地元写真家は見た 大西洋ラ・パルマ島、噴火のリアル

日経ナショナル ジオグラフィック社

ナショナルジオグラフィック日本版

大西洋に浮かぶスペイン領カナリア諸島。2021年9月19日午後。クンブレ・ビエハ火山がごう音とともに噴火。溶岩が斜面を流れ、火山灰が空に向けて噴き出した。ラ・パルマ島は火山島で、地下深くから絶え間なく溶岩が供給されている(PHOTOGRAPH BY ARTURO RODRIGUEZ)

写真家のアルトゥーロ・ロドリゲス氏がスペイン領カナリア諸島最大の島であるテネリフェ島の自宅でシャワーを浴びていたとき、隣室のテレビから動揺した声が聞こえてきた。「噴火しました! 噴火しました! 信じられません!」とリポーターはカメラに向かって叫んだ。

2021年9月に噴火が起きるまでの数週間、北西のラ・パルマ島では、マグマの動きを示唆する群発地震が観測されていた。ラ・パルマ島で生まれ育ったロドリゲス氏は、50年にわたって休止していた火山を監視する科学者たちを撮影するため、旅の準備をしているところだった。

ロドリゲス氏はすぐにシャワーを止め、フライトを変更し、数時間後、ラ・パルマ島に入った。そして、その夜、クンブレ・ビエハと呼ばれる火山の尾根から噴き出す溶岩を撮影した。周囲の町は不気味な光に照らされ、崖にぶつかる波を連想させるごう音が鳴り響いていた。ガラスの破片のような火山灰が空から降り注ぎ、腐った卵のにおいが充満していた。

「このように大規模な噴火を間近で体験することになるとは夢にも思いませんでした」とロドリゲス氏は語る。「とても大きく、とてもパワフルです」

尾根の深い割れ目に沿って、複数の地点から溶岩が流れ出し、周辺の都市に到達した。噴火した当日、ロドリゲス氏はラ・パルマ島に入った(PHOTOGRAPH BY ARTURO RODRIGUEZ)
噴火当日の夜の写真(PHOTOGRAPH BY ARTURO RODRIGUEZ)
(PHOTOGRAPH BY ARTURO RODRIGUEZ)