日経ナショナル ジオグラフィック社

2021/12/22
2021年4月16日、マウリシオ・エリアス神父とボランティアが、スペイン語で礼拝を行う(PHOTOGRAPH BY SEVERINE SAJOUS)

実際に、ルルドを訪れる巡礼者の多くは外国人で、ルルドの町には国際的な雰囲気があふれている。ルルドには25カ国から来た人々が暮らしており、スリランカ出身のタミル人コミュニティもあるほどだ。明るく希望に満ちた連帯感で数千人が一つになる光景を目の当たりにすると、カトリック教徒でなくてもこの町の精神性に引きつけられる。だからこそルルドには、大勢の人が集まってくるのだ。

「ここは、知識人のためではなく、敬虔な民衆のための場なのです」と、オリビエ・リバドー・デュマ司教は言う。「ルルドは、信仰を表現する言葉を持たない人を歓迎します。岩に触れる、水を飲む、ろうそくを手に行進するなど、ルルドでは行動で信仰を表すことができるのです」

2021年4月20日、プティット・クーボン(小修道院)の居間で、洞窟からの放映を見ながらロザリオの祈りをささげる修道女たち(PHOTOGRAPH BY SEVERINE SAJOUS)

観光事業の見直し

ルルドは、長年にわたって、こうした巡礼がもたらす年間3億ユーロ(約390億円)の収入に依存するようになり、町の経済は宗教的な観光と密接に結びついていた。

やがて、この町には定型化した観光モデルが生まれた。巡礼者の多くは、4月から10月までの観光シーズンに、ツアー会社が企画する大規模な団体旅行に参加する。ホテルの協定料金は安く、食事が含まれていることが多い。

この巡礼ツアーが、ルルドの特徴である、マスツーリズム独特の色あせた土産物店が並ぶ町の景観を形づくってきた。実のところ、旅行先としてルルドが人気だった絶頂期は過ぎている。この10年間、ルルドを訪問する観光客の数は減少し続けてきた。

パンデミックで聖地への訪問者が途絶えると、ルルドでは雇用や収入が減少し、深刻な打撃を受けた。宗教観光に完全に依存していた経済の危うさを、パンデミックが露呈させた形となった。

最初の2カ月のロックダウンの後、2020年にルルドを訪れた旅行者は、わずか80万人にとどまった。この間に訪れたのは、以前のツアー客ではなく、個人旅行者だった。

「パンデミックは、のんびり構えていた私たちの対応を再考するきっかけになりました」と、リバドー・デュマ司教は話す。予備知識なしにルルドを訪れる新しいタイプの旅行者を歓迎するために、聖地での対応を変えることにした。巡礼者の団体ツアーでは、巡礼者を先導するガイドと神父が同行するのが一般的だが、こうした案内役がいない個人客に対して、基本情報やミサ、ガイド案内などが盛りこまれた「1日巡礼」プログラムが新たに用意された。

「あらゆるタイプの訪問者を受け入れる、より包括的な対応が必要です」と、リバドー・デュマ司教は言う。「現在、この国と社会では、キリスト教離れが際立っています。ルルドが2030年もその使命を果たすためには何をすべきか、それを見極めることが私の責務なのです」

2021年4月11日、人けのないモンシニョール・ショプフェー・アベニュー(PHOTOGRAPH BY SEVERINE SAJOUS)