日経ナショナル ジオグラフィック社

2021/10/1

エベレット氏は、毎年7月に1週間の調査を実施しており、現在では、60人もの研究者とボランティアが参加するまでになった。メンバーはフランクリンズ・バンブルビーの姿を求めて、カリフォルニア州とオレゴン州で調査を行い、生息域とされる岩だらけの荒地で採集網を振り回したり、野の花をのぞきこんだりして捜索を行っている。

それでもエベレット氏は、「私たちは、適切な時間に適切な場所を捜索していないのかもしれません」と言う。たとえ適切な捜索であっても、メンバーのすぐ背後にいる1匹のハチが、振り返った時にはもう飛び去っていることもあるだろう。

そこで、エベレット氏は、もうひとつの発見方法を研究している。この数年間、魚類野生生物局と米国地質調査所では、フランクリンズ・バンブルビーのDNA鑑定の開発を進めてきた。この技術が完成すると、花のサンプルを調べて、フランクリンズ・バンブルビーの遺伝物質の有無を確認することができる。そうすれば、個体そのものを見つけなくても、生息しているかどうか、特定の地域に最近やってきたかどうかを判断できるようになるだろう。

再発見の希望を抱いて

フランクリンズ・バンブルビーは、個体数が少なく、生息域も限られているため、非常に脆弱な立場にある。農地に頻繁に飛来しているかどうかは確認されていないものの、ネオニコチノイド系殺虫剤の影響を受けている可能性はある。この殺虫剤は、昆虫の神経系の働きを阻害して、まひや死に至らしめる農薬だ。

また、授粉のために導入された飼育下のハチから、フランクリンズ・バンブルビーや他の野生生物に病原体が感染した可能性もある。たとえば、1990年代半ばに飼育マルハナバチの間で発生した真菌病は、フランクリンズ・バンブルビーを含む欧米のハチ数種の急激な減少と関連している。

このような脅威はあるが、今回の絶滅危惧種への指定や調査活動の拡大を受けて、リチャードソン氏とエベレット氏は、フランクリンズ・バンブルビーの発見に明るい希望を抱いている。

フランクリンズ・バンブルビーが発見されたら、より具体的な保護計画を策定することができる。たとえば、特定の場所や期間における殺虫剤の使用制限、営巣期や冬眠期におけるハチを脅かす活動の制限、飼育下のハチの輸送・飼育方法に関する国内の許可手続きの制定、そして、ハチの個体数の回復に不可欠な特定の生息地の指定などが考えられる。

フランクリンズ・バンブルビーが姿を消してから15年になるが、その再発見は決して非現実的な話ではない。過去にも、絶滅したと考えられていたハチやその他の昆虫が再発見された有名な事例がある。フロリダ州では9年間目撃されていなかったハチ、ブルーカラミンサ・ビー(Osmia calaminthae)の生息が確認され、オレゴン州ではフェンダーズ・ブルー・バタフライ(Icaricia icarioides fenderi)が52年ぶりに再発見された。また、インドネシアで再発見された世界最大のハチ、ウォレス・ジャイアント・ビー(Megachile pluto)は、なんと122年間も目撃情報が途絶えていた。11年のある調査によれば、1889年以降に再発見された350種以上の事例では、最終目撃情報から再発見まで平均すると61年かかっている。

そして、再発見された種の多くは、生息域が限られ、個体数も少なかった。つまり、フランクリンズ・バンブルビーと同様の状況にありながら、再発見されたのである。

(文 MATT KELLY、訳 稲永浩子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年9月9日付]