毎日飲み続けると「慢性膵炎」のリスクが上がる!

先生、慢性膵炎は急性膵炎とどう違うのでしょうか?

「急性膵炎、慢性膵炎ともに、アルコールが大きな原因の1つであることは共通しています。前回もお伝えしましたが、急性膵炎はアルコールを飲み過ぎたときに上腹部を中心に急激な炎症が起こります。一方、慢性膵炎は長期間にわたる多量飲酒が原因で、膵液によって膵臓自体が徐々に溶けていき、次第にカチカチに硬くなり、萎縮していきます。一般に、5~15年という時間をかけて進行していきます」(佐野さん)

急激に強い痛みが走る急性膵炎も怖いが、時間をかけてゆっくりと膵臓が硬く萎縮していく慢性膵炎は、また違った恐怖がある。そして進行すると、膵がん(膵臓がん)になるリスクも高まるという。

しかし気になるのは、その「痛み」だ。膵臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、何か病気になっても症状が出にくいことが多いと聞く。「膵液によって、膵臓が徐々に溶けて硬くなっていく」というからには、自覚症状として、やはり痛みがあるように思うのだが。

「慢性膵炎の場合も、急性膵炎と同様に上腹部に痛みを感じます。慢性膵炎のステージには、代償期、移行期、非代償期という3段階があり、強い痛みを感じるのが代償期で、このとき膵臓の働きはまだ保たれています。移行期になると、膵臓の働きが徐々に衰え、痛みは軽くなり、膵臓に石がたまったり(膵石)、膵液の出が悪くなったりします。末期とも言える非代償期になると、膵臓がほぼ機能しなくなり、人によっては痛みがなくなることもあるのです」(佐野さん)

慢性膵炎の病期と症状

日本消化器病学会「慢性膵炎診療ガイドライン2015」を基に作成

進行すると「痛みがなくなる」… そのときはもう悪化している?

やはり、「慢性膵炎も痛みはある」ということか。佐野さんによると、「多くの人が代償期に感じる強い痛みをきっかけに受診する」という。しかし、症状があってもすんなり診断に行きつくとは限らないのが、慢性膵炎の厄介なところだ。

「慢性膵炎の代償期では、血液検査を行っても数値の変化が少ないため、気がつかないことも多いと言われています。専門施設や総合病院で画像診断も行わないと診断が難しいのです。そのため、うっかり見過ごしてしまい、気づいたときには病状が進行していることも少なくありません」(佐野さん)

知人はまさに、気づいたときには病状が進行していて、結果として命を落としてしまった一人だ。当初、強い痛みがあったが、「酒を飲めば治る」と日々の痛みを酔いでまぎらわせていた。「痛みがなくなった」と喜んでいたのもつかの間、末期の膵がんで、別れを惜しむ間もなく、あの世へと旅立ってしまった。

「痛みが引かないときは、セカンドオピニオンを受けましょう」と佐野さん。佐野さんは、「痛みのある代償期であれば、生活習慣を改めれば改善する余地があります」と話す。上腹部の痛みは、「膵臓からのサイン」と思い、早めの受診をしたほうがよさそうだ。

脂肪便、糖尿病、体重減少… 怖い症状が表れる

では、慢性膵炎が進行すると、どんな症状が表れるのだろうか?

「一言で言うと、膵臓はボロボロです。膵臓の細胞が線維化してカチカチになっていきます。非代償期の後期になると、膵臓の機能はほぼ廃絶してしまいます。ここまでいくと、もう完治はしませんし、機能を取り戻すこともできません。さらには、膵臓の役割の1つである、内分泌機能も阻害されます。それによって、血糖値を下げるインスリンなどのホルモンを分泌できなくなり、糖尿病を発症します。また、消化液を分泌する外分泌機能も落ちることから消化吸収が悪化。下痢や、便に脂肪が混ざる脂肪便となり、次第にやせていきます」(佐野さん)

ここまででも十分に背筋が凍りそうだが、慢性膵炎の怖さは、常に膵がんのリスクを抱えているということだ。

「慢性膵炎にかかった人は、かかっていない人に比べ、膵がんを発症するリスクが12倍もあるとされています。膵がんが進行すると、膵臓を摘出しなければならない場合もあります。膵臓を摘出しても生きていくことはできますが、再発も多く、膵がんと診断されてから5年後に生存している確率(5年生存率)は10%しかありません」(佐野さん)

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膵臓の病気のリスクをセルフチェック