日経エンタテインメント!

面白いのは、幅広い作品をそろえたAmazonでも、ここでしか見られないジャンルの作品をそろえていること。

「Amazonは利用者数、作品数も多いのですが、注目はバラエティコンテンツが強いということ。ランキングの15位に『HITOSHI MATSUMOTO presents ドキュメンタル』がランクインしています。21年9月から配信スタートした『ザ・マスク・ド・ザ・シンガー』、人気コンテンツになっている『バチェラー・ジャパン』など、他にも人気を得ているバラエティ作品が多いですね」

21年の配信業界の注目は

1997年、東京大学法学部卒業後、警察庁入庁。のちに2000年にニューヨーク大学ロースクールにてLL.M.(法学修士)取得。2002年にマッキンゼーに入社。通信・メディア業界研究グループにおいてマネージャーとして新規事業、マーケティング、組織・オペレーション変革プロジェクト推進に携わる。2008年にGEM Partners株式会社を設立・代表取締役就任

21年の配信業界の動きで梅津氏が注目したのは何か。

「『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が3月に劇場公開されて、8月にはAmazonが定額制動画配信サービス内で独占配信したというのは大きかったですね。累計興行収入100億円を達成した作品が新しいやり方で展開し成功したのを見て、ほかの作品も同様のやり方、あるいはこれまでにない取り組みを仕掛けてくるだろうと思います」

3月末にはU‐NEXTがアメリカの総合メディア企業ワーナー・メディアとSVODにおけるパートナーシップの締結を発表。映画並みのクオリティーを誇るHBO Maxの作品を配信することになり、日本でも人気の海外ドラマ『フレンズ』の続編、『ゴシップ・ガール』のリブート版などが見られると大々的に告知された。その効果はどうだったのか。

「インパクトのあるPR効果はあったと思いますが、弊社の視聴コンテンツ調査をみるとU-NEXT利用者がHBO Maxの作品をすごく見ているかというとそうではなく、利用者の獲得・維持にどこまで寄与しているかは未知数です。一方、U‐NEXTはアニメ、韓国、アジア作品など、ジャンルの品ぞろえが豊富で、シネフィルが好むニッチな作品を確保している。Amazon、ディズニープラス、Netflixと海外の巨大な資本を持っている会社が展開する配信サービス業界にあって、日本企業であるU‐NEXTが今後どのような展開を見せていくのかは注目しています」

一方で、「JAIHO」やCSチャンネルが運営の「ザ・シネマクラブ」など単館系作品だけに特化した映画配信サービスや、アニメ、釣りほか特定のジャンルを専門的に扱う動画配信サービスも増えている。

「このコロナ禍で、自分が見たいものを見るために毎月料金を支払うという消費行動が拡大し、定着しました。他で見られないものが見られる、自分のコミュニティの中で一緒に楽しめるものが見られるのであれば、サービスを利用するのに抵抗がなくなってきているとは間違いなく言えるでしょう」

22年の配信業界はどうなるのか。

「コンテンツ力によって市場が伸びていくでしょう。新規の利用者、利用者当たりの本数も伸びしろがありますが、ユーザーが配信サービスに入るのは、やはり見たいものがあるからです。その点では、Netflixは日本のコンテンツも含めて、製作のための予算を増やしている。『イカゲーム』があれほどの世界的なブームになるほどヒットするとは誰も予測もしなかったと思うんですが、ああいうヒットが生まれた背景には、多くの作品を作り、投資してきていることが大きな要因としてある。ラインアップを大幅に強化したディズニープラスには注目すべきですし、他社もコンテンツへの投資を積極的に増やしています。こうした中で、見たことのないような人々を夢中にさせる新しい作品の登場に期待したいですね」

(ライター 前田かおり)

[日経エンタテインメント! 2022年1月号の記事を再構成]