「もう1曲はめちゃめちゃ難しいですね(笑)。難しいですけど、澤野弘之さんに作っていただいた『RE:I AM EP』(13年発売)かな。実は玉井さん以外の方に、楽曲、詞も曲もプロデュースしていただくのは澤野さんが初めてだったんです。本当にそれまで激しい感じの曲を全然歌ったことがなかったんですが、いただいた曲が重厚なロックだったんですよね。また、そこからいろんな方とやっていくという道ができたというか。多分、澤野さんとのやりとりが、『RE:I AM EP』がなかったらそれは始まっていないので。しかもAimerという綴(つづ)りを澤野さんが入れ替えてタイトルにしてくださっていたので、そういう意味でも、Aimerを壊して1つ新しいAimerを作れた気がします。のちの『daydream』(16年発売)というアルバムにつながるんですけど、原点みたいなものは澤野さんが作ってくださったこの曲だと思います。

自分が一番恵まれているのは人との出会いと言ったのは、本当にこれで。いろいろな方が自分の声を使って『こういうことやりたい』とか、『こういう曲どう?』 とか一緒にやってくださって、ポップやロックなサウンドにも触れて自分の可能性が広がってきた。ホームはagehaspringsなんですけど、いろいろな方とやってこれたことが、この10年で自分の音楽性をどんどん膨らませていってくれた――それがなければ、『残響散歌』にもたどり着けなかった、こういうふうに音楽性が広がっていくことはなかなかないんじゃないかな、と思います。だから今、自分が10年かけてここまでたどり着いたなっていうボーカルのスタイルだったり、クリエイションだったり、一応確立…あるところまでやっと自分の中で満足のいく部分に、ゾーンに行けているというタイミングで今回『鬼滅の刃』のお話もいただいたので、本当にすごくありがたいというか。今だったからこうやってこの曲にたどりつけたなと思っています」

Aimerにとって「歌う」とは

「例えばですけど、ある人が教会の日曜礼拝にいって、そこで賛美歌を聞いたとき、教会に響き渡っている聖なる響きを持つものが自分の救いになったりする――私にとって歌うことは自分自身にとって“救い”なんです。歌というもののなかで試行錯誤して、新しい表現にたどり着けたり、今までできなかった表現ができたりっていうのが自分にとって生きる意味や救いだったりするんですね。それで、今10年かかってやっと、今までは自信がないというか、そこまではっきり言えなかったけど…。やっぱり自分の歌を通して誰かを、すごくおこがましいかもしれないけど、助けたい、救いたいってちゃんとはっきり言葉にしたいなと思えるように、最近やっとなってきました。

私も音楽を聴いて弱い部分を肯定してもらってここまでやってこられたので、そういう人を守りたいというか。音楽を通してそこを守りたいという自分は最初からずっと一番奥のコアのところにいます。だから音楽は、私にとって救いでもあるし、誰かを救える可能性がある手段だなと思います」

最後に、10周年を経ての“これから”についても聞いた。

現在Aimerは、Aimer Hall Tour 2022 “Walpurgisnacht”で、6月まで全国22カ所、28公演の真っ最中。6月16日に東京ガーデンシアターで追加公演も決定した

「今後については、ライブは大きな会場でやってみたいです。それこそアリーナツアーもやってみたいなと思いますし。それと同時にまたこれから10年、20年と活動させていただくなら、たくさんの方に自分の音楽を届けたいという気持ちと同じくらい、1人1人にちゃんと寄り添いたい。難しく観念的なことかもしれないですが、1人1人にとってAimerというアーティストが遠いものじゃないというか、自分に寄り添ってくれているという気持ちを裏切りたくない。

そういう思いもあって、広げていきたいけど、すごくこぢんまりとしたものも大事にしたいという相反する気持ちもあって。それを同時にちゃんとクリアしているアーティストに、これからもなっていきたいし、なり続けたいと思っています」

Aimer
 2011年メジャーデビュー。21年よりSACRA MUSIC。これまでアニメ『NO.6』、『機動戦士ガンダムUC』、ドラマ『あなたの番です』などに楽曲を提供している。

(ライター 山内涼子)