しゃべりにくくて、聞こえにくい上に、ミュージカルは歌ったり踊ったりもするから、呼吸が荒くなってマスクを吸い込んでしまうけど、外せない。だから「マスクがなかったら、もう3割増しでいい演技できるんですけどね」という稽古場ジョークをみんなでよく言ってました。それくらい演技や表現に集中するのが難しい。医療用の空間が広いマスクにするとか、プラスチックのボールみたいなのを中に入れて空間を確保するとか、いろんな工夫もしましたけど、やっぱりやりにくさは同じでした。それで通し稽古くらいでメークをするようになったら初めてマスクを取って、お互いの表情や本当の顔を知るという感じでした。

無駄話や世間話をして、お互いを知る時間が少ない1年でもありました。稽古ではやるべきことだけをやって、終わったらすぐに帰るし、打ち上げで飲んで笑ってみたいな思い出もない。だから、あっという間だと感じたのかもしれません。コロナの感染対策を徹底しているおかげで、風邪もひかなかったし、体調も崩さなかったので、仕事に集中できたと言えばそうだし、ストイックに毎日を過ごしていたと思います。

自分の場合は、だからこそ新しいことを欲したし、それができた1年でもあったかなと。舞台をずっとやりながら、新しいジャンルの仕事も始められたので。4月からは早朝の音楽番組『はやウタ』(NHK総合)で初めて地上波での歌番組の司会を、5月からは朝の情報番組『スッキリ』(日本テレビ)で月1回くらいですけどコメンテーターをやらせてもらっています。ストイックに舞台をやっているぶん、新しい人に出会ったり、新鮮な経験ができるなら、ぜひそうしたいという気持ちにもなったし、学んだり調べたりする余裕もできたので、それはコロナ禍の中でもよかったことです。

「#裏切らない芳雄」がトレンド1位に感謝

うれしかったこともありました。20周年コンサートツアーが中止になり、5月8日に『裏切らない芳雄4時間フェス』という配信コンサートをやったときのこと。結果5時間になったのですが、そのときにツイッターが5万ツイート以上を記録して、「#裏切らない芳雄」がトレンド1位になりました。それってすごいことだったなと、あらためて認識しています。ミュージカル俳優の仲間がたくさん出てくれたし、ミュージカルや演劇のファンの力というか、今の状況でも熱を冷まさずに、ずっと支え続けてくれていることがひしひしと伝わってきてとてもうれしかったし、今も感謝の気持ちでいっぱいです。

ミュージカル界では、コロナ禍で昨年上演できなかった作品が今年リベンジで上演できたり、もともと予定されていたものがその通りやれるようになってきたりして、本数がまた増えています。先日放送された『2021FNS歌謡祭』(フジテレビ)で恒例のミュージカル特集があり、たくさんのミュージカルソングを取り上げていただいたように、メディアの後押しもありがたいこと。少しずつではありますが、コロナ前の活気を取り戻しつつあると思うので、来年はこのままいい方向に向かってほしいものです。

最後に、僕が個人的に感じていることを。コロナはあまり関係なくて、キャリアや年齢的なことですが、俳優としての立ち位置が変わってきたことを実感しています。ベテランとまではいかないけど、自分が思っているより立場が上というのかな。若い共演者との距離が気がつかないうちに広がっていて、こっちはフランクに接しようとしてるんだけど、相手はすごく先輩だと考えてるんだと感じることが、今までよりも増えました。

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