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埋葬だった? 謎の人類ホモ・ナレディ、死者を洞窟に

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

地下45メートルにある狭い裂け目に入った人類学者のレベッカ・ペイショット氏は、体をよじらせ、少しずつ曲がりくねった通路を進み、小さな岩棚にたどり着いた。そこには「お宝」が待ち受けていた。24万年以上前に生きた1人の子どもの歯と骨の断片だ。「ホモ・ナレディ」として知られる謎の人類の子どもだった。

2013年に最初の化石が見つかって以来、ここ南アフリカのライジング・スター洞窟系では、2000個近くにのぼるホモ・ナレディの骨と歯が採集されてきた。今回発見された子どもの化石は4歳から6歳の間に死亡したと推定され、6本の歯と28個の頭蓋骨の断片が見つかっている。

2000個の断片はいずれも、足のすくむような垂直の岩壁や、通り抜け困難な狭い通路を攻略しないと、発見できなかった。しかしペイショット氏らによる今回の発掘作業は、これまでで最も困難なものだったかもしれない。

この子どもの骨は、地元のセツワナ語で「失われた者」を意味する「レティ」の愛称で呼ばれている。そして迷路のような洞窟で見つかったレティは、ある疑問を投げかける。一体、ホモ・ナレディはどのようにして、そしてなぜ、この暗くて曲がりくねった洞窟の奥深くに入っていったのか?

「このような場所でホモ・ナレディの骨が見つかるとは、関係者の誰もが予想していませんでした」と、米ウィスコンシン大学マディソン校の古人類学者ジョン・ホークス氏は話す。「ありえないような通路を何十メートルも進むのです」

レティの骨の発見は、21年11月5日付で学術誌「PaleoAnthropology」に発表された。この骨は、17年と18年に行われた洞窟最深部の調査で発見された。研究チームはまた、300メートル以上の新しい通路をマッピングし、同じく11月5日付で同誌に発表した。

この研究によって、より広いライジング・スター洞窟系から「ディナレディ・サブシステム」への入り口は、1つしかないことが明らかになった。ディナレディ・サブシステムは、これまでに大多数のホモ・ナレディの骨が発見されている「ディナレディ」と呼ばれる空間と、周辺の複雑な通路群を指す。今回のレティの骨は、このサブシステムの入り口から通路を30メートルも進んだ奥深いところに残されていた。

今回の発見は、ホモ・ナレディが死者を意図的に処分するために遺体を持ち込んだ可能性を示唆しているという。「この小さな子どもの頭蓋骨が、こんなにも手の届きにくい危険な位置にあることの理由は、他に見当たりません」。今回の発見についての記者会見で、南アフリカのウィットウォーターズランド大学の古人類学者であり、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー・アット・ラージでもある調査隊のリーダー、リー・バーガー氏はそう述べた。

しかし、この研究に参加していない科学者の中には、まだ納得していない人もいる。ホモ・ナレディが死者を洞窟に運んだかどうかは、古人類学者や考古学者にとって重大な意味を持つ。死者を意図的に扱うことは文化の複雑さを意味し、現生人類であるホモ・サピエンスにしかないと考えられていたからだ。

ジャングルジムのような洞窟

15年に発表されたホモ・ナレディの発見は、人類の進化がかつて考えられていたよりも複雑であることを示している。現代と古代の特徴が混在するホモ・ナレディの不思議な姿は、科学者たちを騒然とさせた。しかし、この小さな初期人類について最も驚くべきことは、踏み込むことが困難な洞窟の奥深くで見つかっていることだ。

13年の最初の調査チームは6人の女性科学者で構成されていた。全員が洞窟探検のエキスパートであり、さらに、ジャングルジムのような洞窟の中を通れるくらい小柄であることが重要だった。ナショナル ジオグラフィック協会の支援を受けた調査隊は、これまでに少なくとも20体のホモ・ナレディを発掘している。そのうち15体は、ディナレディ・サブシステム内のある1つの空間の中で発見された。

