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366万年前の「モデル歩き」足跡 新たな初期人類か

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

366万年前のアフリカ、今のタンザニア北部に当たる地域で、3人の初期人類が雨で湿った灰の上を歩いたのだろう。足跡はそのまま固まり、やがて化石となった。

1978年に発見されたこれらの足跡化石は、当時の古生物学界を震撼(しんかん)させた。アウストラロピテクス・アファレンシス(アファール猿人)が残したこれらの足跡は、初期人類が二足歩行をしていたことを示す初めての明確な証拠となったからだ。

一方、その2年前にも近くで別の足跡化石が見つかっていたが、長らく忘れ去られていた。今回、その足跡を新たに分析したところ、当時そこにいた初期人類はアファール猿人だけではなかったらしいことが示唆された。科学者たちの推測が正しければ、直立歩行をする未知の初期人類が、灰の中に一緒に足跡を残していたことになる。

「彼らが顔を見合わせているところを想像できるようです」と、米オハイオ大学の古人類学者で、この足跡に関する論文の筆頭著者のエリソン・マクナット氏は言う。論文は2021年12月1日付で学術誌「ネイチャー」に発表された。

忘れられていたこの足跡は5つあり、今から45年前に、英国の古人類学者メアリー・リーキー氏が率いるチームによって発見された。足跡の配置は奇妙だった。のちに氏および同僚のリチャード・ヘイ氏は、交差するように一方の足を他方の足の前に出して「よたよたと」二足歩行する動物が残したものではないかと書いている。

この動物の歩き方は優美ではなかったが、「もっと極端にすると、モデル歩きになります」とマクナット氏は言う。

足跡を残した動物が何なのか、たまたま数歩だけモデル歩きをしたのか、それとも常にしていたのかははっきりしない。科学者の中には、アファール猿人以外の人類が歩いていたとするには証拠が不十分と考える人もいる。だが、もし推測の正しさが裏付けられれば、この奇妙な足跡は、初期人類の歩き方の多様性を知る手がかりになるかもしれない。

二足歩行の始まり方が1つではないことを、科学者たちは徐々に理解し始めており、今回の研究によってさらに多様性があることが明らかになったと、米ニューヨーク市立大学の古人類学者ウィリアム・ハーコート・スミス氏は言う。氏は今回の研究には参加していない。

「(足跡を残したのが)初期の人類であろうとなかろうと、動物が二足歩行をしていたこと自体が非常に面白いのです」と氏は話す。

「足跡の主はクマ」説

5つの足跡化石はタンザニア北部の「ラエトリ遺跡」で見つかった。ここは火山灰が堆積した場所で、はるか昔はゾウやサイの仲間から小さなホロホロチョウまで、様々な動物が歩いていた。リーキー氏らは、遺跡の中の「サイトA」と呼ばれる場所で奇妙な足跡を発見した。

だが、発見からわずか2年後には科学者から注目されなくなってしまった。すぐ近くで、保存状態の良いアファール猿人の足跡が発見されたからだ。サイトAの交差する足跡について、1980年代の分析では、クマが直立歩行をしたときに残したものではないかとされ、科学者の関心はさらに薄れた。

マクナット氏がこの奇妙な足跡の存在を知ったのはさらに数十年後だった。氏は博士論文を執筆するために、ヒトのかかとの蹴り出しの進化について、クマをモデル動物に用いて研究していた。つまり、どんな動物がラエトリ遺跡の足跡を残したのかを調べるのに最適な立場にあったのだ。

マクナット氏は、アメリカクロクマの保護活動をしている米キルハム・ベアセンターのキルハム夫妻と共同で、野生のアメリカクロクマの歩き方を調査した。彼らは約51時間分のビデオを分析し、クマが二足歩行することは非常にまれであるという結論に達した。

ラエトリ遺跡の足跡は、4歩続けて二足歩行したことを示しているが、クマが4歩続けて二足歩行する確率はわずか0.003%だ。「つまり、ありえません」とマクナット氏は言う。

