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「急性膵炎になっても胃痛と勘違いするのでは」と思っていたが、どうやらそんなレベルではないらしい。佐野さんによると、市販の胃薬で症状を緩和させようとする人もいるが、「動くこともできないような痛みの場合は、迷わず病院へ行くべき」と注意を促す。

「医師にとっても、症状だけで急性膵炎と診断するのは困難です。最終的には血液検査で、膵臓から分泌されるアミラーゼという酵素などの数値の上昇や、CT(コンピューター断層撮影)や超音波などの画像検査で、膵臓やその周辺のむくみといった異変を確認し、急性膵炎と診断します」(佐野さん)

「急性膵炎診療ガイドライン2015(第4版)」によると、2011年の1年間に急性膵炎として受診した人は約6万3000人で、近年は増加傾向にある。男女比はほぼ2:1で、男性は60代が最も多く、女性は70代が最も多かったという。

膵液が膵臓を溶かす アルコールが原因の一つに

それにしても、急性膵炎はなぜそんなに痛いのだろうか?

「それは、膵臓で作られる膵液が、膵臓そのものを溶かしてしまうからです。膵液の中には、食べ物に含まれるたんぱく質や糖質、脂質などを分解するためのさまざまな消化酵素が含まれており、それが膵臓そのものをドロドロに溶かし、炎症を起こすのです」(佐野さん)

膵臓で作られた膵液が、膵臓自らを溶かす。何だかホラーのよう……。そりゃ、痛いなんてもんじゃないだろう。続いて、最も気になるアルコールが急性膵炎を引き起こす原因について聞いてみた。

「体内でアルコールが分解されて生成されるアセトアルデヒドがトリガーとなって、膵液に含まれる消化酵素であるトリプシンが膵臓内で活性化されると、膵液が膵臓を溶かし、炎症を起こしてしまいます。トリプシンはたんぱく質を溶かす酵素であり、通常は十二指腸(小腸)内で活性化するのですが、そのような理由から膵臓内で活性化してしまうのです。もう一つの理由が、多量の飲酒によって膵液の通り道である膵管の出口がむくむことで膵液が通りにくくなり、膵液が膵臓の中で滞ることが挙げられます」(佐野さん)

佐野さんによると、さらに恐ろしいことに、「急性膵炎はその痛みによってストレスが高まり、そのストレスがトリプシンをさらに活性化する、という悪循環になる」という。

先ほどの「急性膵炎診療ガイドライン」によると、男性の場合、急性膵炎の原因のうち最も多いのがアルコールだが、女性の場合、最も多いのは「胆石」となっている。胆石とは、膵液とともに食べ物の消化に関わる胆汁の成分が石のように固まってできたもの。膵液と胆汁は、いずれも管を通って十二指腸に流れ込むが、その出口が同じところにある。そのため、胆石が胆管の出口付近に詰まると、膵液の流れがせき止められて、膵液が膵臓の中を逆流したりするのだ。

胆石が原因の急性膵炎の仕組み

(原図=123RF)
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