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毎晩飲む人は要注意 「慢性膵炎」で膵臓がカチカチに

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

晩酌は毎日欠かさないという人が気をつけたい病気が、「慢性膵炎」です。長年にわたって毎日のように多量飲酒を続けていると、膵液が膵臓自体を徐々に溶かしていき、腹部に痛みを生じる慢性膵炎になるリスクが高くなります。しかも、慢性膵炎が進行すると膵がんにかかるリスクも格段に高くなります。慢性膵炎になりやすい人の特徴や、治療などについて、酒ジャーナリストの葉石かおりさんが帝京大学医学部附属病院肝胆膵外科教授の佐野圭二さんにお話を伺いました。

◇   ◇   ◇

膵臓が、自ら分泌する膵液でドロドロに溶け、突然激しい痛みに襲われる「急性膵炎」。

前回の記事(「背中に激痛が走る『急性膵炎』 発症したら一生断酒?」)でお伝えした急性膵炎の痛みは想像を絶するもので、痛みのあまり悲鳴を上げてのたうち回ってしまうそうだ。何とも恐ろしい……。

「たくさんお酒を飲むと、アルコールの影響で膵液に含まれる消化酵素が膵臓内で活性化し、急性膵炎を引き起こす原因になります。また、胆石が膵液の出口を塞いでしまうことでも、急性膵炎になる場合があります」と説明するのは、帝京大学医学部附属病院肝胆膵外科教授の佐野圭二さん。

最も恐ろしいのは、「急性膵炎を発症したら、その後は断酒しなければならない」ということだ。アルコールが原因で急性膵炎を発症した人のうち、およそ半数は再発するといわれており、そのほとんどが断酒できなかったためではないかと考えられる。そして、急性膵炎を繰り返すと、1割程度は「慢性膵炎」に移行するという。

慢性膵炎は、「慢性」というだけあって、一度発症したら生涯付き合っていかなければいけないのだろうか? どのような治療が必要になるのだろうか。引き続き、佐野さんに解説していただいた。

毎日飲み続けると「慢性膵炎」のリスクが上がる!

先生、慢性膵炎は急性膵炎とどう違うのでしょうか?

「急性膵炎、慢性膵炎ともに、アルコールが大きな原因の1つであることは共通しています。前回もお伝えしましたが、急性膵炎はアルコールを飲み過ぎたときに上腹部を中心に急激な炎症が起こります。一方、慢性膵炎は長期間にわたる多量飲酒が原因で、膵液によって膵臓自体が徐々に溶けていき、次第にカチカチに硬くなり、萎縮していきます。一般に、5~15年という時間をかけて進行していきます」(佐野さん)

急激に強い痛みが走る急性膵炎も怖いが、時間をかけてゆっくりと膵臓が硬く萎縮していく慢性膵炎は、また違った恐怖がある。そして進行すると、膵がん(膵臓がん)になるリスクも高まるという。

しかし気になるのは、その「痛み」だ。膵臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、何か病気になっても症状が出にくいことが多いと聞く。「膵液によって、膵臓が徐々に溶けて硬くなっていく」というからには、自覚症状として、やはり痛みがあるように思うのだが。

「慢性膵炎の場合も、急性膵炎と同様に上腹部に痛みを感じます。慢性膵炎のステージには、代償期、移行期、非代償期という3段階があり、強い痛みを感じるのが代償期で、このとき膵臓の働きはまだ保たれています。移行期になると、膵臓の働きが徐々に衰え、痛みは軽くなり、膵臓に石がたまったり(膵石)、膵液の出が悪くなったりします。末期とも言える非代償期になると、膵臓がほぼ機能しなくなり、人によっては痛みがなくなることもあるのです」(佐野さん)

慢性膵炎の病期と症状

進行すると「痛みがなくなる」… そのときはもう悪化している?

やはり、「慢性膵炎も痛みはある」ということか。佐野さんによると、「多くの人が代償期に感じる強い痛みをきっかけに受診する」という。しかし、症状があってもすんなり診断に行きつくとは限らないのが、慢性膵炎の厄介なところだ。

「慢性膵炎の代償期では、血液検査を行っても数値の変化が少ないため、気がつかないことも多いと言われています。専門施設や総合病院で画像診断も行わないと診断が難しいのです。そのため、うっかり見過ごしてしまい、気づいたときには病状が進行していることも少なくありません」(佐野さん)

知人はまさに、気づいたときには病状が進行していて、結果として命を落としてしまった一人だ。当初、強い痛みがあったが、「酒を飲めば治る」と日々の痛みを酔いでまぎらわせていた。「痛みがなくなった」と喜んでいたのもつかの間、末期の膵がんで、別れを惜しむ間もなく、あの世へと旅立ってしまった。

「痛みが引かないときは、セカンドオピニオンを受けましょう」と佐野さん。佐野さんは、「痛みのある代償期であれば、生活習慣を改めれば改善する余地があります」と話す。上腹部の痛みは、「膵臓からのサイン」と思い、早めの受診をしたほうがよさそうだ。

脂肪便、糖尿病、体重減少… 怖い症状が表れる

では、慢性膵炎が進行すると、どんな症状が表れるのだろうか?

