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サクラクレパス 288通り選べる「大人のボールペン」

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サクラクレパス(大阪市)の新ブランド「SAKURA craft_lab」(サクラクラフトラボ)が誕生したのは2017年9月。17年発売のボールペン「001」が「文房具屋さん大賞」の大賞、19年発売の「004」が同賞のデザイン賞を受賞するなど、高い評価を得ている。21年11月発売の「SAKURA craft_lab 006」(以下、006)は、選択肢の中からパーツを選び、組み合わせて購入できるボールペン。カスタマイズした一点物で、所有物にこだわりを持つ人々にブランドを訴求する。

SAKURA craft_labは、17年の誕生以来、身の回りの所有物にこだわりを持つ人々をターゲットに商品開発を続けてきた。新作の「006」は、3種類のパーツ群と6色のインクの組み合わせで、288通りの選択肢からカスタマイズしたボールペンを購入可能だ。大人の感性を刺激するとのブランドのスタンスはそのままに、近年注目が高まる「カスタマイズ」「パーソナライズ」を取り入れ、より愛着を持って使ってもらおうと開発した商品だ。

006は、自分らしさを表現できるカスタマイズ性を備えながら、5年、10年と長く使い続けられるものを目指して開発した。そのため、ボールペン本体に使用する素材や質感、パーツ点数などの検討を重ね、開発から発売までに1年間ほどを費やした。

特徴的な意匠がボディーのグリップ部分のスリットだ。これは、選んだ内部のパーツがよく見えるようにと設けたもの。キャップの形状などに取り入れた有機的な曲線使いが、高い質感を際立たせている。

大人をワクワクさせる商品開発

サクラクレパスは主に、「クレパス」や「クーピーペンシル」、ポスターカラーなど、子供向け絵画用品の分野で知られるブランドだ。小さい頃の思い出や懐かしさによって、大人にも好意的に捉えられていると分かっていた。そこで、大人に再認識してもらい、ブランドの存在感を底上げしようと開発したのがSAKURA craft_labだ。子供の頃と同じように、「書く」や「描く」を通じて大人をワクワクさせる商品でありながら、普段使いでき、市場規模が大きい文具として筆記具に着目。006を含めて、これまで7種類のボールペンを発売している。

カスタマイズ機能を備えた006の価格は、開発当初から、3万円前後を目指していた。同ブランドのこれまでの商品よりも高額な価格設定なので、店舗で手に取り、じっくり試すことでカスタマイズの魅力を訴求するプレゼンテーションが必要と考えた。そこで、全国100店舗ほどの取扱店向けに専用什器(じゅうき)を開発。カスタマイズの楽しさに加え、各パーツの美しさや触り心地など、商品の魅力をこの什器でアピールする。パーツは素材が違えば重さも異なるため、手にした際のしっくり具合なども確かめることができる。

什器には、上段にお薦めの組み合わせを施したボールペンのサンプルを4本置き、その下に、ボールペンを構成するパーツをレイアウト。パーツは左から、頭冠とキャップ、同軸から成る「ボディー」と、ロゴプレート、口金、グリップから成る「コア」、そして「クリップ」だ。什器右下には、インク色を選んで試筆できるリフィルを並べている。

カスタマイズは、SAKURA craft_labのWebサイトのシミュレーターで試すこともできる。ボディー、コア、クリップ、リフィルをそれぞれ選び、「カスタマイズ」を押すと、ビジュアルや合計金額が表示される。

カスタマイズの魅力を最大化

選択するパーツ数も、検討を重ねて決定した。パーツ数が少な過ぎればカスタマイズの魅力に欠けてしまうが、パーツ数が多過ぎればどれを組み合わせればいいか、購入者は戸惑ってしまう。最終的に、販売時の店舗でのオペレーションも考慮に入れ、現在の3種類のパーツ群とリフィルの組み合わせにした。

各パーツは専用パッケージに入れた状態で販売し、ユーザーが自分で組み立てて使用する。組み立てる楽しさも、提供したい価値の一つと考え、当初は、組み立て用のドライバーなどを同梱するというユニークな案もあったという。しかし、最終的に手軽さを優先し、工具無しで組み立てられる設計とした。ギフト需要も視野に入れ、ボールペン1本分のパーツをパッケージごと収められる専用BOXも用意している。

ボディーのカラーは、赤系や黄系も検討したが、ターゲットや使用シーンと照らし合わせ、現在の落ち着きのあるカラーバリエーションになった。大きくロゴを入れることも考えたが、こちらも同様の理由から取りやめた。あらゆる要素において、大人の感性を刺激するというブランドのスタンスを貫いている。

006は、21年11月に出荷開始したところ、想定以上の売れ行きとなったという。店舗からも、好調な滑り出しという反響が寄せられている。

中でも人気のパーツが、独特の木目模様が目を引くパイプウッドのコアだという。タバコのパイプなどに使われる希少な木材を使ったこのパーツは、使っていくうちにさらに愛着が増していきそうだ。

各パーツや什器自体からも、素材や質感のこだわりを追求するブランドの姿勢や世界観が感じられる006。どのパーツを組み合わせるか、パーツを手に取り、組み合わせを吟味する行為を通じて、ブランドへの理解がさらに深まっていく。

(ライター 廣川淳哉)

[日経クロストレンド 2022年3月3日の記事を再構成]

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