2022/1/10

じわじわと広がる感染症

ありがたいことに、保護活動家らによると、全体としてはこの真菌症はコウモリ白鼻症候群やカエルツボカビ症ほど深刻ではなさそうだ。両生類に感染するカエルツボカビ症は、群れによっては致死率100%という恐ろしい病気で、特に中米で多く報告されている。

「カエルツボカビ症や白鼻症候群などは短期間で急拡大して、個体数の激減を引き起こしましたが、多くの病気はもっとじわじわと広がるものです」と、ローチ氏は言う。ヘビ真菌症は「どちらかというと、じわじわと広がるタイプの感染症かもしれません」

米ジョージア州を拠点とする保護団体「オリアン協会」の科学ディレクター、ヒューストン・チャンドラー氏は、最も注意が必要なのは希少種だと指摘する。ジョージア州とフロリダ州で、生息地の開発により絶滅の危機にひんしているトウブインディゴヘビ(Drymarchon corais couperi)は、アナホリガメが掘った巣穴を再利用することがある。ところが、このカメも現在数が減少している。

つまり、トウブインディゴヘビは既に十分に問題を抱えているのだが、そのうえジョージア州南部の一部地域では、採取したサンプルの半分以上にヘビ真菌症が見つかったという。今のところ、感染したヘビの大量死は報告されていない。

感染したヘビは長い時間を巣の外で過ごした

奇妙なことに、真菌症は感染したヘビの行動を変えるという研究結果がある。

米ケンタッキー大学の保全生物学者で、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(協会が支援する研究者)でもあるスティーブン・プライス氏は、クイーンザリガニクイ(Regina septemvittata)というヘビを研究しているが、20年11月3日付の学術誌「Ecological Applications」で、感染したクイーンザリガニクイが感染していない個体よりも長い間巣の外で過ごしているという研究結果を発表した。

理由ははっきりしないが、感染したヘビは日光を浴びて体温を上げ、菌を撃退しようとしているのではないかと、プライス氏は言う。

ニューハンプシャー州のマーチャンド氏と研究チームは、ヨコシマガラガラヘビが森の中でも林冠がない場所を好んで集まることに気が付いた。太陽に当たることで体の健康が保たれているのではという。

それならば、ヘビが日光浴できる場所を増やしてみてはどうだろうと考えて、マーチャンド氏らは、木を伐採して開けた場所を作る実験を行っている。

アレンダー氏の研究チームも、抗真菌剤を使って感染したヘビを治療する研究に取り組んでいる。

しかし、爬虫類の病原体研究の資金は十分ではないと、ローチ氏は言う。「野生生物の中でもヘビは嫌われ者ですから、保護への関心も低いんです。けれど数十年後に振り返ってみて、あの時もっとこの研究に投資しておくべきだったと後悔するようなことには、なってほしくありません」

(文 JASON BITTEL、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年12月11日付]