「一言で言うと、膵臓はボロボロです。膵臓の細胞が線維化してカチカチになっていきます。非代償期の後期になると、膵臓の機能はほぼ廃絶してしまいます。ここまでいくと、もう完治はしませんし、機能を取り戻すこともできません。さらには、膵臓の役割の1つである、内分泌機能も阻害されます。それによって、血糖値を下げるインスリンなどのホルモンを分泌できなくなり、糖尿病を発症します。また、消化液を分泌する外分泌機能も落ちることから消化吸収が悪化。下痢や、便に脂肪が混ざる脂肪便となり、次第にやせていきます」(佐野さん)

ここまででも十分に背筋が凍りそうだが、慢性膵炎の怖さは、常に膵がんのリスクを抱えているということだ。

「慢性膵炎にかかった人は、かかっていない人に比べ、膵がんを発症するリスクが12倍もあるとされています。膵がんが進行すると、膵臓を摘出しなければならない場合もあります。膵臓を摘出しても生きていくことはできますが、再発も多く、膵がんと診断されてから5年後に生存している確率(5年生存率)は10%しかありません」(佐野さん)

膵臓の病気のリスクをセルフチェック

では実際、どんな人が慢性膵炎に罹患しやすいのだろう?

「慢性膵炎は、30代から70代と、幅広い年齢層の男性に多く見られる疾患です。男性の罹患率は、女性の2倍というデータもあります。お酒を飲む機会が、男性のほうが多いからだと考えられます。慢性膵炎は、長期間にわたって毎日コンスタントにお酒を飲んでいる人が発症するリスクが高いと言われています。日々の積み重ねと、アルコール摂取の総量が関係しています。慢性膵炎については、さまざまな要因が挙げられますが、原因の80%がアルコールと考えていいでしょう」(佐野さん)

80%となれば、予防するにはやはり「酒量を控える」しかないだろう。

「慢性膵炎になったら、断酒しか方法はありません。しかし、予防ということであれば、節酒で対処できます。『これだけ飲んだら慢性膵炎になる』という目安はないので、休肝日ならぬ『休膵日』と思って飲まない日を設けつつ、量を控えていきましょう。また、脂肪の多いおつまみもできるだけ避けてください。脂っこいものを食べると、それを消化するために膵液が多く分泌され、それが慢性膵炎のリスクにもなるからです」(佐野さん)

昨今、脂っこいファストフードをデリバリーし、それをアテに酒を飲む「ファストフード飲み」に凝っている酒豪がいるが、これを続けたら膵炎まっしぐら。しかも喫煙者となれば、さらにリスキーだ。事実、佐野さんによると「タバコを吸うことで血管が収縮し、血行が悪くなることで、慢性膵炎のリスクが上がる」そうだ。

「また糖尿病などの生活習慣病にかかっている方、コレステロール値が高い方、運動をしない方も膵臓の病気にかかりやすいと言われています。ウオーキングなど、日々継続できる軽い運動をするよう心がけましょう」(佐野さん)

佐野さんに、膵臓の病気になりやすい人の特徴を挙げてもらった。以下の10項目のうち6つ以上に当てはまる人は要注意だという。また、1つ目の「お酒が大好きで、ほとんど毎日飲んでいる」に該当する人は、そのほかに当てはまらなくても注意したほうがいいそうだ。

膵臓の病気になりやすい人の特徴

1.お酒が大好きで、ほとんど毎日飲んでいる
2.揚げ物やラーメンなど、油っぽいものが好き
3.魚より肉が好き
4.野菜はほとんど食べない
5.運動はほとんどしない
6.生活が不規則で睡眠不足のことが多い
7.ストレスがたまっている
8.コレステロール値が高いと言われたことがある
9.タバコを吸っている
10.糖尿病である

膵臓の病気を早期に見つけるには?

まとめると、対策としては、節酒に運動、そして定期的な検査といったところだろうか。ところで、「膵臓の病気は見つけにくい」と言われているが、今はどうなのだろう。

「確かに胃の裏側にある膵臓の病気は、他の臓器に比べ見つけにくいことは事実です。しかし、以前に比べれば発見率は格段に上がっています。まずは、自治体の検診や人間ドックなどで、定期的に『腹部エコー検査』を受けてください。それで膵臓に異変が見つかれば、精密検査に進みます」(佐野さん)

腹部エコー検査では、機器をおなかに当てて超音波で臓器の状態を調べる。これで異変が見つかれば、「超音波内視鏡」によって精密検査を行う。これは、通常の胃カメラのように内視鏡を入れ、胃腸の壁越しに超音波を当てて膵臓を調べることができる。

「超音波内視鏡の検査は、3時間近くかけて行うのでお手軽とは言えないかもしれません。しかし、膵臓の病気を早期に見つけるのに大いに役立っています」(佐野さん)

◇   ◇   ◇

2回にわたって、急性膵炎と慢性膵炎の詳細についてお伝えした。どちらも思い出すだけでゾクッとする症状だが、膵臓の病気の発見率が以前よりも上がっていることはせめてもの救いである。これからは、休肝日はもちろん「休膵日」も意識し、膵臓に優しい飲み方を心がけたい。

(文 葉石かおり=エッセイスト・酒ジャーナリスト、図版制作 増田真一)

[日経Gooday2021年11月5日付記事を再構成]

佐野圭二さん
帝京大学医学部附属病院肝胆膵外科教授。1990年、東京大学医学部卒。2001年、東京大学肝胆膵外科助教。2004年、東京大学肝胆膵外科講師。2010年、帝京大学外科教授。日本外科学会・指導医、日本消化器外科学会・指導医、日本肝胆膵外科学会・高度技能指導医・理事。

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