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図3 かゆみの悪循環

かゆいところをかき過ぎると、皮膚が傷ついてバリア機能が壊れ、少しの刺激にも反応する過敏な肌になって、かゆみが起こりやすくなる。これを、イッチ・スクラッチ・サイクル(Itch-Scratch-Cycle)と呼ぶ。

悪循環が進む前からの保湿ケアがお勧め

こうした新たな発見はかゆみの治療をどう変えていくのか。

皮膚に発疹がないのにかゆみを感じる病気のことを皮膚掻痒(そうよう)症と呼んでおり、国内の調査では11.5%の人に見られ、女性より男性に多いという報告もある。身近な例としては、40~50代以上で秋口から春にかけての乾燥しがちな季節にかゆみを訴える老人性皮膚掻痒症がある。

順天堂かゆみ研究センターではケラチノサイトにおいてC線維の伸びを抑制するセマフォリン3Aが作られるメカニズムを解明し、2020年3月に発表した。ケラチノサイト機能を回復させるための医薬品は多くの皮膚掻痒症の治療に役立つと期待され高森特任教授らも創薬に取り組んでいるが「登場するまではC線維をうまくコントロールする生活習慣が大切だ」と高森特任教授は言う。

ポイントは保湿と紫外線だ。保湿剤には、油脂性軟膏(ワセリンなど)、尿素クリーム(ケラチナミン、ウレパールなど)、ヘパリン類似物質(ヒルドイドなど)、セラミド入りクリーム(キュレル、ロコベース、ヒフミドなど)などがある。「ベタつき」などがあることから、使用感など自分に合った保湿剤を選べばいい。

そして、より重要なのは「かゆくなる前から保湿を心がけること」(高森特任教授)である。まだ大丈夫と思わずに乾燥が気になったら保湿剤をしっかり使うことでC線維が伸びにくくなることも研究で明らかになった。

保湿と併せて次のような生活改善を行うことも効果的なかゆみ対策につながる。

日光を適度に浴びることもかゆみ対策に

また、紫外線を適度に浴びることもかゆみ対策になる。高森特任教授は「以前からアトピー性皮膚炎の治療に紫外線療法があった。なぜ紫外線が効くのか動物実験で調べたところ紫外線には伸びたC線維を退縮させる効果があることが分かった。最近は、冬でも紫外線対策をしている人が少なくないが、適度な紫外線を浴びることはかゆみを軽減することにつながる」と言う。

乾燥肌の人のかゆみ対策に保湿が重要なことは、よく知られていると思うが、そのメカニズムを知ることで、より念入りな対策に取り組むきっかけにしてほしい。

(ライター 荒川直樹、イラスト 三弓素青、図版制作 増田真一)

[日経Gooday2021年11月29日付記事を再構成]

高森建二さん
順天堂大学大学院医学研究科環境医学研究所 順天堂かゆみ研究センターのセンター長。1967年順天堂大学医学部卒業。米国Duke大学医学部Research Associateなどを経て、93年同大学教授。2005~12年順天堂大学医学部附属浦安病院院長、07年より順天堂大学大学院医学研究科特任教授、08年より同大学院医学研究科環境医学研究所所長。かゆみ、アトピー性皮膚炎、難治性かゆみなどを専門とする。順天堂大学大学院医学研究科・環境医学研究所が19年に設立した、かゆみの治療に特化したアジア初の研究機関、順天堂かゆみ研究センターのセンター長。

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