2021/10/4

レンジャーたちは、自然保護活動家や生物学者の支援も行っている。普段から保護区内で生活する彼らは、カメラトラップ(自動撮影装置)を保守管理し、野生動物の行動を記録するため、山岳の竹林地帯を数週間かけて踏破する。レンジャーが集めたデータに基づいて、中国国内の野生パンダの公式な生息数(次回の公式調査は22年に実施予定)が判断され、自然保護に関する調査と戦略に関する情報が得られる。

中国の自然保護活動家たちは、施設でパンダを繁殖、飼育するという手段を導入した。パンダを自然保護区に放して野生パンダの個体数を増やすためだ。

だが、パンダの施設での飼育には費用と時間がかかるため、パンダの野生復帰計画は論議を呼んでいる。

今のところ、この取り組みの成果はまちまちだ。14頭のパンダが野生に帰された。うち12頭は飼育下で生まれ育ったパンダで、そのうち9頭が生き残った。残りの2頭は、野生下で生まれたのち保護されていたパンダだったが、1頭は野生復帰後に死亡、もう1頭は復帰後に繁殖に成功した。

19年末、中国ジャイアントパンダ保護研究センターは、1万年以上前にパンダが絶滅した江西省に、3頭のパンダを導入する計画を発表した。この計画は、20年半ばに中国の研究者や当局の間で激しい論議が交わされた末、立ち消えになってしまった。しかし実現すれば、飼育されたパンダが四川省以外で野生に帰される初めてのケースになっていただろう。

「中国の専門家の間でも、繁殖計画チームの内部でも、非常に強固で多様な意見があります」とワン氏。「ですから、パンダの野生復帰については、完成した計画はないのです」

秩序ある的確な方法でパンダを野生復帰させ、小規模な個体群を強化し、動物たちが望ましい生息環境に自由に移動できるように野生動物の回廊を結ぶ決定が下されるよう、ワン氏は願っている。

「いずれにしても、600頭ものパンダを飼育下に置いておく必要はないことは確かです」とワン氏は話す。「ある程度の失敗を乗り越えれば、パンダをもっとうまく野生復帰させ、野生パンダの生活を改善できるようになるでしょう」

(文 KYLE OBERMANN、訳 稲永浩子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年9月8日付]