「リングコッドには上顎と下顎があり、これは人間と同じですが、彼らのものはより可動性が高く、前に突き出すようにして大きく広げられます。口の中の口蓋を見れば、そこも歯に覆われているのがわかります」。そして、喉のずっと奥、食道の手前には、鰓弓(さいきゅう、鰓を支える骨)が変形してできた骨質の台に歯がたくさん生えている咽頭顎(いんとうがく)がある。
リングコッドが攻撃するときには、まず顎で前方の獲物を口の中に引き込んでから、咽頭顎でかみ砕いて細かくする。そのために、リングコッドは針のように鋭い歯を持っているが、これらは非常に壊れやすい。
では、どうすれば獲物にかみ付く力を鈍らないように保てるのだろうか。その戦略こそがどうやら、新しい歯をコンスタントに、大量に生やす、ということであるようだ。
サメとは違う仕組み
研究者たちは今回、一連の色素を利用して、歯の成長が視覚的に確認できるタイムラインを作成した。
はじめにリングコッドの稚魚20匹を、蛍光染料のアリザリンレッドを加えた水槽に12時間移す。アリザリンレッドは歯のカルシウムに引き寄せられるため、これにより数百本の歯が赤く染まる。それから10日間にわたって、20匹のリングコッドはふたつ目の染料となる緑色の蛍光カルセインにさらされる。すると、調査の第1日目から生えていた歯は赤に、それ以降に生えてきた歯は緑色に染まった。

カー氏がクリスマスカラーに染まったこれらの歯を丹念に数えて分類したところ、20匹のリングコッドの歯は合計1万580本にのぼった。
20匹の観察を終えたカー氏のチームが発見したのは、一本一本の歯はいったん生えたら、その役目を終えるまで同じ場所に留まるということだった。これは、同じく強力な歯を持つことで知られるホホジロザメのような例とは対照的だ。ホホジロザメの場合、歯は最初は顎の後ろ側に小さく生え、成長するにつれて前方に移動する。
研究者らはまた、歯が生えかわりやすい場所も特定した。「大きい歯が長く残っているわけでも、逆に小さい歯が頻繁に交換されるわけでもありません」とコーエン氏は説明する。リングコッドがかむときに「大きな力がかかると思われる場所では、歯の交換が速いことがわかりました」