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有森裕子 女子マラソン、好タイム続出の陰に「男子」

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

連日熱戦が繰り広げられた北京冬季五輪も、閉幕が近づいてきました。2021年の東京五輪と同様に、新型コロナウイルス感染拡大への厳重な対策が取られる中での開催。選手の皆さんは本番に自身の調子を合わせることはもちろん、感染対策に神経をすり減らし、アウトドア競技では天候や風といった外的要因とも戦いながら、それぞれの勝負に挑んでいます。私も皆さんと一緒に熱い応援を送りたいと思います。

どん底からつかんだ優勝、そして世界選手権の代表候補へ

さてマラソン界では、去る1月30日に大阪国際女子マラソンが開催されました。この大会は今年7月に米オレゴン州で開催される世界選手権の代表選考会を兼ねており、2024年パリ五輪の代表選考レースである「MGC」(マラソングランドチャンピオンシップ)の出場権をかけた最初の大会でもありました。私もテレビ中継の解説者の1人として現地入りし、レースを見守りました。

2年ぶりにコースを公道に戻した今大会は、地元・大阪出身の松田瑞生選手(ダイハツ)が日本記録を上回るハイペースで25キロ過ぎから後続を引き離して独走状態に。終盤はペースが落ちたものの、2時間20分52秒の大会新記録で2年ぶり3度目の優勝を果たしました。2位には上杉真穂選手(スターツ)が入り、この両選手が世界選手権の代表候補の条件をクリアしました。

松田選手は、2020年のこの大会でも好記録で優勝したものの、その後の大会で一山麻緒選手(ワコール、東京五輪女子マラソンで8位入賞)がさらに速いタイムで走ったため、あと一歩のところで東京五輪の切符をつかむことができなかった苦い経験があります。どん底に突き落とされたような時期を乗り越えて、今回の大会には並々ならぬ思いを持ってエントリーしたはずです。よっぽどのことがない限り、彼女が中心のレース展開になると誰もが予想していました。

松田選手はそうした期待に見事に応え、自身が目標としていた2時間20分切りには届かなかったものの、自己ベストとなる好記録で見事な走りを見せてくれました。

好タイム続出へと導いたペースメーカーの存在

松田選手を筆頭に、この大会では入賞者8人のうち、実に7人もの選手が自己ベスト記録を更新しました。彼女たちの潜在能力がしっかり引き出されたのは、昨年から採用された「国内男子選手が担うペースメーカー」の存在が大きいことは確かでしょう。

こうした大きな大会では、本来なら海外から有力選手を招き、その選手たちがペースメーカーとしてレースを牽引したり、競い合ったりすることで日本人選手の潜在能力が引き出されてきました。しかし、コロナ禍で外国人選手を招くことができなくなったため、代わりに国内の男子選手がペースメーカーとして起用されたわけです。

今大会ではペースメーカーが3つのグループに設定されていました。号砲前に発表された設定ペースによると、先頭集団は神野大地選手(セルソースアスリート)と福田穣選手(NN Running Team)、田中飛鳥選手(RUNLIFE)の3人が1キロ3分19~20秒で先頭集団を引っ張り、大会記録(2時間21分11秒)を更新できるペースで走ります。続く第2集団は、川内優輝選手(あいおいニッセイ同和損保)と寺田夏生選手(JR東日本)が1キロ3分22~23秒のペースで牽引。第3集団は岩田勇治選手(三菱重工)が1キロ3分25~26秒でゴールを目指すペースだったそうです。

選手同士が駆け引きをしながら激しく競い合う大会と比べると、ペースメーカーに守られるようにして走る今回のレースは、レースというよりはタイムトライアルに近い印象を受けた人も多いかもしれません。通常、ペースメーカーが引っ張るのは30キロ付近までですが、独走に入った松田選手の周りに3人のペースメーカーがぴったりとつけ、ゴール付近まで共に走るという風景に違和感を覚えた人もいるでしょう。

結果として、ペース配分も正確な、非常に安定したペースメーカーのおかげで、自己ベストを更新する選手が続出。6位の選手までがMGCの出場記録を突破するという好成績を収め、結果的に良かったのではないかとも思います。

折り返し地点で、ペースメーカーの川内選手が女子選手たちの様子を確認しながら安全に誘導するようなシーンや、第1集団から遅れそうな選手をペースメーカーの田中選手が「ついてこい」と言わんばかりに手招きするしぐさなども見られました。ペースメーカーが選手に声をかけたり触れたりすることはNGですが、こうしたサポートに女子選手たちも「走りやすかった」「苦しい30キロ以降も耐えられた」などと話していた様子も印象的でした。

タイムを狙うか、勝負にこだわるかによって走り方は変わる

ただ1点、気になったのは、松田選手が独走状態に入ってからの光景です。3人のペースメーカーと集団で走っていたのですが、終盤手前から2人のペースメーカーが彼女のほぼ真横につき、1人が少し後ろを走るというフォーメーションとなり、ペースメーカーに松田選手が合わせているというよりは、彼女にペースメーカーが合わせているように感じられました。

