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『残響散歌』は疾走感が映像ともマッチ

「作品の楽曲を任せていただいたときは、オープニングだったらその作品を象徴するような、音を聴いただけで喚起されるような曲を作りたいと思っています。その音を聴いた瞬間浮かんでくる画が作品とシンクロするものでありたいと思いながら、プロデューサーさんや制作クリエイターさんたちと話し合いながら作っています。それでいて、そこに乗る言葉、歌詞に関しては、言葉をたどって聴いてくださるみなさんが想像して深いところまでイメージしてくださるので、『自分自身の気持ちから嘘はつかない』というか。ちゃんと大元をたどれば、自分の意思や気持ちが物語の登場人物や世界観自体と共通するものを――いつも『どこがリンクできるかな』と考えながら作っています。

テレビアニメ『「鬼滅の刃」遊郭編』は、現在、各配信プラットフォームで配信中。Blu-ray & DVD第2巻が3月30日発売予定。続編となる『「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編』のテレビアニメ化も決定している

『残響散歌』は『遊郭編』のオープニング楽曲なので、『鬼滅の刃』という作品そのものにも寄り添えるものであることと、『遊郭編』にちゃんとマッチしたものになるように。主人公の炭治郎や宇髄たちは戦うときにすごい速度で走りますが、そのときの彼らの走るスピードを音でもちゃんと表現したかったですし、その画がパッと浮かぶ曲がいいよねって。BPMを走る速度に合わせるというか、早めに疾走感が上がるように作っていきました。

あとは、遊郭の町並みを思い浮かべたときに1つキーポイントになったのが、提灯や行灯の灯り。ちょっと原始的な輝きというか、ゆらゆら揺らめいている灯りが町を象徴しているように感じたので、そういうものも音として聴いたときにイメージが浮かびあがるように作っていきました。

詞に関しては、まず自分が『遊郭編』の物語の中に入っていって。そのときに、主役の炭治郎だけでなく、宇髄さんも、鬼の堕姫や妓夫太郎もフィーチャーされてくるので、各々の心情、そしてそこに私自身の個人的な今の気持ちを込めていきました。誰か1人に偏るというよりも、みんなに寄り添えるもの、どの登場人物にも当てはまるような、そういう歌詞を目指したいなって。

例えば、何かにぶつかったときの覚悟だったり、譲れないものだったり、自分の弱い部分を薙ぎ払って前に進みたいという場面がきっと聴いてくださる方にとっても誰にでもあるはずなので、そういう気持ちをこの曲が応援できたら。

なので、基本はロックですがアレンジはちょっとジャジーに、いろいろな楽器が大暴れしているようになっています(笑)。幾重にもトラックを重ねて、ブラス隊も生で録音。『遊郭編』の登場人物である宇髄がよく言葉にする『派手』なところにも寄り添えるように、とにかく音を詰め込んで。いろんな楽器の音がそこここで大暴れしているので、それぞれ楽器の音にフィーチャーして聴くのもすごく面白い曲だと思います。こんな感じで作り込んだ『残響散歌』によって、私自身もまた少し新しいところに導いてもらったような気がしています」

Aimer
 2011年メジャーデビュー。21年よりSACRA MUSIC。これまでアニメ『NO.6』、『機動戦士ガンダムUC』、ドラマ『あなたの番です』などに楽曲を提供している。

(ライター 山内涼子)