大人の創造性も引き出す

「新型コロナウイルス禍でワークショップもオンラインで行わなければならなくなった今、どうすれば子供たちの興味を最初から最後まで引き付けていられるか、最後まで飽きずに楽しめるようにできるかを考えた」と石川氏は言う。「オンラインでは五感が制限され臨場感が失われるので、カメラを増やしたり映像を使ったりと視覚で補おうと考えた」

スタジオワゴンは3台のカメラとパソコンによる映像を随時切り替えられる。例えば工作の手元を映すときは真上のカメラ、動かす様子は斜め前から、話すときは正面のカメラといった具合に、その時々に合わせて多視点映像を駆使することで臨場感を引き出している。子供は飽きっぽいし正直だが、「子供たちもしっかり付いてきてくれるワークショップをつくることができた」と石川氏は言う。

「製品自体のデザインは非常にシンプルにしているから、子供たちの発想は、ただ作るだけではとどまらない」と石川氏。すぐに自分で模様を描いたり、舌を付けたり、磁石シートを横に並べて羽にしたりと、基本が紙だけに自分の好きなように加工できる自由度が高い。「クリエイティブの課題としてちょうどいい」(石川氏)

「創作には、ある程度の制約が必要だ」と石川氏は言う。「自由に絵を描いてください」では自由度が高過ぎてかえって描きにくい。自分の手で基本のアニマルを1回作ってみることで、「これを使って何ができるのか」という次のクリエイティブな段階に自然につながるというのだ。

美術大学の授業に取り入れたときには大学生ならではのアニマルがたくさん生まれたという。「子供だけでなく大人にとっても、自分のクリエイティビティーを拡張し、発揮できる良い課題になると思う」(石川氏)

ワークショップワゴン構想概念図(画・石川将也)
クラウドファンディングにより完成した「ワークショップ用移動式スタジオワゴン」
左手の手元にビデオスイッチャーという機材があり、画面を自由に切り替えられる。ワゴン自体の商品化構想も
オンラインとリアルを組み合わせたハイブリッド型のワークショップ
会場でも手元の様子などをプロジェクターで見せることで、密にならず進められる

(デザインジャーナリスト 笹田克彦、写真提供 福永紙工、石川将也)

[日経クロストレンド 2021年10月8日の記事を再構成]

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