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2050年、農業地図が一変? コーヒー栽培地は半減

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

2050年には、世界の農業地図は今とは一変しているかもしれない。

世界の人口が現在の約80億人から50年には約100億人まで増える分、食料生産を増やす必要がある。気候変動の影響で、食料の調達先も変わっているはずだ。現時点でも、温暖化の影響で、熱帯の食物がかなり北の地域で生産されるようになっている。例えば、米ジョージア州でかんきつ類が、イタリアのシチリア島でアボカドが栽培されている。いずれも現在の気候区分ではまだ温帯だ。

「パソコンで『気候変動』という単語と、あなたの好きな食品の名前を並べて検索してみてください。半分ぐらいの確率で、気候変動がその食品の生産に影響を及ぼしているという記事が出てきます」と、21年に『Our Changing Menu(変わりゆくメニュー)』という本を出版したマイケル・ホフマン氏は言う。

22年1月26日付で学術誌「PLOS ONE」に発表された論文は、コーヒー、カシューナッツ、アボカドという3種類の人気食品の栽培環境が今後30年間にどのように変化するかをモデル化した。気候変動がカシューナッツやアボカドの生産地に及ぼす影響についての研究は、これが世界初だ。

3種類の作物のうち、温暖化によって最も大きな打撃を受けるのはコーヒーだった。論文では、コーヒーを栽培できる地域が50年までに全世界では減ると予想されている。カシューナッツとアボカドについては、より複雑な結果となった。一部の栽培地域では収穫量が減少する一方で、米国南部などでは栽培に適した土地が増える可能性が高いという。

気候変動がコーヒー豆に有害な影響を与えることは過去の研究でも示されているが、今回の研究はそれを発展させた。この研究では、降雨量の増加による土壌の水素イオン濃度(pH)や質の変化などの要因に広く着目し、収穫量の減少につながる証拠をより多く示している。

多くの土地では気候の変化に合わせて栽培を続けられるだろうと、論文の筆頭著者でスイス、チューリヒ大学の環境科学者ロマン・グリューター氏は言う。科学者と農家はすでに、気候変動に耐えられる丈夫な作物を作る交配実験を進めている。米ジョージア州やシチリア島のように、まったく新しい種類の作物の栽培を始めた地域もある。しかし今回の研究は、それだけでは十分でない可能性があると警告している。

「従来の栽培地域ではその作物を育てられなくなる日がくるかもしれません」とグリューター氏は言う。

温暖化で栽培に適した地域が変わる

気候変動が農業に与える影響に関するモデル研究では、大豆、トウモロコシ、小麦など、収益性の高い作物が取り上げられることが多い。しかしグリューター氏は、小規模農家で栽培されるその他の作物の研究は、世界の食料供給を気候変動に備えさせる上で非常に重要だと指摘する。国連食糧農業機関(FAO)によると、小規模農家は世界の食料の3分の1を生産している。

今回分析された3種類の作物についての研究は、別の意味でも重要だ。トウモロコシや小麦とは異なり、これらの作物は収穫の何年も前に植え付けなければならないため、将来の栽培環境(気温や降雨パターンなど)を想定し、どの種類を栽培するかを決定しなければならないからだ。

世界はすでに産業革命前よりも1.1℃温暖化し、植物に熱ストレスを与えている。そのうえ、自然災害の深刻さも増している。2100年には、世界の気温は産業革命前より3度も高くなっている可能性がある。今回の研究では14種類のモデルを用いてシミュレーションを行い、温暖化ガス排出量を大幅に削減して気温上昇を1.6度に抑えた場合と、中程度の削減で2.4度に抑えた場合、ほとんど削減できずに4度を超えてしまった場合の3種類の気候シナリオで、作物の栽培環境がどのように変化するかを予想した。

予想結果では、各地域が3種類の作物の栽培にどの程度適しているかが示されている。適合度は「高い」「中程度」「低い」「不適」の4段階で評価され、灌漑(かんがい)や肥料に頼ることなく最高の収穫量をあげられるような土地が最適とされた。

