2022/3/28

今回の研究は、37体のティラノサウルスの化石について、大腿骨と下あごの歯を中心に、体中を計測して得られたデータセットを基にしている。さらに、そのうちヘルクリーク累層から発見された28の標本について、上層、中層、下層のどこで発見されたかを特定した。下に行けば行くほど、その化石は古いということになる。

比較のため、別の場所で発見されたティラノサウルスの仲間や、さらに古い時代のアロサウルスなど他の大型捕食恐竜のデータセットも併せて分析した。その結果、ティラノサウルスの骨の計測値は、比較対象とされたどの恐竜よりもばらつきが大きいことが明らかになった。

それによると、ヘルクリークの最下層から発見された最も古い化石は、いずれもがっしりとした大腿骨を持ち、2対のノミのような歯を持っていた。一方、新しい時代の層から採取された化石は、2つのグループに分けられる。どちらのグループも、ノミのような歯は1対しか持たないが、片方のグループの大腿骨はがっしりとしていて、もう片方は細く、華奢な骨を持っていた。

ポール氏のチームは、オスとメスの性差だけではこの違いを説明できないと主張する。その他、個体差や異なる成長段階のものであるという可能性も排除し、それぞれのグループは異なる種であると解釈したほうが良いと結論付けた。

今回の研究に対する批判

この研究が信頼できるかどうかは、研究で使用されたデータセットの有効性にかかっている。

最近の別の研究では、同様のグループ分けができるという証拠は見つかっていない。例えば、カー氏は様々な成長段階にあるティラノサウルスの化石を大量に分析し、その結果を20年6月4日に学術誌「PeerJ」に発表した。1850の形態学的特徴を分析したカー氏は、種の違いどころか、オスとメスの違いを示す証拠すら見つけられなかったという。「もしこうした分類ができるとすれば、私も発見していたはずです」

米ノースカロライナ州ローリーにあるノースカロライナ自然科学博物館の古生物学者リンジー・ザンノ氏も、ポール氏らの研究ではそれぞれのティラノサウルスが死んだ年齢を決める骨の断面分析を採用しておらず、成長に伴う体の変化が十分に考慮されていない可能性があると付け加えた。

それぞれの化石がヘルクリーク層のどこで発見されたのか、正確な位置が十分に絞り込まれていないと指摘するのは、米メリーランド大学の古生物学者トム・ホルツ氏だ。その詳しいデータがあれば、化石の相対的な年代がもっとよくわかり、ティラノサウルスが長い年代を経て別の種に分かれていたかどうかを検証できるだろう。

論文の著者たちは、この研究が物議をかもしていることは承知している。論文の共著者でサウスカロライナ州チャールストン大学の古生物学者スコット・パーソンズ氏は、新種の命名はあくまで仮説に基づいており、それが後のデータで覆されることも裏付けられることも想定していると語った。「この基準を外れる標本が1つか2つ見つかればいいんです。そうしたら、また初めからやり直せばいいだけのことです」

「もしこれが間違いだったと実証されても、驚きはしません。自分の統計は現実的な目で見ていますから。ただ、ティラノサウルスは1種だけではないだろうということだけは自信を持って言えます」

いずれにせよ、この研究はより包括的なティラノサウルスの家系図を描くための最初の1歩となるものであると、ザンノ氏は評価する。「個体差にしても、成長段階の違いにしても、オスかメスかの違いにしても、一つの仮説が全ての差異を説明することはできないでしょう。問題を多面的に見る必要があります」

(文 MICHAEL GRESHKO、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2022年3月3日付]