YOASOBIの海外展開

――グローバル展開されていて、しかも横のつながりが強いことも強みのように感じます。

金子雄樹 1995年から2005年までタワーレコードで経営企画室、情報システム部などを歴任。その後18年までAmazonジャパンで音楽配信事業部シニアマネージャーなどを務める。19年より現職

各国のスタッフが他国のチャートもつぶさに確認しており、お互いチャットベースで連絡を取り合っているので、連携力も高いです。例えば、YOASOBIの『夜に駆ける』が国内で少し話題になり始めた頃、台湾や中国などの海外チームが興味を持ってくれたので、こちらから様々な資料をすぐに提供。まだファンがそこまで多くなかったにもかかわらず、台湾のストリーミングサービスの「KKBOX」では、ニューリリースとしてバナー展開されました。

YOASOBIが、Spotifyの海外チャートなどにも入るようになってからは、アメリカのセールス担当から「英語で歌う可能性はないのか?」と聞かれるようになり、YOASOBIチーム側にも逐一共有。21年7月に『夜に駆ける』の英語版『Into The Night』が配信された際は、各国のチームと連携し、世界の様々なストリーミングサービス上でプロモーションを行うことに成功しました。

――「Insight」と呼ばれる、アーティストが自らのデータを分析できるダッシュボードも、機能が充実していますね。

弊社のダッシュボードでは、ストリーミングの再生数やダウンロードの売り上げだけでなく、各ストリーミングサービスのチャートや、SNSでの反応も一括で見られるのが特徴です。YouTubeのUGC(※2)も追えるので、自分たちの楽曲がどのように使われているかも分かります。楽曲がハネたのか、ハネなかっただけでなく、ファンベースがどれだけ広がっているかといった部分まで測定できるツールとなっています。

(※2)歌ってみた・踊ってみた動画など、一般ユーザーによって作られたコンテンツのこと。「User Generated Content」の略。

今後もアーティストをサポートするという観点から、ディストリビューターの枠を超えたサービスをどんどん提供していければと考えています。

スズキの視点

今や日本の音楽ビジネスでも大きな存在感を持つ音楽ディストリビューションサービス。近年ブレイクするアーティストはインディーズ、メジャー関係なく、これらを活用するケースが増えてきています。そのなかでもThe Orchardはアーティストと近い関係性を築いており、旧来のレコード会社と似た立ち位置にありながら、データ活用、グローバル展開に長けています。海外でも、「音楽配信代行」に加えて、「アーティストサービス」と呼ばれるマーケティングなども行う企業が増えてきており、彼らはその先駆けと言えるでしょう。

鈴木貴歩
 ParadeAll代表取締役。“エンターテック”というビジョンを掲げ、エンタテインメントとテクノロジーの幸せな結びつきを加速させる、エンターテック・アクセラレーター。エンタテインメントやテクノロジー領域のコンサルティング、メディア運営、カンファレンス主催、海外展開支援などを行っている。

(構成:中桐基善)

[日経エンタテインメント! 2021年12月号の記事を再構成]