お笑いコンビの男性ブランコ 「いい読後感」で躍進
「史上最高回」と評する声も続々と上がった、2021年10月に放送されたコント日本一決定戦『キングオブコント2021』。優勝した空気階段にあと一歩及ばなかったものの、ザ・マミィと同点で準優勝したのが男性ブランコだ。
初進出となった決勝の舞台では、ボトルメールを通じて会うことになった男女のネタと、街で偶然出会った男性のネタを披露。清楚(せいそ)な身なりでコテコテの関西弁を繰り出す女性、両手いっぱいに大量のスナック菓子を抱えながらたどたどしく話す男性といったクセの強い人物が登場するが、彼らを頭ごなしに否定することなく物語を展開して笑いを巻き起こした。
今回の『キングオブコント』は、風変わりなキャラクターを受け入れるネタ運びをしたコンビが上位を占めた。「最近は"いい読後感"を残したい気持ちがあって。それがたまたま、お客さんが求めているものと波長が合ったのかもしれないです」(平井)、「僕らは見た目からも、下ネタだったり、ヤンキー役は似合わないんです。消去法で自分たちに合う設定を残してきた結果、いい話のコントが多くなってきた気がします」(浦井)と話す。
結成は2011年。滋賀県の別々の大学だったが、同じ演劇サークルで出会い、お笑いや演劇の好みが似ていて意気投合したという。ともに大学卒業後にNSC(吉本総合芸能学院)に入り、大阪でコンビとして活動を開始した。
転機が訪れたのは14年末のこと。当時拠点にしていた劇場が「よしもと漫才劇場」にリニューアルし、漫才を主軸にした公演が組まれるようになったことで、ネタ作りに影響が出始めたのだという。
「漫才を作れば劇場にも出られたんですが、やりたいのはコントだったので」(平井)、「1年間は悩みながら漫才劇場で活動していました」(浦井)。その頃、背中を押してくれたのが、南海キャンディーズの山里亮太だったという。「山里さんには、『もってる!?モテるくん』(12年~15年)などでほんまにお世話になっていたんですけど、コントでやっていきたいなら東京に出るのもいいんじゃない? と言われて。『腹が減ってたらいつでも飯だけは食わせてやる』と言ってもらえて、それが支えになりました」(平井)
16年に上京して以降、劇場でコントを軸にした活動を続けてきた。2人にとって『キングオブコント』とは、「コントをやっている以上、出ないといけない大会」(浦井)。「霜降り明星、ハナコ、コロコロチキチキペッパーズと、同期はどんどん結果を残して世の中に出ていって、僕らは箸にも棒にもかからなかった。これはもう、才能がないんだろうなと絶望していたところでやっと決勝進出が決まって、人生で1番うれしかった」と平井が振り返ると、浦井は「平井がそんなに思い詰めているなんて知らなかったけど、続けてきてよかった」と安堵の表情を浮かべた。
大切にしていることは「作るだけじゃなくて、ちゃんと見てもらい、反応してもらうまでが仕事というのを忘れないこと」と平井。そう考えるようになった理由を、浦井は「演劇サークル時代、ものすごく稽古に時間をかけた舞台に4人しかお客さんが入らなかったことがあって、集客の大切さを痛感したんです」と説明する。
目下の目標は全国ツアーだという。「どの地方に行っても満席になるようなツアーができたら」と平井が語ると、浦井は「志の輔さんや神田伯山さんみたいに、『今、1番チケットが取れない』と紹介されたい!」と笑顔を見せた。そのために、メディア出演にも積極的に取り組みたいと意気込む。
『有吉ゼミ』や『有吉の壁』(日本テレビ系)など、早速バラエティーにも呼ばれ始めた。大きなチャンスを得て、さらに飛躍を遂げそうだ。
(ライター 遠藤敏文)
[日経エンタテインメント! 2021年12月号の記事を再構成]
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