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人事異動は好機!ミドルも脳はアップグレードしまくり

脳科学者に聞く「脳」の活性化術

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

体の老化とともに最近、脳の老化も気になる――。「ほら、あれあれ!」と固有名詞がどうしても出てこなかったり、変化の激しい仕事環境についていけなかったり。そこで、公立諏訪東京理科大学工学部教授で脳科学者の篠原菊紀さんに、脳にまつわる素朴な疑問や悩みの解決法について聞いた。

年齢とともに衰えやすいのは「前頭前野」と「海馬」

――日常のさまざまな行動と脳活動の関係を研究されている篠原先生に、働き盛り世代の脳について教えていただこうと思います。ある年代になると、そこまで出かかっているのに固有名詞が思い出せない、集中力が低下したように感じるなど、脳の老化が心配になってきます。

まず、脳の老化について基本的な質問なのですが、日常的に頭をしっかり使っているようでも、やはり脳は老化してしまうのでしょうか。

篠原さん 大前提として、脳も体の一部である、ということを認識しましょう。脳も全身と関連しあっている臓器です。脳の健康維持を望むなら、全身の健康を意識することが大切です。

脳の老化というと、認知機能の低下や認知症を思い浮かべるかもしれませんね。2019年に世界保健機関(WHO)は「認知機能低下および認知症のリスク低減のためのガイドライン」を公表しています。このガイドラインでは、認知症の発症や進行を遅らせるために重要なこととして、世界で現状とりまとめられているエビデンスをもとに示しています。挙げているのは、運動、禁煙、高血圧や糖尿病のコントロール、バランスのいい食事。まさにオードソックスな「健康のための習慣」ですね。この記事を読んでいるような方は、もともと健康に関心を向け、行動されているはずで、まずは「その行動は認知症予防にもつながりますよ」と言いたいですね。

――それはほっとする情報です。確かに脳も体の一部ですよね。ということは、見た目や体に老化を感じたら、脳の老化も始まっている、とも考えられます。例えば、「脳のこの部分の老化が進みやすい」といったことはわかっているのでしょうか。

篠原さん 年齢とともに衰えやすい代表的な部位があります。それは「前頭前野」と「海馬」です。

前頭前野は、額の後ろあたりにあり、記憶や学習、感情、言語などを制御する司令塔の役割を果たしています。一方、海馬は短期記憶(新しい記憶)を保存したり、取り出したりといった作業をする部位です。

前頭前野や海馬の働きが低下してくるから、「あれ」「これ」「それ」が増える。「瞬間的に覚えて瞬間的に対応する」といった、ややこしい作業が苦手になってきます。あれをやろうとして部屋を移動したのに「何をしようとしていたんだっけ」、っていうことが起こりやすくなります。

一方で、脳の内部にあり、やる気の中核となる「線条体」は、脳の使いようによっては40歳、50歳あたりに最も充実することがわかってきました。

脳の老化で覚えておきたい3つの部位はここ

経験の蓄積で脳のつながりが増える

――前頭前野と海馬はその機能が衰える一方で、線条体のほうは活性化していく可能性があるのですね。

篠原さん そうなんです。線条体は、経験の蓄積をエサにして、活性化しやすくなるという側面があるのです。

線条体は「やる気の中核」とも言われる部位で、快感に関わるドーパミン神経と強くつながっています。ですから、仕事に対するやる気は、むしろ中高年世代のほうが高まりやすかったりします。

――ベテランになると仕事の面白みが増える、というようなことでしょうか。

篠原さん 経験を重ねることによって「こちらの仕事で使ったロジックやノウハウが、あちらの仕事でも生かせる」というメタ認知(自分の認知活動を客観的にとらえること)が得意になってくるのです。これとあれはつながってるな、と発見することで仕事の面白みも増しますし、40、50歳ぐらいの年代になると、仕事そのものを自分の人生観とのつながりで理解することも増えてくる。それが仕事の醍醐味とか、やりがい、価値になっていくというわけです。

――年を重ねても、脳は衰える一方というわけではないのですね。ただ、前頭前野と海馬は衰えやすくなる。まあ、「すぐ取り出さなくてはいけない系」の記憶は、スマホで検索したりメールの履歴をたどればなんとかなってしまったりするのですが。

篠原さん その通りです。今お話しした、前頭前野や海馬は、「流動性知性」に関係する部位です。

知能研究の草分けであるホーンとキャッテル[注1]は、知性を以下のように区分しています。

●流動性知性…その場その場で何かを覚えて対処する能力。いわゆる脳トレで鍛えようとするのがこの知性
●統括性知性…現状把握、企画、意思決定などを担う、企業で言えば管理職に求められる知性。
●結晶性知性…知識や経験に裏打ちされる知性。経験の蓄積が結びつき、結晶ができあがるように伸びていく

流動性知性というのは、記憶力がその代表。18~25歳をピークに低下することが分かっています。とはいえ、その部分はそれこそスマホやインターネットが補ってくれます。

統括性知性は、40代以降、伸びる人と低下する人に二極化する可能性が指摘されていますが、50代ごろがピークといわれます。マネジメント的な仕事をしていれば、「鍛えようがある」知性といえます。

そして、結晶性知性は、「クリスタルインテリジェンス」などとも言われ、知識や経験や知恵が結びつきを強めることで、人生観、仕事観、社会観などを形成していく。まさに年の功、年を取らないと伸びていきにくい知性です。