3種類の作物のうち、未来の気候の影響を最も大きく受けると予想されたのはコーヒーだった。3つの気候シナリオのすべてで、50年にはコーヒーの栽培に最適な土地が50%も減少していた。ブラジル、ベトナム、インドネシア、コロンビアといったコーヒー生産国の年間平均気温の上昇が主な原因だ。

カシューナッツについては、減少の程度に大きなばらつきが見られ、激減する地域もあった。西アフリカのベナンでは、温暖化ガスの排出量を大幅に削減するシナリオでさえ、年間平均気温の上昇により、栽培に最適な土地は55%近く減少すると予想された。

一方、気候変動の緩和策をこれ以上講じなくても、減少は10%未満にとどまると予想された国もあった。しかし全体としては、米国、アルゼンチン、オーストラリアなどの比較的高緯度の地域で冬の気温が上昇することにより、カシューナッツの栽培に最適な土地が17%増加すると予想された。

熱帯雨林で成長するように進化してきたアボカドについても結果がばらつき、主に降水量の変化に伴って、栽培の適合度に変化が見られた。気候が温暖化すると、大気中に水分がより多く保持されるようになるため、降雨量が増える。実際、温暖化する地域は50年までに降雨量が増えると予想されている。ドミニカ共和国やインドネシアなど、アボカドの栽培に最適な土地は世界中で14~41%減る一方、中程度に適した地域は12~20%増加すると予想された。

また、現在アボカドの生産量が世界1位のメキシコでは、50年までの排出量に基づき、栽培に最適な土地が66~87%も増えると予想された。

この研究結果は、米ジョージア大学の農業気候学者パム・ノックス氏が、桃の栽培で有名なジョージア州で見てきたことと一致している。ノックス氏によると、同州の農家は今、徐々に温暖化する冬の気候に適した新しい作物の栽培を試しているという。

「米国南東部の農家は、温暖化した気候を利用して、オリーブや温州みかんなどの新しい作物の栽培を試しています」と氏はメールで説明してくれた。

未来の気候に合わせた食料生産

今回の研究の結果は、50年の世界の食料供給にとってどのような意味があるのだろうか?

ホフマン氏は、気候変動が将来の食料安全保障にどのような影響を及ぼすかについては、さらなる研究が必要だと言う。例えば、気候変動によって害虫の個体数や種類は増えるだろう。その結果、作物の生産量は減少すると考えられるが、害虫を捕食する動物の数も増えたらどうなるだろう? 栽培面積が拡大する地域もあれば縮小する地域もあるため、個別の食品の運命を予想することは困難だ。

米コーネル大学気候スマートソリューションズ研究所の所長を務めたホフマン氏は、特定の作物の収穫量が減少すれば、地域に壊滅的な影響を及ぼすおそれがあると指摘する。「町にある巨大工場が移転してしまうのと同じです」

コミュニティーがこの変化を乗り越えるには、食料生産者はさまざまな方法で気候変動に適応する必要があると、今回の研究は指摘している。例えば、地面を覆って土壌を健康に保つ被覆作物の利用や、高温に耐えられるコーヒーノキといった気候変動に強い品種の育成などだ。

とはいえ、品種改良には限界がある。「育種は完成までに何年もかかるうえ、気候変動のスピードに育種家がついていけるとは限りません」と、米カリフォルニア大学デービス校の植物育種センター長であるチャールズ・ブラマー氏は指摘する。今よりも強烈な熱波が、より頻繁に起こるようになれば、耐暑性が非常に高い植物ですら生産できなくなるかもしれない。

科学者が数十年後の農業の変化を予測することで、農家は今後の見通しを立てることができる。また、被覆作物の栽培による土壌の浸食防止や、必要があれば新しい作物を栽培することなど、より効率の良い栽培方法を農家に奨励するよう政策立案者に助言する上でも役立つ。

「このような(気候の)変化と、それが農業へ及ぼす影響をモデル化することは、食料と栄養の安全保障にとってきわめて重要です」とグリューター氏は言う。「私たちは主に換金作物のモデルを作っていますが、アボカドは栄養価の高さの点でも重要です」

(文 SARAH GIBBENS、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2022年1月29日付]

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