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猫の代名詞「トラネコ」 縞模様はどうやってできる?

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ナショナルジオグラフィック日本版

米国には約6000万匹の飼いネコがいるが、その中で最も一般的なのがクラシック・タビーと呼ばれる種類のトラネコだ。被毛に縞(しま)、斑点、渦巻きなどの模様を持ち、額にはMと刻印されているように見える。

漫画のキャラクターとして知られる「ガーフィールド」が象徴的なように、トラネコの人気は高い。しかし、彼らの特徴的な外見がどのようにして生まれるのかは、科学的にほとんど分かっていなかった。

2021年9月7日付の「Nature Communications」誌に掲載された研究によると、トラネコの模様を作り出す遺伝子は、毛皮が発達する前の胚(受精後まもない段階)の皮膚細胞で活性化されるという。しかも、この初期の皮膚細胞は、顕微鏡で見るとまさにトラネコのような縞模様だというのだ。これまで胚細胞でこのような発見はなかった。

このユニークな遺伝的プロセスは、野生のネコ科動物の縞や斑点を生み出すのと同じメカニズムかもしれないと論文の著者らは考えている。ちなみに英語でトラネコを指す「タビー」という言葉は、16世紀にバグダッドで縞模様の高級絹タフタを生産していた「アルアッタービーヤ」という地区に由来する。縞模様自体は、イエネコの直接の祖先であるリビアヤマネコに由来すると考えられている。

「世界を、以前よりも少し理解できたという満足感がありますね」と語るのは、研究を率いた米アラバマ州ハドソン・アルファ・バイオテクノロジー研究所のグレッグ・バーシュ氏だ。

イエネコにおける色や模様の遺伝のし方は、昔から科学者の興味をひいた。かのチャールズ・ダーウィンは、耳の聞こえないネコの多くは毛が白くて目は青い、と考えた。種が変化する過程では、毛の色など本質的ではない変化も獲得されることがある。これは、より有用なほかの変化と結び付いて獲得されたものだとダーウィンは述べている。

ダーウィンは、目に見えない変化もあると唱えた。現代の遺伝学の知識を持ち合わせていないダーウィンだったが、彼の説は結果的に正しかった。遺伝子の異常は次の世代にも伝えられる。

ネコのさまざまな細胞

バーシュ氏らは、倫理的な研究プロトコルの一環として、野良ネコの避妊手術を行う動物病院から、本来なら処分されるはずの1000ほど胚を集めた。野良ネコの多くは入院時に妊娠していた。

研究チームのシニアサイエンティストであるケリー・マクゴーワン氏が、受精後25~28日目の胚の皮膚細胞を顕微鏡で観察したところ、皮膚の厚い部分と薄い部分が混在し、成体の模様に似た配色パターンが一時的に形成されていることに気づいた。

動物の体色の決め手となる毛根や色素が形成される前の、胚の初期段階でこのような模様を発見したことは特に驚きだった。

さらに詳しく調べるために胚の皮膚細胞を個々に分析したところ、2つの異なるタイプの皮膚細胞が見つかった。2つのタイプはそれぞれ異なる遺伝子を発現している。その中で際立っていていたのが、「Dickkopf WNT Signaling Pathway Inhibitor 4」(DKK4)という複雑な名前の遺伝子だった。

受精後20日ほどの胚で、細胞がDKK4をどのように発現させているかを調べたところ、数日後に厚みをもって皮膚の模様を形成するのは、このDKK4を発現させる細胞だということがわかった。

バーシュ氏が言うには、DKK4は「分泌分子」と呼ばれるメッセンジャータンパク質でもあり、周囲の他の細胞にシグナルを送る。簡単に言うと、「君は特別だ。君は濃い色の毛が成長すべき場所だ」と告げるのだ。

すべてが計画通りに進めば、DKK4を持つ細胞はトラネコをトラネコたらしめる模様の暗色部分になる。しかし、突然変異によって、白い斑点や細い縞模様など、他の毛色や模様が現れることもある。また、色素の変化が起こることもある。例えば、黒一色の被毛は、本来は別の色を作るはずだった色素細胞が、黒い色素しか作らなかった場合に起こる。

自発的に発生する模様

これらの細胞が実際にどのようにしてネコの体に縞模様を生み出すのか、研究チームはコンピュータ科学者で数理生物学の創始者であるアラン・チューリングに注目した。チューリングは1952年に、自然界で模様が自然に発生する仕組みを数学的に説明した。

反応拡散系と呼ばれる彼の理論は、発生過程でシステムが自己組織化することを数学的に予測したものだ。活性因子および抑制因子と呼ばれる、細胞から細胞への移動(拡散)速度が異なる分子(ネコの場合は遺伝子によって生成される分子)が存在する場合に、抑制因子が活性因子よりも遠くに、あるいは速く拡散すれば、システムが自ら組織化する、と彼は予測した。トラネコの場合、抑制因子が遺伝子DKK4と分かったが、活性因子は不明だ。

チューリングは活性因子や抑制因子が何であるかを知らなかった。それらが存在するかどうかも知り得なかった。しかし、チューリングが示して70年以上たった今、トラネコにおける今回の発見を含めて、チューリングの正しさを証明する発見が相次いでいる。

「私たちは、発生過程で細胞が動き回っていると考えがちですが、このように早い段階で、縞模様が厚みとして形成されているとは......実に先進的ですね」。米メリーランド州にある国立衛生研究所のヒトゲノム研究所で、飼いイヌの遺伝的研究を行っているエレイン・オストランダー氏は語る(同氏は、今回の研究に参加していない)。

単一の細胞を分析することで、「子どもの絵本に出てくるようなあの模様が得られるために必要な、さまざまなプロセスの一部が解明されたのです」。オストランダー氏は付け加えた。

バーシュ氏のチームは現在、ネコの色柄の生成には2段階のプロセスがあると考えている。まず、皮膚の細胞が、模様の色が濃いか薄いかを判断する。その後、毛包が成長して色素を作る。

これらのプロセスが他の動物でどのように機能しているのか、なぜ縞模様が出る動物と出ない動物がいるのかを調べることで、色柄がどのように進化してきたのかを解明したいとチームは考えている。もしかすると、毛の色とは全く関係ないように思える発見があるかもしれない。かつてダーウィンが想像したような、目には見えない違いが。バーシュ氏はそう考えている。

(文 JOANNA KLEIN、訳 桜木敬子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年9月14日付]

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