イギリスで恐竜の新種 全長8m「地獄のサギ」の素顔は

2021/11/1
ナショナルジオグラフィック日本版

英ワイト島で発見された、白亜紀の恐竜スピノサウルス科の新種2種。Ceratosuchops inferodios(ケラトスコプス・インフェロディオス)(手前)とRiparovenator milnerae(リパロヴェナトル・ミルネラエ)(奥)(ILLUSTRATION BY ANTHONY HUTCHINGS)

美しい風景が広がる英国南部ワイト島の沿岸部。1億2500万年以上前、ここは川と氾濫原に囲まれたサバンナのような谷間で、新たに発見された2種の大型恐竜の生息地としてふさわしい場所だった。

この島で発見された化石がスピノサウルス科の2つの新種であることが、2021年9月29日付の学術誌「Scientific Reports」に発表された。スピノサウルス科は、ワニのような顔で知られる大型の肉食恐竜のグループだ。いずれも、頭から尾までの長さが約8メートル、腰の高さが約2メートルもあった。

科学者たちは彼らにふさわしい名前を付けた。「Ceratosuchops inferodios(ケラトスコプス・インフェロディオス)」は、「角のあるワニ顔をした地獄のサギ」という意味。スピノサウルスは現在のサギのような川岸の捕食者だったという説にヒントを得ている。「Riparovenator milnerae(リパロヴェナトル・ミルネラエ)」は、英国のスピノサウルス専門家アンジェラ・ミルナー氏にちなんだもので、「ミルナーの川岸ハンター」という意味だ。

両種の化石は断片的ではあるが、解明が進んでいないスピノサウルス科に多様性をもたらす点で重要だ。

グループ内での位置づけがわかれば、スピノサウルス科の進化の起源を解明することにもつながるだろう。それは、アフリカ北部のスピノサウルスたちを研究する古生物学者の助けにもなるだろう。

論文の筆頭著者である英サウサンプトン大学博士課程のクリス・バーカー氏は、肉食恐竜に魅せられた人生を送ってきた。今回の研究はその集大成と言える。幼い頃、ロンドンの自然史博物館をしばしば訪れ、バリオニクスの化石を見つめていたという。スピノサウルス科のなかでも、今回発見された恐竜に近い恐竜だ。

「子供の頃に憧れていたものを研究できるなんて、本当に恵まれていると思います」と同氏は言う。

今回の発見は、見つかっていないものがまだ多いことも意味している。ケラトスコプスとリパロヴェナトルが見つかった地層、ウェセックス層は、1800年代から古生物学者が調査を行ってきた場所なのだ。

「古代恐竜の多様性に関する我々の知識は、多くの意味で初期段階です」と話すのは、米メリーランド大学の古生物学者であるトム・ホルツ氏。今回の研究には参加していないが、スピノサウルスの専門家だ。「研究が進んでいると思われている地層についても、まだまだなのです!」

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明らかになってきたスピノサウルス科の実像
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