2021/12/25

武器のような尾

数は多くないものの、いくつかの恐竜は尾が完成度の高い武器を持つ。ステゴサウルスは、尾の先に2対のとげ(スパイク)を持っているし、一部のアンキロサウルス類は、長くて硬い尾の先端にハンマーのような骨塊がついている。

武器のような尾を持つのは恐竜だけではない。例えば、1万年前に絶滅した巨大アルマジロ、グリプトドンもアンキロサウルスとよく似た骨塊を進化させていた。

しかし、ステゴウロスの尾はユニークだ。ほかの武器化した尾より平らでナイフに近い。黒曜石の刃が付いたアステカのこん棒にちなみ、研究チームはこの解剖学的構造を「マクアフティル」と命名した。

こうした尾の武器は、主に同種内で戦うために使われたと考えられている。社会的地位を争っていたのかもしれない。脅威にさらされたとき、尾を使って捕食者から身を守っていた証拠もある。ホルツ氏によれば、ジュラ紀の肉食恐竜の骨には、ステゴサウルスと戦ったときにできたと思われる刺し傷が残されているそうだ。また、カナダのロイヤルオンタリオ博物館には、すねを骨折後に治癒したティラノサウルスの化石が展示されているが、アンキロサウルスが尾を振り回したことによる負傷の可能性もある。

ステゴウロスがどのように尾を使っていたかは不明だが、ホルツ氏は切り付ける動きをしていたのではないかと推測している。ステゴウロスと同じ時代、同じ地域に存在した最大の捕食者は、メガラプトルと呼ばれる謎の多い恐竜だ。バルガス氏は「危険な香りがする大型恐竜で、アロサウルスの腕を長くして、ものをつかむことができるようにした感じ」と表現する。

さらなる手掛かりを探して

ステゴウロスの骨格の全貌が明らかになった後、バルガス氏は同僚のセルヒオ・ソト・アクーニャ氏とともに、その解剖学的特徴をほかの恐竜と注意深く比較した。そして、系統樹の作成を試みたところ、ステゴウロスの祖先は約1億6500万年前までにアンキロサウルス類から分岐し、未知の系統を形成していたことがわかった。

既知の恐竜で最も近い関係にあるのは、ゴンドワナ南部に生息していた2種のアンキロサウルス類だ。1種はオーストラリアのクンバラサウルス(Kunbarrasaurus)で、大部分の情報を頭蓋骨から得ている。もう1種のアンタークトペルタ(Antarctopelta)は、南極の堆積物から発見された数個の骨片しか手掛かりが存在しない。

ステゴウロスの発見は、ほとんど解明されていないこれらの近縁種の研究にも役立つ可能性がある。アンタークトペルタの骨片の一部は、ステゴウロスのマクアフティルの融合した骨と酷似している。バルガス氏らはこの一致から、体長がステゴウロスの2倍に達するアンタークトペルタも同じような尾の武器を持っていたのではないかと考えている。

ステゴサウルス類の世界的な専門家であるメイドメント氏は、ステゴウロスはさまざまな特徴が入り交じっているため、武装した恐竜の系統樹に「動揺」をもたらす可能性があると述べている。ステゴサウルス類に分類される恐竜は、主に3つの重要な解剖学的特徴を持っている。そのうち1つがステゴウロスと全く同じ種類の骨盤だ。

しかし、名前の響きは似ているものの、ステゴウロスはステゴサウルス類ではない。つまり、標本が不完全なままステゴサウルス類に分類されている恐竜の一部は、ステゴサウルス類ではないと判断されるかもしれないとメイドメント氏は予想する。

ドロテア層をはじめとするパタゴニア地域では、数十年にわたって素晴らしい化石が発掘されており、岩の中にさらなる手掛かりが隠されている可能性が高い。将来、チリまたはアルゼンチンの調査で、刃が付いた平らなこん棒のような尾を持つ装甲恐竜が新たに見つかる可能性もある。

バルガス氏らの化石探しはまだ始まったばかりだ。「ステゴウロスの化石がある場所はほかにも見つかっています。実際、ステゴウロスはありふれた存在のようです。私たちはもっと発見するつもりです」

(文 MICHAEL GRESHKO、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年12月4日付]