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ナイフのような尾によろいの体 チリで奇妙な新種恐竜

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ナショナルジオグラフィック日本版

7500万~7200万年前、現在の南米パタゴニア地方で、ごつごつしたある恐竜が河口の三角州に埋もれ、やがて化石となった。

この生物は、恐竜としては巨大な部類ではなかった。高さは60センチ足らず、鼻から尾までの長さは2メートルほどと小さいながらも、タフな恐竜だった。よろいのような皮膚で身を守り、尾にはユニークな武器も備えていた。

その武器は科学者たちでさえ見たことのないものだった。尾のいくつかの骨が融合し、平たくギザギザしたうちわのようになっていたのだ。「全く前例がありません」とチリ大学の古生物学者アレクサンダー・バルガス氏は話す。

バルガス氏らの研究チームは、この新種の装甲恐竜を「ステゴウロス・エレンガッセン(Stegouros elengassen)」と名付け、2021年12月1日付で学術誌「ネイチャー」に発表した。名前の由来は奇妙な「屋根の尾(ステゴウロス)」とパタゴニア地域の先住民アオニケンクの神話に登場するよろいのような獣(エレンガッセン)だ。

ステゴウロスは斬新な武器を持つだけでなく、進化の大きな隙間を埋める存在でもある。米メリーランド大学の古生物学者トム・ホルツ氏によれば、南米やアフリカ、南極など、古代の超大陸ゴンドワナを構成していた土地では、装甲恐竜はほとんど発見されていないという。ホルツ氏は今回の研究に参加していない。

かつてのゴンドワナ南部でステゴウロス以前に発見された装甲恐竜は2種類のみで、いずれも化石が不完全か、部分的にしか研究されていない。ステゴウロスの標本は全体の約80%がそろっており、その骨格は奇妙な特徴をあわせ持っている。

ステゴウロスの頭と歯、そして尾は、装甲で覆われたアンキロサウルス類にそっくりな一方、細長い脚や骨盤は、ステゴウロスが出現する何千万年も前に絶滅したステゴサウルスに似ているのだ。

「この骨盤を見せられて、どの動物のものかと質問されたら、私は100%ステゴサウルスと答えます」と語るのは、恐竜を専門とする英国自然史博物館の古生物学者スザンナ・メイドメント氏だ。「この標本には本当に驚かされました……私の知識がすべて覆されました」。メイドメント氏は今回の研究に参加していない。

パタゴニアの山地で発見された骨

ステゴウロスはチリとアルゼンチンにまたがるドロテア層という地層で発見された。世界中の研究者が恐竜の化石など、古代生物の痕跡を探しに来る場所だ。

18年2月、チリ大学は、化石で有名なリオ・デ・ラス・チナス渓谷へ調査チームを派遣。急斜面の頂上で骨らしきものが見つかり、周囲を掘り起こす作業を開始。大きな石の塊を石こうでコーティングし、研究室に持ち帰った。研究者らは当初、二足歩行の草食恐竜である鳥脚類ではないかと考えていたが、標本から岩石を丁寧に取り除くと、恐竜の尾が現れた。

「その日が終わるまで、私はショック状態でした」とバルガス氏は振り返る。

武器のような尾

数は多くないものの、いくつかの恐竜は尾が完成度の高い武器を持つ。ステゴサウルスは、尾の先に2対のとげ(スパイク)を持っているし、一部のアンキロサウルス類は、長くて硬い尾の先端にハンマーのような骨塊がついている。

武器のような尾を持つのは恐竜だけではない。例えば、1万年前に絶滅した巨大アルマジロ、グリプトドンもアンキロサウルスとよく似た骨塊を進化させていた。

しかし、ステゴウロスの尾はユニークだ。ほかの武器化した尾より平らでナイフに近い。黒曜石の刃が付いたアステカのこん棒にちなみ、研究チームはこの解剖学的構造を「マクアフティル」と命名した。

こうした尾の武器は、主に同種内で戦うために使われたと考えられている。社会的地位を争っていたのかもしれない。脅威にさらされたとき、尾を使って捕食者から身を守っていた証拠もある。ホルツ氏によれば、ジュラ紀の肉食恐竜の骨には、ステゴサウルスと戦ったときにできたと思われる刺し傷が残されているそうだ。また、カナダのロイヤルオンタリオ博物館には、すねを骨折後に治癒したティラノサウルスの化石が展示されているが、アンキロサウルスが尾を振り回したことによる負傷の可能性もある。

ステゴウロスがどのように尾を使っていたかは不明だが、ホルツ氏は切り付ける動きをしていたのではないかと推測している。ステゴウロスと同じ時代、同じ地域に存在した最大の捕食者は、メガラプトルと呼ばれる謎の多い恐竜だ。バルガス氏は「危険な香りがする大型恐竜で、アロサウルスの腕を長くして、ものをつかむことができるようにした感じ」と表現する。

さらなる手掛かりを探して

ステゴウロスの骨格の全貌が明らかになった後、バルガス氏は同僚のセルヒオ・ソト・アクーニャ氏とともに、その解剖学的特徴をほかの恐竜と注意深く比較した。そして、系統樹の作成を試みたところ、ステゴウロスの祖先は約1億6500万年前までにアンキロサウルス類から分岐し、未知の系統を形成していたことがわかった。

既知の恐竜で最も近い関係にあるのは、ゴンドワナ南部に生息していた2種のアンキロサウルス類だ。1種はオーストラリアのクンバラサウルス(Kunbarrasaurus)で、大部分の情報を頭蓋骨から得ている。もう1種のアンタークトペルタ(Antarctopelta)は、南極の堆積物から発見された数個の骨片しか手掛かりが存在しない。

ステゴウロスの発見は、ほとんど解明されていないこれらの近縁種の研究にも役立つ可能性がある。アンタークトペルタの骨片の一部は、ステゴウロスのマクアフティルの融合した骨と酷似している。バルガス氏らはこの一致から、体長がステゴウロスの2倍に達するアンタークトペルタも同じような尾の武器を持っていたのではないかと考えている。

ステゴサウルス類の世界的な専門家であるメイドメント氏は、ステゴウロスはさまざまな特徴が入り交じっているため、武装した恐竜の系統樹に「動揺」をもたらす可能性があると述べている。ステゴサウルス類に分類される恐竜は、主に3つの重要な解剖学的特徴を持っている。そのうち1つがステゴウロスと全く同じ種類の骨盤だ。

しかし、名前の響きは似ているものの、ステゴウロスはステゴサウルス類ではない。つまり、標本が不完全なままステゴサウルス類に分類されている恐竜の一部は、ステゴサウルス類ではないと判断されるかもしれないとメイドメント氏は予想する。

ドロテア層をはじめとするパタゴニア地域では、数十年にわたって素晴らしい化石が発掘されており、岩の中にさらなる手掛かりが隠されている可能性が高い。将来、チリまたはアルゼンチンの調査で、刃が付いた平らなこん棒のような尾を持つ装甲恐竜が新たに見つかる可能性もある。

バルガス氏らの化石探しはまだ始まったばかりだ。「ステゴウロスの化石がある場所はほかにも見つかっています。実際、ステゴウロスはありふれた存在のようです。私たちはもっと発見するつもりです」

(文 MICHAEL GRESHKO、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年12月4日付]

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