松田選手は普段から、誰かに引っ張ってもらって後ろからついていくような練習を好まないと聞きます。人に合わせるのではなく、自分でペースを作って走る練習で力をつけてきたので、今回もこうしたフォーメーションで走れるような調整をしていたのかもしれません。ただ、今回のレースのように目標タイムにこだわるのであれば、ペースメーカーに委ねて走った方が、ペース設定に余計なエネルギーを使わずに済んだようにも思います。もしペースメーカーが前に立って松田選手を牽引するような形であれば、また違ったタイムが出ていたかもしれないなとも思いました。

五輪や世界選手権にはペースメーカーが存在せず、スピードある外国人選手が前に立って牽引する可能性が高く、レース特有の揺さぶりや駆け引きも発生します。五輪や世界選手権のレースでこだわるべきは、タイムではなく勝負ですから、本番に向けてどのような練習や対策を積み上げていくかが、これからの課題だと思います。

2位の上杉選手に見た「イメージを作って形にできる力」

今回の大阪国際女子マラソンでは、2位の上杉選手も印象に残りました。私の現役時代と比べると、今の選手たちの練習タイムは総じてレベルが高く、あとはその潜在能力を大会本番でどう発揮するかだと思っています。そのために必要なのは本人の意志の強さですが、松田選手はもちろん、上杉選手にもその意志の強さを感じました。

上杉選手の持ちタイムから言えば、第2集団につくという選択をしてもおかしくないレース展開でした。しかし彼女は、第1集団の松田選手につくという勇気ある選択をしました。ペースメーカーは遅れた選手に合わせるということはできないので、25キロ付近で先頭から離れてしまってからは上杉選手の1人旅になりましたが、粘りの走りで2位を死守しました。

今のマラソンのレベルは、レース終盤で後方集団から先頭集団へ一気に追い上げられるほど甘くはありません。前半から飛ばすことを怖がる選手も多いと思いますが、力がある選手であれば、こうした国内大会こそ果敢に攻めるといったチャレンジをしてほしいですし、そうした強い意志が必要だと思います。上杉選手はこの大会で「2時間23分を切る」といった明確なイメージを作ってチャレンジしたのでしょう。イメージを作って形にできる力は非常に大事で、国外で戦うときの自信になるはずです。今後が楽しみな選手です。

たった2回目のマラソンで、3位でゴールした松下菜摘選手(天満屋)も面白い逸材だと思いました。中国武術やスピードスケートのショートトラックなど、幼いころからさまざまな競技を経験してきたそうで、そこで培われた足腰の強さや粘り強さを感じました。2000年シドニー五輪女子マラソン代表の山口衛里さん(現・天満屋コーチ)に適性を見抜かれ、大学3年から本格的にマラソン競技に打ち込んできたそうです。経験が浅い分、上杉選手のような意志の強さはまだ感じられなかったものの、MGCの出場権もつかみ、今後どのように自分と向き合いながら世界の舞台で戦える選手に成長していくかが楽しみです。

挑戦し続ける姿が共感を呼び、人々から親しまれた福士選手

最後に福士加代子選手(ワコール)の引退にも触れたいと思います。今回の大阪国際女子マラソンは、福士選手の引退試合でもありました。彼女は今大会ではハーフマラソンに参加し、大勢の人たちの拍手で出迎えられながら笑顔でゴールし、競技人生に幕を下ろしました。

福士選手は、2004年のアテネ五輪、08年北京五輪、12年ロンドン五輪の3大会連続で陸上トラック種目に出場し、「トラックの女王」と呼ばれてきました。初マラソンに挑戦したのは08年の大阪国際女子マラソン。終盤のスタミナ切れで転倒して19位に終わりましたが、その後、着々と力をつけ、13年と16年に優勝し、16年は2時間22分17秒の自己ベストをマークするなど、大阪国際は彼女にとって思い出深い大会の1つではないかと思います。13年の世界選手権(モスクワ)ではマラソンで銅メダルを獲得し、4度目の五輪となった16年のリオデジャネイロ五輪では14位でした。

トラックでは女王と呼ばれた彼女も、マラソンでは良い結果を出せない時期が長く、相当苦労したと思います。しかし、「練習が嫌だ」とたびたび口にしながらも挑戦し続ける姿が共感を呼び、歯に衣(きぬ)着せぬ発言や明るい人柄が多くの人々から親しまれ、注目され続けてきました。

おちゃめでひょうきんな福士選手は、本来はシャイでとても繊細な選手であり、その裏返しとして、レースの結果を笑い飛ばすような言動を見せていたのだと思います。39歳までマラソンを続け、苦しいことも含めて走ることと向き合い、面白さを追求し続けた福士選手の陸上人生は、迷い悩む若手選手にとっても励みになるものだったと思います。心からお疲れさまと言いたいです。

(まとめ 高島三幸=ライター)

[日経Gooday2022年2月10日付記事を再構成]

有森裕子さん
元マラソンランナー(五輪メダリスト)。1966年岡山県生まれ。バルセロナ五輪(1992年)の女子マラソンで銀メダルを、アトランタ五輪(96年)でも銅メダルを獲得。2大会連続のメダル獲得という重圧や故障に打ち勝ち、レース後に残した「自分で自分をほめたい」という言葉は、その年の流行語大賞となった。市民マラソン「東京マラソン2007」でプロマラソンランナーを引退。2010年6月、国際オリンピック委員会(IOC)女性スポーツ賞を日本人として初めて受賞した。

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