日経ナショナル ジオグラフィック社

2022/3/25

太古の空を飛び交った動物たち

発掘後、翼竜の化石は、エディンバラの国立スコットランド博物館に運ばれ、プレパレーター(化石を研究・展示できる状態にする技術者)のナイジェル・ラーキン氏が、余分の石や硬化剤を慎重に取り除いた。それから、ジャギエルスカ氏が調査に着手した。

ジャギエルスカ氏は2年以上かけて、この翼竜の骨を注意深く計測し、過去に発見された翼竜と比較した。スカイ島で見つかった翼竜は、有名なランフォリンクスと似ている点が多いが、もっと大きかった。

翼竜の翼開長を把握するために、ジャギエルスカ氏は、よく知られている近縁種の翼の骨を計測し、これらの個体の骨の長さと翼開長の関係を調べた。そして、その結果から、ジャークの翼開長を、現代のアホウドリの翼開長に近い2.2~3.8メートルと推定した。

さらに、ジャギエルスカ氏とブルサット氏のチームは、化石をCTスキャンで調べ、視覚から情報を受け取る領域を含む脳の形態、および内耳の構造の概要を明らかにした。チームのメンバーでエディンバラ大学の博士研究員、グレッグ・ファンストン氏が、翼竜の骨の一部をスライスし、内部構造を調査した。その結果、ジャークから採取した標本は未熟で、死亡時はまだ発育途上だったことがわかった。

また、この化石の発見によって、ジュラ紀初期の比較的小さな翼竜と、白亜紀後期の巨大な翼竜との間に、時代と大きさの点でその中間に該当する翼竜が存在していたことも示された。

スコットランドでは、さらに多様な翼竜の存在が明らかになるかもしれない。まだ査読前の段階だが、2月16日、別の研究者グループが、ジャークとは異なる系統の翼竜をスカイ島で発見したと報告している。

この2つの発見は、ジュラ紀中期の進化の重要性を高めるものだ。ジュラ紀前半には、恐竜、哺乳類、顕花植物など、多くのグループが急速に多様化したと考えられている。おそらく、超大陸パンゲアの分裂が影響したのだろう。世界で発見された他の翼竜と考え合わせると、スコットランドの化石は、翼竜もこの時代にかなり多様化したことを示唆している。鳥類に進化する羽毛恐竜が滑空飛行を始め、その後に自力飛行できるようになった時期と、ほぼ同じ時代だ。

「翼竜はこうした進化を見ながら、空がずいぶん混みあってきたなと感じていたかもしれませんね」。もう一つの翼竜に関する論文の著者で英レスター大学の古生物学者、デビッド・アンウィン氏はこのように話している。「このような多様な翼竜たちと原始的な飛行を始めた動物がいて、共存する余地があったということは、本当に驚きです」

しかし、アンウィン氏は、報告されたジャークの大きさについては注文を付ける。ジャークの翼開長の推定に用いられたランフォリンクスという翼竜は、翼の骨が他に類のない長さだったとアンウィン氏は言う。したがって、その四肢を基準に大きさを推定すると、実際よりも大きくなる可能性がある。アンウィン氏は、ジャークの翼開長をおそらく2.1メートル以下と主張している。

だが、最終的な大きさにかかわらず、ジャークはスコットランド最高の化石として卓越した存在だ。ジャギエルスカ氏は、19世紀に翼竜を記載したメアリー・アニングとのつながりを誇らしく感じている。

「アニングは、当時の古生物学者としては唯一の女性だっただけでなく、労働階級のシンボルでした」とジャギエルスカ氏は言う。「私は、その点に彼女とのつながりを感じています」

(文 MICHAEL GRESHKO、訳 稲永浩子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2022年2月26日付]