このように遺体が1カ所に集中しているのは、いわゆる「死の罠(わな)」によるものであることが多い。死の罠とは、無防備な動物や人間がそこに落ちてしまうような洞窟の穴だ。ただ、死の罠では南アフリカのマラパ洞窟内で発見されたように、さまざまな動物が犠牲になる。しかし、ライジング・スターの骨のほとんどは、ホモ・ナレディだ。

研究チームは、ホモ・ナレディの遺体が洞窟に行き着いた理由について、他の多くの説明も不十分だとしている。骨には歯形がないため、肉食動物がホモ・ナレディを洞窟に引きずり込んだとは考えられない。また、水に流されてきたとも考えにくい。骨がほぼそのままの状態で発見された部分もあり、中には、生きているときと同じように、手のひらを上にして、指を内側に曲げた状態のものもあったからだ。

しかし、死体を抱えて洞窟に入るのは危険なことだったはずだ。この洞窟系の唯一の入り口を詳細に観察すると、ホモ・ナレディの時代には2つの入り方があったことがわかる。1つは、高さ12メートルほどの垂直に近い縦穴を降りる方法で、もう1つは、縦穴の壁の1つにある、かろうじて通れる隙間を降りる方法だ。

研究チームは当初、ホモ・ナレディが縦穴からその下の空間へ死体を捨てていたと考えていた。しかし、追加の発掘調査により、洞窟の奥深く、今回子どもが発見された場所を含む3つの場所にも、骨があることが判明した。

「これらの場所は、ホモ・ナレディがこのサブシステムの中にいなければ、遺骨が存在し得ない場所です。つまり、生きたホモ・ナレディが縦穴を降りてこの洞窟に入ってきていたことを意味します」とホークス氏は言う。

わき上がる疑問の声

しかし、他の科学者たちは、まだ納得していない。今回のマッピングと新たに発見された骨について、「初期人類が意図的に置いたと証明するには至っていません」と、英ダラム大学の考古学者であるポール・ペティット氏はメールで語った。ただ、最新の発見は、意図的であった「可能性をより高める」ものだと付け加えている。

ペティット氏以外にも、別の可能性を指摘する研究者はいる。ドイツのテュービンゲン大学の博士研究員オーロール・ヴァル氏は、ホモ・ナレディが何らかの形で洞窟を利用していて、そこで死んだのではないかと言う。

同氏はヒヒを例に挙げる。ヒヒは洞窟で夜を過ごすことが多いが、時にそこで死んでしまうことがある。死ぬ個体は大抵、非常に幼いか、非常に老いているかのどちらかで、病気をはじめとするさまざまな理由による自然死だという。

21年3月11日付で学術誌「Journal of Paleolithic Archaeology」に発表されたヴァル氏らの研究によると、ライジング・スターのホモ・ナレディの遺骨と、同じく南アフリカのミスグロート洞窟のヒヒの遺骨に、同じような未成熟個体と老齢個体の散らばりが見られることが明らかになった。「私たちが謎を解いたとは考えていません」と同氏は言う。「でも、調査する価値はあると思います」

議論はきっと続くだろう。ホモ・ナレディが洞窟の曲がりくねった通路を進んで死者を処分していたことが確実になれば、科学者の考え方が大きく変わることになる。現存する生物の中で、死者を意図的に埋葬するのはホモ・サピエンスだけだが、ネアンデルタール人もそのような行為を行っていた可能性はある。

エリオット氏によれば、他の初期人類が意図を持って死者を処理することは、それほど驚くべきことではないのかもしれない。

「人間は自分が特別な存在であると感じたい生き物で、他の種がそれを侵害するのを嫌うのです」と同氏は話す。しかし、かつて科学者たちがホモ・サピエンスの特徴と考えていた道具作りなどの多くの特性は、その後、他の人類や霊長類にも共通することが証明されている。

エリオット氏は、まだ多くの疑問が残っていることを認める。今回の2つの新しい研究は、謎をさらに深めているようにも思われる。「しかし、それは明らかに良いことです」と同氏は話す。「解明すべきことがたくさんあるということですから」

(文=MAYA WEI-HAAS、訳 桜木敬子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 日本版サイト 2021年11月10日付]

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