2021/10/30
マングローブ林の水没した根を隠れ家にするニシキガメ(PHOTOGRAPH BY OCTAVIO ABURTO)

仮説を検証するため、研究チームは、このマングローブとユカタン半島沿岸に生育しているマングローブの遺伝子を比較した。「地球上のあらゆる生物の歴史は、それぞれのDNAに記録されています」と、遺伝子分析を担当した米カリフォルニア大学ロサンゼルス校の生物学者、フェリペ・ザパタ氏は言う。

内陸部のマングローブ林が過去の温暖期に生育し、海面が下がった時に取り残されたのだとすれば、その遺伝子は、現代のマングローブと異なるはずだ。分析の結果は、まさにその通りだった。そして、さらに踏みこんだ研究を行ったところ、最も近い近縁種からも約10万年間隔離されていたことが明らかになった。「古代の世界の生きた化石」であることがわかったと、アブルト・オロペサ氏は言う。

上下を繰り返してきた海面

10万年前、地球の海面は現在よりもずっと高かったとされているが、どれほど高かったかはまだ明らかになっていない。

地球はその不安定な軌道のせいで、誕生以来、大きな気候変動に見舞われてきた。世界の気温もまた、その影響を受けて変化した。

このような気温の変化は、海面の水位にも非常に大きな影響をもたらしてきた。約2万年前のような大氷河時代には、北米大陸は巨大な氷床に覆われ、その範囲は五大湖やロングアイランドまで南下した。南極の氷は現在よりも大規模に広がっていた。

大量の水が氷に閉じ込められるとともに、海面の水位が下がった。冷え切った海は現在よりも小さく、海岸線は今の位置より数キロ遠いこともあった。一方、温暖期には氷が解けて海が広くなり、海面が上昇した。

地球の前回の温暖期(最終間氷期)は、約12万年前にピークを迎えた。当時の地球の気温は、産業革命前の気温と比較すると、セ氏0.5~1.5度ほど高かった。これは、産業革命前の平均気温よりも約1度ほど高くなっている現在と大差ない。パリ協定に署名した多くの国々は、気温上昇を2度未満に抑えること、および1.5度未満に抑える努力をすることに合意している。

「当時の地球の気候は、今とそれほど差はありませんでした」と、米カリフォルニア大学サンタバーバラ校の地質学者で、メキシコ湾の海水面の歴史を研究してきたアレックス・シムズ氏は話す。「そうすると、今後1000年ほどで、地球の海面は5メートル、いや、もっと上昇すると考えるべきでしょうか?」

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海面は9メートル上昇したのか
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