日経クロステック

仮に(1)を選択した場合、保険料は退職時の標準報酬月額に基づいて決まります。その金額は、原則として2年間変わりません。つまり収入はなくても、これまで同様の健康保険料を毎月支払うことになります。まずは、自分が毎月いくらの健康保険料を払っているのか、確認することから始めてみましょう。

任意継続の健康保険の場合、健康保険料を期限までに納めなければ資格を失うことがあります。国民健康保険の場合は督促状が届きますし、それを無視し続けていると有効期限が通常よりも短い保険証に切り替わることがあります。

毎月きちんと支払っている人との公平性を考えれば、このような措置は当然といえます。なお、事情があって支払えない場合には窓口で相談ができますので、早めに問い合わせをすることをお勧めします。

国民年金も同じです。国民年金保険料については、老後の年金だけでなく、障害年金や遺族年金もカバーしています。支払いが難しい場合には、免除制度や納付猶予制度もあります。

国民健康保険や国民年金は、保険料を滞納しても自宅まで徴収しに来ないと思っている人が多いのですが、それは誤解です。玄関先まで担当者が訪ねてくるケースもあります。マンションのエントランスでインターホン越しに支払いを促され、他の住民に聞かれて恥ずかしい思いをしたという事例も知っています。

住民税の支払いが遅れる人も

国や自治体に納める税金はどうでしょうか。退職後に請求される税金で、最も気になるのは恐らく住民税でしょう。住民税は前年の収入で金額が決まるので、いきなり固定収入がなくなった場合には無視できない額になります。

退職金などを使って一括支払いするのが望ましいのでしょうが、手元にできるだけ現金を残しておきたい場合、この支払いが遅れることもあるようです。仮に遅れた場合、どのような対応になるのでしょう。

税金の支払いが滞っている場合は、財産調査や財産の差し押さえ、公売などの可能性があります。自動車やバイクが使えないようタイヤロックをかけられてしまうなどは分かりやすい例ですが、財産の一部を差し押さえられ、一定の期間でお金に換えられてしまうということです。

支払われない場合は督促状が発送されることになります。知り合いの「税金と公共インフラ料金は払わなくても大丈夫」などという言葉を信じて、度重なる督促状を開封せずに放置、気づいたら内容証明と共に自宅を差し押さえられていたという話もあるくらいです。筆者がカフェで見かけた営業担当者の言葉も、うのみにしてはいけません。

余談になりますが、会社員が税金を滞納すると、給与を差し押さえられることがあります。相続や個人事業などで発生する税金を滞納していると、ある日突然、給与から一定額を差し引かれるといったことが起こるのです。つまり、会社に税金滞納が分かってしまうこともあります。

自らの意思で退職するだけでなく、コロナ禍で意に沿わない形で失業された方もいらっしゃるかもしれません。しかしどんな理由があっても、税金や社会保険料、公共料金についてはしっかり確認しておきましょう。支払いが難しい場合は、きちんと窓口に相談することをお勧めします。

天笠 淳(あまがさ・あつし)
アネックス代表取締役/人事コンサルタント
早稲田大学商学部卒業後、IT企業、金融機関にて人事業務を経験。株式会社アネックス、一般社団法人次世代人材育成機構の代表として、働きやすい職場づくりを主なテーマとし、企業の人事、人材開発のコンサルタントを行っている。次世代人材育成機構では、代表理事として、学生の就職活動へのアドバイスや、社会人のキャリア支援を20年以上手掛けている。著書に『転職エバンジェリストの技術系成功メソッド』『オンライン講座を頼まれた時に読む本』(いずれも日経BP発行)がある。

[日経 xTECH 2022年1月13日付の記事を再構成]