ネット音声メディア続々登場 トレンドは3つの流れラジオ&音声メディア黄金時代(6)

日経エンタテインメント!

Voicy(左)は審査制で配信者を厳選する。Spotify(中)はクリエーター育成にも注力。NUMA(右)は豪華キャストが多数参加する“イヤードラマ”専門のプラットフォームだ
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ラジオ人気の高まりとともに、ネットの配信に特化した「音声メディア」も勢いを増している。市場拡大とともに様々なサービスが登場。それぞれが強みを生かしてユーザーを獲得している。

「音声メディアMAP」はこうした音声関連サービスを「オンデマンド型かライブ型か」「配信するのが個人中心か企業系か」という2つの軸で分類したもの。グループとしては「ポッドキャスト」や独立系の「音声配信プラットフォーム」など、その特徴によって大きく7つに分けた。

では現在、各音声メディアではどのような点を強化しようとしているのか。特に目立つのは、「新しい語り手の発掘」「双方向への進化」「コンテンツの拡充」の3つだ。

音声メディアは、「リアルタイムで聴くライブ型か、録音したものを配信するオンデマンド型か」、「一般人でも録音・編集ツールやアプリを使って配信できるものか、企業がタレントなどを使って配信するものか」の2つの軸で大きく分類した

まず「新しい語り手の発掘」は、YouTuberやライバーなどの人気者が続々と生まれている動画サービスのように、“音声のスター”を見つけ出そうとする動きだ。それを積極的に推し進めているのが、(1)「音声配信プラットフォーム」。各サービス共に、聴取から収録、編集まで1つのアプリ上で完結する“手軽さ”を売りに、より多くの人に使ってもらえるのが利点だ。主なサービスに、誰でもライブ配信やオンデマンド配信が可能な「Spoon」や「Radiotalk」、質を担保するため、あえて配信者を審査制にし、“オンデマンド配信”に特化する「Voicy」などがある。

各サービスともに、配信者がマネタイズできる仕組みを導入しており、SpoonとRadiotalkはライブ配信でリスナーからの投げ銭を受け取ることが可能、Voicyは月額課金をすれば限定配信も聴けるようになる「プレミアムリスナー」制度を採用し、配信者を育成する。

近年、Spotify、Amazon、Googleといったグローバル企業が参入し、世界的トレンドとなっている(2)「ポッドキャスト」でも、語り手の発掘を行う動きが見られる。その筆頭が、「Spotify」だ。19年にポッドキャストの強化を宣言し、日本でも、ミュージシャン、お笑い芸人、モデルなどを起用したオリジナル番組を制作してきた。そして昨年は、世界各国で展開中のポッドキャストクリエーター育成プログラム「Sound Up」をスタートした。

Voicy代表の緒方憲太郎氏も、「音声配信市場の中でも、この個人配信のマーケットが、今1番成長度合いが高く、毎年何倍にもなっています。僕らがVoicyでずっと手掛けてきた部分ですが、Spotifyもこちらに舵を切ろうとしているように感じます」と語る。

人気SNSが続々と参入

2つ目の「双方向への進化」を指向するのは、(3)「音声SNS」に分類している「Clubhouse」が代表的なサービス。複数人で同時に音声コミュニケーションを行えるというものだ。

これまでは、一方的にライブ配信を行ったり、リスナーとやり取りができたとしてもコメントに限られていた。音声SNSでは、自ら好きなテーマを設定した部屋を作り、入室してきた人と話すこともできれば、誰かの部屋に行って会話を聴いたり、そこに参加することも可能。21年の年始から大きな話題となったClubhouse以降も、5月にはツイッターが類似機能の「Spaces」を搭載、Facebookも「Live Audio Rooms」を米国でテストを開始している(日本では未対応)。既存のSNSが続々と参入していることから、今後さらなる発展の可能性を秘めている。

なお、現在の音声SNSはライブが中心だが、デジタル音声広告事業を展開するオトナル代表取締役の八木太亮氏は、「今後はオンデマンドやアーカイブ機能が拡充していく可能性がある」と指摘する。「ライブ配信では話の内容が予測できない、配信を遮ってしまうことがストレスになるなどの理由から音声広告の挿入が難しかったが、オンデマンド化が進むと効果的な広告による収益化も望める」と、広告の観点からの可能性を語る。

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