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有森裕子 パラリンピックを一過性で終わらせない

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日経Gooday(グッデイ)

すっかり秋めいて、ランニングをしやすい陽気になりました。コロナ禍でさまざまな制限がある世の中ですが、一方で、ひとりで自由に過ごす時間が増え、自分なりのランニングルーティンが作れた人も多いのではないでしょうか。緊急事態宣言は解除されましたが、引き続き感染対策に気をつけながら、ぜひ健康のために走り続けてほしいと思います。

自分だったら、伴走者をあれだけ信じて走れるだろうか

さて、東京2020パラリンピックが終わってはや1カ月がたちました。オリンピックでの日本代表選手のメダルラッシュも目を見張るものがありましたが、パラリンピックでも日本代表選手の活躍が非常に目立ちました。人と人とが支え合って、目標に向かっていく姿に改めて心動かされながら、この大会が掲げてきた「多様性」と「共生」の実現を感じました。

陸上女子マラソンT12(視覚障害クラス)で金メダルを獲得した道下美里選手(三井住友海上)が、伴走者を信じ切って見事に走り抜いた姿を見て、もし私が視覚障害のあるマラソン選手だったら、伴走者をあれだけ信じて、100%の力を発揮することができるのだろうかとも考えてしまいました。そして、「信じられるのだろうか」と思うこと自体が、健常者自身が気づいていない心の障壁なのかもしれないとも思いました。

世間の称賛の声は、これまでの報道姿勢の裏返しでもある

今回のパラリンピックは、開催前から注目競技や選手を特集した番組がいつもより多く放送されました。競技そのものの放送時間も、これまでのどのパラリンピックよりも長かったように思います。世間の声に耳を傾けると、「パラリンピックはこんなに面白いのかと衝撃を受けた」「あんなに感動するとは思わなかった」「迫力があって興奮した」など、新鮮な感想が多く、これまでで最も大きな関心を集めたパラリンピックになったことは間違いありません。「パラリンピックの競技や開会式、閉会式を、今回初めてちゃんと見た」という方がほとんどだったのではないでしょうか。

もちろん、競技の内容はこれらの称賛の声に値する素晴らしいものでしたが、違う視点から見れば、「開催国でなければパラリンピックは注目されないのだろうか」と感じずにはいられませんでした。皆が強烈な感動をもらったというパラリンピックは、これまでだって4年に1度開催されてきたのです。

さらに言えば、私が理事長を務める、知的障害のある人たちのトレーニング成果の発表の場であるスペシャルオリンピックス日本の競技会や、聴覚障害者のデフリンピックなど、パラリンピック以外の障害者スポーツの大会も、世界中で開催されています。しかしその存在を知り、観戦に足を運ぶ人は決して多くはありません。その1つの原因として、やはりメディアがパラリンピックを含めた障害者スポーツを、今まであまり取り上げてこなかったことが挙げられると思います。

年間を通じてごく普通に報道されれば、障害者スポーツも他のスポーツと同様、人々を魅了し、気づきをもたらすスポーツであることが伝わり、パラリンピックも、障害者をより知り、理解して共生社会を体現できる大会になるのではないでしょうか。そのことが、今回の東京パラリンピックで証明されたと私は思います。世間の反応を通じて、これまでの報道がいかに偏っていたかということにメディアには気づいてほしいです。

今回のパラリンピックでは、共生社会やダイバーシティー(Diversity)、インクルージョン(Inclusion)、ジェンダーレス(Genderless)、SDGs(Sustainable Development Goals;持続可能な開発目標)など、世界が今注目しているキーワードを掲げて発信することができたとされています。しかし大切なのは、それを今大会だけで終わらせず、障害者を通じた社会定義の発信を継続的に続けていくことです。そして、それらをどれだけメディアが報道してくれるかも重要になります。東京パラリンピックをステップにして、さまざまな立場の組織や人が変化しなくてはいけないでしょう。

