日経ナショナル ジオグラフィック社

2021/12/26
イリノイ州が所蔵するこの銅板は、カホキアで作られたものと考えられている(SMITHSONIAN INSTITUTION/DEPT. OF ANTHROPOLOGY)

カホキアをはじめとするミシシッピ文化の遺跡から出土する遺物は、当時の北米の村々に大規模な交易ネットワークが存在したことを示している。カホキア遺跡の「34番」の墳丘には、北米で唯一の、先住民が銅を扱った作業所があったことがわかっている。銅は五大湖地域からカホキアに運ばれていた。銅塊を加工して作られた神聖な品々や外交的な贈り物は、大陸中のミシシッピ文化の遺跡で見つかっている。

両側が平らになったこの石の円盤は、カホキアで人気があったゲームで使われていたもの(IRA BLOCK/NATIONAL GEOGRAPHIC IMAGE COLLECTION)

高くそびえる墳丘

カホキアにはかつて120基もの墳丘がそびえていた。現在はそのうちの80基が保存され、カホキア墳丘群州立史跡の一部となっている。この都市では、広場、家、公共の建物、墳丘、そしてそれらをつなぐインフラが、すべて太陽と月の動きに合わせた格子上に配置されていた。

墳丘は、カホキアの文化においてさまざまな目的を持っていたことが明らかになっている。考古学者は、墳丘をその構造に基づいてフラットトップ(上部が平面)、ラウンドトップ(上部が丸みを帯びている)、リッジトップ(上部が平面でない)の3つに分類している。フラットトップの墳丘は通常、上部に何らかの建物があり、ラウンドトップの墳丘は埋葬用だった。リッジトップの墳丘は、一部には埋葬に使われているものもあるが、「方向を示す」役割を持つものと分類されている。

最大の墳丘であるモンクス・マウンドは、広さ約5万7000平方メートル、高さは約30メートルある。いちばん高い段の上にはかつて、族長または神官の住居、あるいは儀式の場と見られる構造物があった。モンクス・マウンドの建設には約62万立方メートル分の土が必要だったと考えられている。土は近隣で石器を使って掘り出され、かごに入れて運ばれた。

カホキアには2基で対になった墳丘が4組あり、どれも一方はフラットトップ、もう一方はラウンドトップになっている。フラットトップの墳丘の上には遺体安置所が建てられ、そこで遺体の準備を整えてから、もう一方の墳丘に埋葬していたのかもしれない(IRA BLOCK/NATIONAL GEOGRAPHIC IMAGE COLLECTION)

謎の衰退

最盛期には1万5000人がカホキアに住んでいたとされるが、1400年にはすでに閑散としていた。カホキアの消滅は、おそらくはその出現よりもさらに大きな謎と言えるだろう。周辺のかなりの部分からも住人がいなくなったことから、この時期の一帯は「Vacant Quarter(無人の地)」と呼ばれている。

歴史家によると、カホキアの都市は気候がとりわけ良好な時期に繁栄を極め、縮小が始まったのは、気候が以前よりも寒冷で乾燥し、予測がしづらくなったころだという。定期的な作物の収穫に頼っていた農業コミュニティーにとって、こうした状況の変化は単なるストレスにとどまらず、壊滅的な影響を与えた可能性もある。

1175年から1275年の間に、カホキアの住人は都市を取り囲むように防御柵を築いた(数回にわたり再建もしている)。これは争いや争いの脅威が日常の一部となっていたことを示している。また、人口の密集が引き起こす公害や病気、資源の枯渇などの環境問題によって、これまで多くの社会が崩壊してきた。

カホキア崩壊の最も有力な説の一つは、いわゆる森林破壊仮説と呼ばれるものだ。1993年、南イリノイ大学エドワーズビル校の研究者らは、カホキアの衰退は防御柵などの建造のために大量の木を切り倒したことによるものではないかという仮説を提唱した。木が少なくなれば、浸食が進み、洪水が起こり、収穫が減る。彼らの仮説は、カホキア研究者の間で広く受け入れられた。

再現された防御柵の木製部分(DON BURMEISTER/NATIONAL GEOGRAPHIC IMAGE COLLECTION)

2021年春、地質考古学者のケイトリン・ランキン氏がこの考えを覆した。ランキン氏は学術誌「Geoarchaeology」に研究を発表し、森林伐採や洪水が都市滅亡の原因になったとする説を否定した。ランキン氏が行った発掘調査からは、カホキアの時代に洪水が起こった痕跡は見つからなかったという。

学者たちはさまざまな説を検討しており、異なるグループ間の争いが増えて都市の衰退を招いたのではないか、あるいは、一帯で大規模な干ばつが起こったために、カホキアの人々がより肥沃な土地を求めて都市を離れたのではないかといった意見が出されている。

カホキア遺跡の「5番」墳丘付近で発掘を進める地質考古学者のケイトリン・ランキン氏(MATT GUSH)

(文 EDITORS OF NATIONAL GEOGRAPHIC、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 日本版サイト 2021年12月4日付]