これまでペンギンの保護は、繁殖地の監視、卵や幼鳥の保護、けがをした成鳥の救助など、現地での活動に限られていた。しかし緩衝地帯での禁漁が実現すれば、より大きな生態系の健全さを考慮した管理が初めて可能になる。

海の変化についていけない
イワシの量が壊滅的な状態に陥ったことから、2019年に南ア政府はその年の商業的なイワシ漁を一時的に禁止する措置をとった。しかし、翌年になっても状況は改善しなかった。
海洋環境の変化も、ペンギンのエサ探しを困難にしている。温暖化によって風のパターンと深海から湧き上がる湧昇流が変化し、魚がこれまでとは違う場所で繁殖するようになっている。ところが、ペンギンたちはその変化についていくことができないようなのだ。
ペンギンのエサ探しを追跡している人工衛星のデータによると、ペンギンは今までと同じ環境手がかりを追って、西海岸沿いの海でエサを探している。だが、そこではもう以前のようにたくさんの魚には出合えない。

8月に、政府の公園管理局とSANCCOBは、サイモンズタウン・コロニーから725キロ離れたアルゴア湾のなかのバード島で、餓死寸前のペンギンの子ども約100羽を発見し、保護した。
2021年の調査によると、アルゴア湾の個体数は過去2年間だけでも約3分の2になったという。これほどの激減が地域的に起これば、国際自然保護連合のレッドリストで近絶滅種(Critically Endangered)に指定されるだろうと、政府と非営利団体、大学の海洋学者によるリポートは指摘している。

島の個体数が減っている原因の一つは、営巣地の環境の劣化だ。ケープペンギンは、グアノと呼ばれる鳥の糞(ふん)が長年堆積した場所に好んで巣を作る。