そのことは、当事者であるパラアスリートたちにも当てはまります。メダルを獲得した選手は特に、今こそ自分から積極的に世間に発信していくチャンスです。この機会を逃すと、東京パラリンピック以上に自分たちの競技が注目される機会は巡ってこない可能性が極めて高いと思います。パラリンピアンは、毎日トレーニングに励み、不自由な自分の体をどうやって使って競技力を高めるかを考え続け、探求しているトップアスリートです。決して、世間を感動させたいと思って競技をしているわけではないでしょう。ですが、このまま世間の障害者スポーツへの関心が薄れていくと、東京パラリンピックが一過性の「感動ポルノ」で終わってしまう可能性も否めません。

オリンピックとパラリンピックをセットで開催という夢

障害者スポーツのこれからを考えるとき、夢物語かもしれませんが、オリンピックとパラリンピックを区別して時期をずらして開催するのはもったいないと私は思っています。

いずれも平和のスポーツの祭典であるという目的は同じなので、両方を同じタイミングで開催して、世界中の人が観戦し、報道できるような変化に挑戦することも、パラリンピックへの世間の関心が途切れない方法ではないかとも思うのです。もちろん、それぞれ組織委員会があり、それぞれの歴史や意向、スポンサー問題などもあるかもしれません。でも、「オリンピックやパラリンピックが、最終的には社会の中でどんな存在を目指しているのか」と問えば、目指すところは同じではないでしょうか。オリンピックやパラリンピックだけでなく、例えば健常者と障害者の世界陸上が一緒に開催されてもいいのではないかと思います。

オリンピックとパラリンピックが同じ時期にセットで開催されることが世界の常識になれば、健常者と障害者の競技を自然に観戦する文化になるはずです。それが今回のオリンピックやパラリンピックでも掲げられた共生社会の実現や、社会の多様化を促すのではないかと思います。

子どもたちが障害者スポーツを体感できる機会を!

今回、国が実施した、パラリンピックを通じて障害者を理解し、共生社会を学ぶという「学校連携観戦プログラム」で、一部の子どもたちが大会を実際に観戦した経緯がありました。コロナ禍にリアルな観戦が実施されたことに関して、感染リスクの面では議論がありましたが、それは別として、パラリンピックの競技を実際に観戦した子どもたちの中には、純粋に障害者スポーツを興味深く、面白く感じた子どもがたくさんいたのではないかと思います。

ボッチャを見て、実際にやってみたくなった子どももたくさんいるでしょう。私自身、公式のボッチャセットを買おうかと思ったぐらい、やりたくなりました(笑)。そうした気持ちが高まっている間に、障害者スポーツを体感できる機会をより多くの子どもたちになんとか提供できないかと思っています。ボッチャはもちろん、ブラインドサッカー、シッティングバレー、車いすバスケ。どれも障害者と同じ条件でプレーすることが可能です。そうやって体験・体感することで健常者が障害者の感覚を知り、両者の隔たりがない環境が当たり前の世の中になってほしいです。大会の余韻が残っている今こそ、大きなチャンスだということをさまざまな関係者が気づき、行動できるようになれば、多くの人々の未来が楽しみになるのではないでしょうか。

(まとめ 高島三幸=ライター)

[日経Gooday2021年10月6日付記事を再構成]

有森裕子さん
元マラソンランナー(五輪メダリスト)。1966年岡山県生まれ。バルセロナ五輪(1992年)の女子マラソンで銀メダルを、アトランタ五輪(96年)でも銅メダルを獲得。2大会連続のメダル獲得という重圧や故障に打ち勝ち、レース後に残した「自分で自分をほめたい」という言葉は、その年の流行語大賞となった。市民マラソン「東京マラソン2007」でプロマラソンランナーを引退。2010年6月、国際オリンピック委員会(IOC)女性スポーツ賞を日本人として初めて受賞した。

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