[注1]レイモンド・キャッテル(イギリス生まれの心理学者)とジョン・ホーン(アメリカの心理学者)のこと。

――なるほど、3つの知性の中で、統括性知性と結晶性知性は、まだ伸びていく可能性がある。3つを並べてみると、活性化する知性のほうが多いじゃないですか。

篠原さん 決して悲観することはないのですよ。例えば、脳を一つの「意味の空間」のようにイメージしてみてください。

若い頃は、いくつかの経験はあるものの、空間はスカスカなんです。しかし、年齢を重ねるとその中に神経細胞が枝を張り巡らせ、伸ばしていく。同じ面積の中でも枝がたくさんあるほうが、やたらとつながりができるのです。つながりをロジック、または意味として捉え、自我やその人の世界観と結びつけはじめる。このようなつながりあいで、直感、ひらめきも生まれてくることが近年の研究によってわかってきました。

世の中の人は、学習や経験を積むほどパフォーマンスが直線的に上がっていく、と考えがちですが、実際はそうではなく、あるとき急に、ぐーっと上がる。それまでに抱えてきた長期記憶同士が一気に結びついたときにパフォーマンスが上がるのです。脳に、経験による枝がぎっしり詰め込まれているほうが、つながりが自然発生的に生まれてきやすくなります。

――振り返ればいろんなことをやってきた、ということが身になっている、というわけですね。

篠原さん このように量が質に転化することを「量質転化の法則」と言ったりします。経験を積み重ねた脳の中では「量質転化」が起こっている。まあ、そのぶん話が長くなったり、あれもこれも人生観と結びつけたがって、うっとうしい酒飲みになったりするという注意点があります(笑)。

仕事環境が変わる今は、脳も「アップグレードしまくり」

――やる気の中核となる「線条体」は、経験の蓄積で活性化しやすくなる。とてもうれしい情報なのですが、「いや、自分は最近、やる気なんか出てこない。仕事もマンネリだし」という読者もいると思います。

篠原さん マンネリというのは線条体にとって大敵です。毎日同じことが繰り返される、というふうに日常生活そのものがルーティン化してくると、線条体の活性スイッチは入らなくなります。また、ややこしい作業をするときに動員される前頭前野も使われにくくなります。

というのも、我々はすごく優れた脳を持っていて、何か仕事をこなそうとすると、最初のうちはどうやって神経をつなぎあわせてこの課題をクリアしようか、と神経は伸び、脳も活性化するのです。しかし、上手にこなせるようになった途端、脳活動はきれいに下がってきます。つまり、必要なネットワークだけを効率的に使うのが「ルーティン化」ということ。それ自体はパフォーマンスを上げる、ありがたい仕組みなのですが、そればっかりだと脳のトレーニング効果は弱まっていき、線条体もサボってしまいます。

――だからこそ、「新しいことにチャレンジする」ことが大切になるのですね。

篠原さん ただ、読者の方は今、現役で働いている方が圧倒的に多いわけでしょう? それなら、全く新しいことを始めましょう、というよりも「今抱えている仕事をしっかりやりましょう」ということを私は強調したいですね。

――えっ、それはどういうことでしょうか。

篠原さん 会社でいうと、よく人事異動とか配置換えってあるじゃないですか。経理の人が営業に行く、とか。あれって実はけっこう役に立つのです。パフォーマンスだけ見れば、同じ部署で同じ仕事を続けているほうが仕事はサクサクはかどるでしょう。しかし、働く場や働く内容を切り替えて違うことをするということは、その人にとってはまさに新規学習です。しかも、今までの経験を生かしながらの新規学習で、結晶性知性も使えるし、流動性知性を鍛えるトレーニングにもなる、まさに一石二鳥です。

同じ部署で働いているにしても、ちょっと何かを変えてみよう、と新しい作業手順にチャレンジすることが有効です。

また、マネジメントの仕事をしているなら、先ほどお話しした統括性知性も高めることができるでしょう。

加えて、語彙力のピークは50代半ばまで上昇し続け、その後もほとんど低下しないことが研究によってわかっています[注2]。誰かを説得するなど対人的なスキルが求められるときに、語彙力を駆使するように意識すると、語彙力もさらに伸びていきますよ。

――語彙力を高めるには、いつも読んでいる本とは違うジャンルを読む、とかでしょうか。

篠原さん 仕事をしている限り、新規学習ができますよ。今って、DX(デジタルトランスフォーメーション)がどうとか、これまでなかったような言葉がやたらと増えてきています。だからその新たな言葉を嫌がらずに素直に吸収していけばいい、というだけの話です。ルーティンだけではやっていられないほど時代の変化は早くて、今、新規ではない仕事を探すほうが大変です。オンライン会議だって、「対面以外はやりたくない」とか言ってる人は取り残されてしまいますからね。

コミュニケーションだって、放っておくとルーティン化します。新しい人と出会うと、新たな考えに自分を適応させたり、相手の気持ちや表情を読んだりするようになります。表情を読む能力も20代よりも30歳ぐらいがピークになるので、ある程度経験がものを言うのです。

つまり、新たなことを吸収しなくてはいけないような現代では、ミドル世代でも脳はアップグレードしまくりなんだと自信を持ってください。

◇   ◇   ◇

次回は、「詐欺に狙われやすいのは高齢者。年をとるとダマされやすくなるの?」という疑問について聞く。

[注2]Psychological Science;13, 140-144.2004

(ライター 柳本 操)

篠原菊紀さん
公立諏訪東京理科大学工学部情報応用工学科教授。医療介護健康工学部門長。専門は脳科学、応用健康科学。遊ぶ、運動する、学習するといった日常の場面における脳活動を調べている。ドーパミン神経系の特徴を利用し遊技機のもたらす快感を量的に計測したり、ギャンブル障害・ゲーム障害の実態調査や予防・ケア、脳トレーニング、AI(人工知能)研究など、ヒトの脳のメカニズムを探求する。

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