脳は何歳になっても変えられる 生活習慣を見直すだけ最新科学に基づく脳のメンテナンス法(上)

2022/3/17
日経Gooday(グッデイ)

加齢とともに脳細胞はどんどん失われていくが、最近の研究によって、70代、80代、そして90代の人でも、適度な運動や食事、ストレス軽減、十分な睡眠、サプリメントの摂取など、生活習慣を少し変えることで、脳細胞の新生を促せることが分かった。最新刊『脳メンテナンス大全』の中から脳科学者の著者が、最新科学に基づく脳のメンテナンス法の基本を紹介する。

※本原稿は、『脳メンテナンス大全』(クリステン・ウィルミア、サラ・トーランド著、野中香方子訳)を抜粋・再構成したものです。

脳の仕組みは非常に複雑だが、実のところ、脳を変えるのはとても簡単だ。私は、治療を実行する前と後の患者の脳画像を何千枚も見てきた。そして、ライフスタイルを少し変えると、ほんの数カ月で目覚ましい変化が起きることを知り、驚き、感動した。

2009年、私が主導して、アメリカンフットボールの選手の臨床研究を行った。アメフトは、選手同士が激しくぶつかり合うコンタクト・スポーツの典型で、頭部に強い衝撃を受ける。私たちは、ヘルメットの中で何が起きているかを理解するため、選手の脳画像を撮影し、分析した。前例のない大規模な研究だった。

まず、選手たちに神経心理学的検査と神経認知学的検査を受けてもらい、続いて、脳の奥深くを観察し、どの分野がうまく機能し、どの部分があまり機能していないかを知るため、脳の画像を撮影した。

アメフト選手の衝撃的な脳画像

アメフト選手を対象にした研究により、生活習慣を変えることで脳の機能が向上することがわかった(写真=PIXTA)

選手や元選手たちの脳画像を見て、私たちは非常に驚いた。彼らの大半は、脳に必要な血液が行き渡っておらず、特に、記憶と基本的な認知機能を司(つかさど)る領域で血液が不足していたからだ。

それでも私たちは落胆しなかった。彼らの認知機能は回復し、フィールドでも日常生活でも、再び脳がきびきびと働くようになると信じていたからだ。しかしそのためには、彼らは日々の生活習慣を変える必要があり、私たちは、彼らの信頼を得る必要があった。

それから半年にわたって選手たちと話し合い、脳の機能を説明し、各自の認知機能データに基づいて生活習慣や食生活を見直すよう指導した。各選手に合わせた治療計画には、いつ、どのくらい眠り、何を食べ、どのサプリメントをとり、どれを避けるべきかといったことを盛り込んだ。

半年後、選手たちの脳を再びスキャンし、最初のときと同じ検査をした。その結果は、最初の検査で見た脳画像よりさらに衝撃的だった。わずか180日で、脳内の血流が最も悪かった選手たちの脳機能が回復したのだ。脳の血流が改善し、不摂生や度重なる衝撃のせいでダメージを受けていた認知領域の機能が回復しているのがはっきりわかった。

100キロ超の男たちから何度も体当たりされているプロのアメフト選手が脳を変えられるのなら、一般の人々はアメフト選手よりもっと楽に、脳を変えることができるだろう。

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脳細胞は何歳になっても生み出せる