めるグレッグ・オエロフス氏は言う。こうした問題は、市と国立公園の両方が関係するため、両者が連携して対策にあたっている。

ボルダーズ・ビーチの駐車場でオエロフス氏を待つ間、車のまわりを歩き回るペンギンたちを見ていた。車や人間はまったく気にしていないようだ。ケープペンギンは主に島で暮らすため、陸上の危険に対して無頓着だ。営巣地を厳重に保護しなければならない理由はそこにもある。

現在の規則では、カラカルがペンギンの営巣地に入ってきた場合、捕獲して安楽死させることになっている。ペンギンの保護が優先されるためだ。しかしそれは最悪のケースで、そうならないように予防することを重視していると、オエロフス氏は話してくれた。

それを実現するため、市は防護フェンスを設置した。カラカルが侵入しにくいように、フェンスの上部には回転する筒が付いている。今のところ、この対策は功を奏しているという。

オエロフス氏は、フェンスに設置したカメラトラップの写真をスマートフォンで見せてくれた。その中の1つには、こちらの狙い通り、フェンスに沿って海岸から離れていくカラカルが映っていた。また、とがった耳と黒い毛をオエロフス氏が指し示すまで、どこにカラカルが写っているのかわからない写真もあった。

狭まるカラカルの生息地

集団同士が孤立し、遺伝的な多様性が失われることも、カラカルにとっては脅威となる。セリーズ氏のもとには、ケープ半島にいる60匹ほどのカラカルが近親交配を繰り返していることを示す未公開のデータがある。近親交配が進めば、この地域全体のカラカルの健全性が低下し、やがて全滅に至る。

その原因は、テーブルマウンテンの周辺地域が開発されたせいで、ほとんどの野生動物は外部との出入りができなくなったことにある。

現在かろうじて残されている外部への通路は、テーブルマウンテンとフォールス湾周辺をつなぐ狭い地域だけだ。だがそこも今後、住宅地として開発される可能性がある。

「この狭いグリーンベルトは守り通したいと思っていますが、譲歩して(開発を)認めざるをえない事情もあります」とオエロフス氏は話す。これは、人と自然の「良好なバランスを見つけようとする」終わりのない努力の一つだ。

セリーズ氏によると、外部から半島にやってくるカラカルは珍しく、すでに定着しているカラカルたちの中に居場所を見つけて繁殖するのは「とても難しい」ことだという。

ケープタウンのカラカルたちは「前途多難です」とセリーズ氏は話している。

(文 HEATHER RICHARDSON、訳 鈴木和博、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年11月15日付]