Z世代に刺さるには 熟練広報が考えた「遣唐使募集」

遣唐使は相当危険な任務だったようです=PIXTA

NECパーソナルコンピュータ 広報 部長の鈴木正義氏が執筆した本『もし幕末に広報がいたら 「大政奉還」のプレスリリース書いてみた』(日経BP)が発売されました。鈴木氏が熟練の広報テクニックを武器に、プレスリリースという手法を駆使して日本史の大事件を鋭く斬りまくります。今回はその中から「遣唐使募集」のエピソードを紹介します。 

「船酔いしない」は応募条件から外せない

「遣唐使募集」の広報ポイントは、約1300年前にさかのぼって、その当時における「最近の若者」へ向けた訴えかけであるという点。飛鳥時代のおじさんたちとはちょっと価値観の異なる、今でいう「Z世代」にどうアプローチすればよいのでしょうか。遠い昔の時代とはいえ、世代間の格差や認識の違いみたいなものは当時もあったでしょう。そこをうまく考慮しなければ、彼らの心にメッセージは響きませんよね。

◇  ◇  ◇

私は仕事の関係で英語を必要とする機会がたびたびあります。しかし、帰国子女でもなく留学経験もありません。むしろ学生時代は英語が大の苦手だった私にとって、英語のコミュニケーションは今でも苦痛以外の何ものでもありません。その一方で、英語を勉強する気もないくせに若い頃アメリカ文化に憧れていたのも事実です。いかにも燃費の悪そうな派手なオープンカー、幹線道路沿いのダイナーで食べるハンバーガー、ポップコーンを片手に観戦するメジャーリーグ。私の世代であればこうしたアメリカの風景に憧れを抱いた人は少なくないでしょう。

いつの時代でも海外の文化に憧れを抱く若者はいたでしょう。飛鳥時代、若者たちの憧れは唐の国だったのではないかと思います。日本の歴史の中でほとんどの時代、中国は世界の超大国という位置づけでした。時に日本の脅威となることもありましたが、常に最先端の科学、文化、政治システムなどのお手本となる国で、日本の歴史に与えた影響は計り知れません。

その進んだ文化を吸収しようと送り込まれていたのが「遣唐使」です。実際には遣唐使はエリート中のエリートだったと思われますが、もし遣唐使を公募するようなことがあれば、唐の文化に憧れた優秀でモチベーションの高い若者が、たくさん応募してきたのではないでしょうか。ちょっと募集をしてみましょう。

報道関係者各位


大宝2年(702年)


大和朝廷留学推進室



「遣唐使ツアー」参加者募集のお知らせ


最先端の科学や文化に触れてみたい若者を待っています!


 
 大和朝廷では、唐の国の最先端の科学や文化を吸収する目的で、舒明2年(630年)犬上御田鍬(いぬがみのみたすき)を大使とする第一次遣唐使を派遣しました。以来、唐の皇帝と定例ミーティングを持ち、意見交換を行うなど、多くの成果を上げてきました。

 ここ30年中断していた遣唐使ですが、朝廷はこのたび遣唐使の再開を決定、大使をサポートするツアー参加者を募集します。

 遣唐使は世界最大の都市長安を訪問。皇帝への謁見をはじめ、様々な外交行事を行います。また、最先端の技術や文化についての調査も行う予定です。ツアー参加者はこうした貴重な経験をするだけではなく、帰国後、身につけたスキルを生かせば、それぞれの分野で指導者になれるチャンスが待っています。

 1.募集人数:500人

 2.適性:船酔いをしないこと。外国語に興味のある健康で若い方

 3.唐の皇帝とのミーティングにおいてディスカッションに積極的に参加し、堂々と自分の意見を言えること

免責事項:途中嵐による船の難破、賊の襲撃などによりツアーが中止となる場合があります。唐の皇帝に失礼な態度とみなされると、国ごと滅ぼされる可能性があります。その他、帰国困難なケースもありますので、参加にあたっては同意書にサインをしていただきます。

本件についてのお申し込み、お問い合わせ


maybenoreturn@go_to_tou.gov

次のページ
目上の人へ対等にものを言う若者には注意