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エーゲ海沿岸で3600年前の噴火と津波 犠牲者を発見

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ナショナルジオグラフィック日本版

約3600年前の後期青銅器時代、エーゲ海の火山島が噴火し、破壊的な津波を引き起こした。その津波による犠牲者の遺骨が、最近になって、噴火したティラ火山(現在のサントリーニ島)から160キロ以上離れたトルコの海岸で初めて見つかり、2021年12月27日付で学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表された。

史上最大級の火山被害をもたらしたと推定されるこの「ミノア噴火」は、火山爆発指数で「超巨大」の7に区分され(最大指数は8)、その規模は広島型原爆の数百万発分に相当するとみる専門家もいる。津波の犠牲者は数万人と推定されるが、なぜかこれまで遺骨は見つかっていなかった。

恐ろしい災害の記憶は長い間語り継がれ、発生から1000年以上後になって書かれたプラトンのアトランティス伝説の下地にもなったと考えられている。また、旧約聖書の出エジプト記に記されている10の災いも、この噴火によるものではと考える学者もいる。火山灰に埋もれたミノア人の古代都市アクロティリは、しばしば古代ローマのポンペイと比較され、今では人気の観光地になっている。

噴火とそれによって引き起こされた災害の直接的な証言は記録されていない。しかし現在、災害の規模はどれくらいだったのか、地中海沿岸に住んでいた人々にどのような影響を与えたのかを明らかにしようと、研究が進められている。ティラ島のすぐ近くにあるクレタ島を中心に海洋交易で富を築き上げたミノア文明は、ちょうど噴火が起こった時期から衰退を始めた。

遺体は偶然見つかった

犠牲者の遺骨は、エーゲ海沿岸の人気リゾート地チェシュメにあるチェシュメ・バウララス遺跡で見つかった。サントリーニ島からは北北東へ160キロ以上離れている。

現在の海岸線から2ブロック離れた住宅地で、アパート建設中に古代の土器が発見されたことをきっかけに、2002年から発掘調査が行われていた。それ以来、現場からは保存状態の良い建物や道路の跡が発見され、紀元前3000年代半ばから紀元前1200年代まで、ほぼ継続して繁栄した集落が存在していたと考えられるようになった。

ところが、2009年に新たに発掘作業の指揮を任されたトルコ、アンカラ大学の考古学者バシュフ・シャホグル氏が、別の場所を掘ってみると、出てきたのは倒壊した城壁や灰の層、割れた土器や骨、貝殻といった混沌としたものばかりだった。

途方に暮れたシャホグル氏は、様々な専門家に助けを求めた。そのうちの一人が、イスラエルにあるハイファ大学の海洋地球科学教授ビバリー・グッドマン・チェルノフ氏だった。ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(協会が支援する研究者)でもあるグッドマン・チェルノフ氏は、考古学や地質学の記録から過去の津波を見つけ出すことを専門としている。

過去の津波の痕跡を特定するのは困難だ。倒壊した建物や火災の跡は、地震や洪水、嵐によるものと区別がつきにくい。おまけに、エーゲ海沿岸の乾燥した気候では、そうした証拠は急速に消滅してしまい、後に残らない。

しかし、最近は研究が進み、過去に発生した津波を特定するための「チェックリスト」がかなり洗練されてきている。例えば、津波によって陸へ運ばれた海洋生物の痕跡、海からの堆積物や土砂によって形成された特徴的な地層などが手がかりになる。チェシュメ・バウララスでは、海から流されてきた甲殻類の塊が、倒壊した建物の壁に挟まっていた。

犠牲者のない史上最大級の自然災害?