足跡の主の正体を探るため、研究チームはラエトリ遺跡に戻り、再び足跡を見つけて発掘した。ある意味、リーキー氏の足跡をたどるような調査だったと、論文著者の1人である米コロラド大学デンバー校のチャールズ・ムシバ氏は言う。氏は学部生の頃にリーキー氏の指導を受けていた。

「遺跡を訪れたとき、いろいろな感情が沸き上がりました」とムシバ氏は言う。足跡を発見し、分析したときのリーキー氏らはどんなことを考えていたのだろうかと、ムシバ氏は作業しながら想像していたという。

今回の調査は21世紀の技術を駆使して行われた。チームはレーザースキャンと3D写真測量法を使って個々の足跡を記録し、ラエトリ遺跡の他の足跡や、タンザニアのエンガレ・セロ遺跡で最近見つかった足跡化石、さらには現代のヒトやクマやチンパンジーの足跡の測定値と比較した。

少ない足跡から情報を絞り出す

分析の結果、サイトAの足跡はクマやチンパンジーのものではなく、初期人類のものに最も近いことがわかった。しかし、足跡の寸法はラエトリ遺跡のアファール猿人のものとは大きく異なり、第2の人類がこの地を歩き回っていた可能性を示唆していた。

過去数十年で様々な特徴をもった初期人類が発見されてきており、その全体像はますます複雑になってきている。今回の結果も例外ではない。

ムシバ氏は、アファール猿人についても、さらに多くのことがわかるかもしれないと話す。アファール猿人は多様な特徴をもっていて、複数の種がひとくくりにされている可能性がある。

この足跡の主が新種の初期人類、あるいはラエトリ遺跡の他の足跡の主とは違う動物であるという説について、「可能性としては非常にエキサイティング」だが、足跡だけから判断するのは難しいと、南カリフォルニア大学の進化生物学者デビッド・ライクレン氏は言う。

ラエトリにアファール猿人以外の人類がいたとは納得していない科学者もいる。英ボーンマス大学の地質学者で、足跡化石を専門に研究しているマシュー・ベネット氏は、「気持ちとしては信じたいですが、頭はノーと言っています」と話す。氏が最も懸念しているのは、サイトAで発見されている足跡化石の少なさだ。5つの足跡のうち、足の大部分が記録されているものは2つしかない。

21年7月16日付けで学術誌「Palaeontology」に発表されたベネット氏らの論文によると、1個体の足跡のバリエーションを正しく把握するためには最低でも10~20個の足跡を分析する必要があり、より多くの個体について結論を導き出すためには、さらに多くの足跡が必要だという。

今回の個体の奇妙な交差歩行を理解するためには、より多くの足跡が必要だ。マクナット氏は、凹凸や滑りやすい場所のせいでバランスの悪い歩き方になりうることは認めるが、交差歩行はこの個体、あるいはこの種全体の歩き方の特徴である可能性もあると主張する。

サンプル数が少ないことは、古生物学の世界では珍しくない。「この時代の足跡の研究では当たり前のことです」とライクレン氏は言う。「研究できるサンプル数が少ないので、少数のサンプルからできるだけ多くの情報を絞り出すのです」

ベネット氏は、ラエトリの足跡から絞り出せる情報はまだあると考えている。研究チームは、足跡の幅や長さなどの個々の測定値を比較したが、単一の測定値や比では、足跡の複雑さを完全に把握することはできないとベネット氏は指摘する。そのため、グループ内のすべての足跡の3次元形状を用いて平均的な足跡を作成し、それを用いて足跡のばらつきを「画素ごと、要素ごと」に調べている科学者が多いという。

ベネット氏はまた、ラエトリのアファール猿人の足跡については、自分や他の研究者が作った平均的な足跡のデータがあるので、サイトAの足跡との比較は簡単にできるだろうと話す。

マクナット氏のチームは、サイトAについて多くの計画を用意している。地中レーダーを使って、火山灰の中に埋もれた足跡を非破壊的に探す計画もその一つだ。ムシバ氏は、「足跡はまだまだあると確信しています」と楽観的だ。

(文 MAYA WEI-HAAS、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年12月3日付]

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