最初の噴火から9日後の2021年9月28日、溶岩が海に流れ込んだ。高温の岩石と冷たい海水が反応し、塩酸や火山ガラスの破片が混じった有害な蒸気レイズが発生した(PHOTOGRAPH BY ARTURO RODRIGUEZ)
噴火は2カ月たった11月下旬になっても続いていた。これまでに2500以上の建物が破壊され、数千人が避難した。火山灰が幾重にも降り積もり、屋根は崩れ、農地は埋まり、溶岩が通り道のすべてを覆いつくした。「このモンスターは最も人口が多い地域の真ん中で爆発しました」とロドリゲス氏は話す。「ここに暮らしていた全員の痛みがわかります」
今回の噴火と、今後の噴火の可能性を考えるため、科学者たちが岩石サンプルの採取、ガスの監視、地震の記録などを行っている。写真はスペイン軍の緊急対応グループに所属するアルマンド・サラザール軍曹。防護服を着用し、まだ冷えていない溶岩の上を歩いている(PHOTOGRAPH BY ARTURO RODRIGUEZ)
その痛みを特に強く感じた瞬間がある。迫り来る溶岩から逃れようと、荷物をまとめている人々を撮影していたとき、その中にいとこの姿を見つけたときだ。ロドリゲス氏はカメラを置き、急いで荷物を箱詰めするいとこを手伝った。
火山灰は岩石やガラスの破片で構成されている。この写真のように、ラ・パルマ島の一部には、木が埋まるほど大量の火山灰が降り積もった場所がある。一帯を覆い尽くして家の煙突しか見えないところもある(PHOTOGRAPH BY ARTURO RODRIGUEZ)
ロドリゲス氏は生まれ育った島の将来を案じている。島の経済はバナナ栽培に大きく依存しているが、かつてバナナを育てていた何百ヘクタールもの土地が溶岩に埋もれてしまった。生き残った木も多くが火山灰に覆われ、バナナを輸出できる状態ではない。
家や生活空間が溶岩の下敷きになり、島を出ることを選択した人もいる。数年先の見通しすら立たないとロドリゲス氏は言う。「島は苦境を強いられることになるでしょう」
地下で起きていることをより深く理解するため、スペイン地質鉱物研究所(IGME)とスペイン国立研究評議会(CSIC)の科学者が手掛かりを探し求めている。これは1949年に形成された溶岩洞で、クンブレ・ビエハ火山から6キロほどしか離れていない。現在進行中の噴火に関連した亀裂を探すため、この古い洞窟にガスセンサーが設置された(PHOTOGRAPH BY ARTURO RODRIGUEZ)次ページでも、想像を超える火山島がもつパワー、そこに暮らす人たちが体験したことを写真でご覧いただこう。