不思議なことに、これまでティラ噴火による犠牲者はほとんど見つかっていなかった。1883年にインドネシアのクラカタウ火山が噴火し、津波が発生した時には3万5000人以上が死亡したと推定されており、ティラ噴火でも同様の被害があったとされている。

ところが、これまでに発見されているのは、19世紀の調査でサントリーニ諸島のがれきの中で見つかった男性の遺骨1人分だけだった。最新の論文著者らは、この男性は津波ではなく地震で死亡していた可能性があると考えている。そこで現在、その死亡時期や死亡時の状況、まだ研究に使えそうな遺骨が残っているかなどを確認するために、発見時の記録を調べている。

犠牲者がほとんど発見されていない理由については、諸説ある。この噴火の前に小規模の噴火が起こったため、住人たちはそこから既に避難していたという説や、超高温ガスで骨まで焼かれてしまった、ほとんどの犠牲者が海へさらわれた、また集団墓地に埋葬され、まだ発見されていないのだろうという意見もある。

「史上最大級の自然災害なのに、犠牲者が全くいないなどということがあるでしょうか」と、シャホグル氏は問う。グッドマン・チェルノフ氏は、過去の津波の堆積物に研究者たちが気付かなかったのと同様、既に犠牲者が発見されているものの、津波とは別の災害に関連付けられていて気付いていないだけかもしれないと考えている。

今回チェシュメ・バウララス遺跡で発見された骨は、確かに津波の犠牲者のものであると、研究者たちは確信している。若い健康な男性の骨格には、鈍器による外傷の跡が見られ、津波の堆積物の中でうつぶせに倒れていた。

また、そのすぐそばの倒壊した玄関跡からは、イヌの骨も見つかった。どちらの骨も、直接的な年代測定は数カ月先になるが、それらの周辺で発掘された遺物の放射性炭素年代は既に測定されており、男性とイヌもほぼ同年代であろうとみられている。

数日から数週間で津波は4度訪れた

研究者たちは、数日から数週間の間に4回の津波がチェシュメ・バウララスを襲ったと結論付けた。米ハワイ大学ウィンドワード校の地質学と海洋学教授で、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーでもあるフロイド・マッコイ氏は、今回の研究には参加していないが、この点が特に興味深いとしている。ティラ島の噴火は4段階に分かれ、これまではそのうちのいずれかの段階で巨大津波が1回だけ起こったと考えられていた。

ところが最新の論文は、2段階、3段階、あるいは4段階の噴火全てが津波を引き起こした可能性があることを示唆している。

津波と津波の合間に、生存者たちは犠牲者や家財を探して、混乱した被災地の土を掘り返していたようだった。そのような形跡が、今回発見された男性の遺骨の真上にも残されていた。しかし、穴を掘っていた人物は男性の遺体へたどり着く数十センチ手前で掘るのをあきらめていたようだった。

土を掘り返した跡があったということは、当時の人々が災害による犠牲者の遺体を回収して適切に埋葬しようとしていたことを示している。おそらく病気の蔓延を懸念して、集団埋葬を行ったのではないかと考えられる。「これほどの規模の災害に犠牲者の遺骨が発見されていないことの理由が、これで説明できます」と、ベルギー、ルーバン・カトリック大学の考古学者ヤン・ドリーセン氏は言う。

議論を呼ぶ津波の年代

今回の研究では、9つの堆積物の放射性炭素年代が測定されたが、これが新たな議論を呼ぶ可能性がある。

これまで、噴火が起こったのは考古学的な調査から紀元前1500年ごろ(古代エジプト第18王朝期)と考えられていた一方で、サントリーニ島の灰の層から見つかった木の放射性炭素年代は紀元前1600年代半ばから後半と測定されていた。この違いは、当時の地中海世界における異なる文化の年表を相互に関連付け、災害の前と後でどのような異文化交流があったのかを明らかにしようとする研究者にとっては厄介な問題だ。

今回測定された遺物のうち最も年代が古かったのは、男性の遺骨のそばで見つかった大麦の粒で、紀元前1612年とされた。研究者たちは、噴火の時期がこれよりも早かったということはないだろうと言う。

しかし、このやり方で噴火の時期を特定することに疑問を持つ外部の専門家もいる。また、新しいデータは歓迎するものの、チェシュメ・バウララスでこれまでに発見されたもので年代の問題は解決しないだろうというのが一般的な見方だ。

噴火の時期や、それが青銅器時代の地中海世界にどのような被害をもたらしたかについて、疑問はまだ多く残されている。しかし今回の研究によって、この地域で活動するほかの考古学者たちも、自らの研究成果を見直し、何か関連する証拠を見逃していないかどうか確認する機会になればと、関係者は期待している。

(文 KRISTIN ROMEY、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2022年1月4日付]

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