バーナーディネリ氏とバーンスタイン氏は、ダークエネルギー・サーベイのデータをさかのぼって彗星の画像を探し、尾を特定しようとした。その結果、データの中に隠れていた非常に微弱な信号を発見し、彗星が太陽から40億キロも離れた場所(太陽から天王星までの平均距離より約40%も遠い場所)でガスを放出しはじめたことがわかった。

バーナーディネリ氏のチームは、彗星のコマが時間の経過とともにどのように変化してきたか、太陽に近づくにつれてどのくらい明るくなってきたかを追跡することで、彗星で起きている化学反応のモデルづくりに着手することができた。太陽からこれだけ離れていれば太陽光は非常に弱いはずで、彗星から放出されているガスは二酸化炭素か窒素であると考えられた。

「これは非常にすばらしいことです。これほど遠くからの観測で、彗星の組成についてかなり確実な推論をすることができたのですから」と、オーストラリア、ニューサウスウェールズ大学の惑星科学者ベン・モンテ氏は語る。

2017年10月、ダークエネルギー・サーベイの合成画像に写った、太陽から25天文単位の距離にあるバーナーディネリ・バーンスタイン彗星(Source:Dark Energy Survey/DOE/FNAL/DECam/CTIO/NOIRLab/NSF/AURA/P. Bernardinelli & G. Bernstein (UPenn)/DESI Legacy Imaging Surveys)

探査も期待される明るい未来

科学者たちはすでに、探査機でバーナーディネリ・バーンスタイン彗星を訪れるためには何が必要か検討しはじめている。今のところ正式なミッションは計画されていないが、世界の宇宙機関が迅速に動いて29年までに探査機を打ち上げられれば、33年に彗星を調べることができるはずだ。

研究者たちは、この彗星が太陽によってどのくらい変化したかを知るために、太陽系の中をどのように動いてきたかも調べている。バーナーディネリ氏とバーンスタイン氏のチームの計算によると、彗星は31年に少なくとも300万年ぶりに太陽に最接近するという。

ただし、彗星の過去をこれ以上深く探ることは非常に難しい。オールトの雲から来る彗星の軌道は、太陽系の近くを通過する恒星によって乱されやすい。数年前の研究によると、今から約280万年前に、太陽に似た「HD 7977」という恒星が太陽系の近くを通過したことが明らかになっている。しかし、この恒星がどこを通過したのかはわからない。

この不確かさは、オールトの雲から来る彗星に恒星の重力が及ぼす影響はよくわからないことを意味しており、バーナーディネリ・バーンスタイン彗星が前回太陽系の内側に飛び込んできた時期や、太陽に再接近したときの距離の評価にもかかわってくる可能性がある。

彗星が近づくにつれて、その大きさの推定値も変わってくるかもしれない。150キロという推定値は、現時点での彗星の明るさと、彗星が放出する塵やガスに関するモデルに基づいている。しかし、この方法で彗星の大きさを正確に見積もるのは容易ではない。彗星が放出するガスのモデルが不完全だと、核が実際よりも大きく見えてしまうからだ。

米サウスウエスト研究所の研究者で彗星力学の専門家であるルーク・ドーンズ氏は、「彼らは非常に良い仕事をしましたが、おそらく、この天体は彼らの推定よりかなり小さいことが判明すると思います」と語る。

一方で、バーナーディネリ・バーンスタイン彗星は、世界中の天文学者にめったにない贈り物をしてくれる。それは時間だ。現在チリに建設中で、23年の稼働を予定しているベラ・C・ルービン天文台は、少なくとも10年間はこの彗星を追跡することができる。最新の望遠鏡は、太陽系に対する私たちの見方を一変させ、同じような彗星をさらに発見させてくれるだろう。

彗星が私たちの方に向かってくる間、世界中の科学者や一般市民は、望遠鏡を夜空に向けて、めずらしい訪問者の姿を見ることができる。それは、淡く広がる尾をひいた、巨大な氷の塊である。「すばらしい眺めだと思いますよ」とモンテ氏は言う。

(文 MICHAEL GRESHKO、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 日本版サイト 2021年10月06日付]

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