猫の代名詞「トラネコ」 縞模様はどうやってできる?

2021/10/2
ナショナルジオグラフィック日本版

米国で飼われている6000万匹近いネコの中でも、クラシック・タビーと呼ばれる種類のトラネコは特に人気だ(PHOTOGRAPH BY AL PETTEWAY AND AMY WHITE, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

米国には約6000万匹の飼いネコがいるが、その中で最も一般的なのがクラシック・タビーと呼ばれる種類のトラネコだ。被毛に縞(しま)、斑点、渦巻きなどの模様を持ち、額にはMと刻印されているように見える。

漫画のキャラクターとして知られる「ガーフィールド」が象徴的なように、トラネコの人気は高い。しかし、彼らの特徴的な外見がどのようにして生まれるのかは、科学的にほとんど分かっていなかった。

2021年9月7日付の「Nature Communications」誌に掲載された研究によると、トラネコの模様を作り出す遺伝子は、毛皮が発達する前の胚(受精後まもない段階)の皮膚細胞で活性化されるという。しかも、この初期の皮膚細胞は、顕微鏡で見るとまさにトラネコのような縞模様だというのだ。これまで胚細胞でこのような発見はなかった。

このユニークな遺伝的プロセスは、野生のネコ科動物の縞や斑点を生み出すのと同じメカニズムかもしれないと論文の著者らは考えている。ちなみに英語でトラネコを指す「タビー」という言葉は、16世紀にバグダッドで縞模様の高級絹タフタを生産していた「アルアッタービーヤ」という地区に由来する。縞模様自体は、イエネコの直接の祖先であるリビアヤマネコに由来すると考えられている。

「世界を、以前よりも少し理解できたという満足感がありますね」と語るのは、研究を率いた米アラバマ州ハドソン・アルファ・バイオテクノロジー研究所のグレッグ・バーシュ氏だ。

イエネコにおける色や模様の遺伝のし方は、昔から科学者の興味をひいた。かのチャールズ・ダーウィンは、耳の聞こえないネコの多くは毛が白くて目は青い、と考えた。種が変化する過程では、毛の色など本質的ではない変化も獲得されることがある。これは、より有用なほかの変化と結び付いて獲得されたものだとダーウィンは述べている。

ダーウィンは、目に見えない変化もあると唱えた。現代の遺伝学の知識を持ち合わせていないダーウィンだったが、彼の説は結果的に正しかった。遺伝子の異常は次の世代にも伝えられる。

ネコのさまざまな細胞

バーシュ氏らは、倫理的な研究プロトコルの一環として、野良ネコの避妊手術を行う動物病院から、本来なら処分されるはずの1000ほど胚を集めた。野良ネコの多くは入院時に妊娠していた。

研究チームのシニアサイエンティストであるケリー・マクゴーワン氏が、受精後25~28日目の胚の皮膚細胞を顕微鏡で観察したところ、皮膚の厚い部分と薄い部分が混在し、成体の模様に似た配色パターンが一時的に形成されていることに気づいた。

動物の体色の決め手となる毛根や色素が形成される前の、胚の初期段階でこのような模様を発見したことは特に驚きだった。

さらに詳しく調べるために胚の皮膚細胞を個々に分析したところ、2つの異なるタイプの皮膚細胞が見つかった。2つのタイプはそれぞれ異なる遺伝子を発現している。その中で際立っていていたのが、「Dickkopf WNT Signaling Pathway Inhibitor 4」(DKK4)という複雑な名前の遺伝子だった。

受精後20日ほどの胚で、細胞がDKK4をどのように発現させているかを調べたところ、数日後に厚みをもって皮膚の模様を形成するのは、このDKK4を発現させる細胞だということがわかった。

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自発的に発生する模様
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