西島同様、本作のシリアスパートを担うのが、蒔田彩珠と道枝駿佑。蒔田は南雲の娘・エリ、道枝は事件の舞台である村の若者・守にふんしている。

「どちらも今回のキーパーソンです。蒔田さんはドラマ『重版出来!』など以前から僕のプロデュース作に出ていただいていて、芯が強く、感情の機微の出し方がとても魅力的で。道枝さんはじっくり考えて演技するなかで時折すごいものが降りてくる。編集している時に監督も僕も驚かされたシーンがありました」

(C)2021『99.9-THE MOVIE』製作委員会

そして何よりの魅力は、変わらぬ世界観。シリアスな法廷シーンでは松本と監督が議論を重ね、何度も細かい調整が行われたという。一方、刑事事件専門ルームのシーンでは、キャスト陣がリハーサルでいきなり仕掛けることも。

「法廷シーンでの、納得するものが撮れるまで諦めなかった俳優陣の姿勢は今作の真骨頂だと思います。刑事事件専門ルームでのパス回しにもその片りんはありますね。俳優の皆さんは、『そっちがそう来るなら……』と負けず嫌いなんですよね(笑)。セリフのかぶせ合いは本来スタッフ泣かせなんですが、この作品に関してはカメラマンも『本番で急に俳優が立ち位置を変えても撮るぞ』という体制なので(笑)、俳優陣も安心して芝居しているようです」

深山と佐田(香川照之)の軽妙なやりとりも、白熱した演技合戦になったと明かす。

「台本上では1~2行だったあるシーンが、松本さんと香川さん、監督の3人からどんどんアイデアが出てきて、とんでもない長さになったんです。結果的に撮り尺が想定の40~50分ほどオーバーしたので、松本さんも香川さんも編集でどこか切られるだろうと思っていたようなんですが、監督は追加したシーンを最初のプレビューからずっと切ってなくて(笑)。見ていただければ、どのシーンか分かると思います。切れなかった理由も」

(ライター 松木智恵)

[日経エンタテインメント! 2022年1月号の記事を再構成]

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