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20数億年前に酸素急増の謎、1日が長くなったから?

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ナショナルジオグラフィック日本版

地球の大気には酸素がおよそ20%含まれている。多くの生命が生きていけるのはそのおかげだ。しかし、できたばかりの46億年前の地球の大気にはほとんど酸素が含まれておらず、24~22億年前に急激に増えたことが地質学的な記録からわかっている。

その理由は、光合成を行うシアノバクテリア(藍色細菌)が海で増えたからと考えられている。だが、光合成を行う微生物はもっと前から地球に存在しており、だとしたらなぜこの時期に大量に酸素が増え始めたのかは大きな謎だった。

このたび、その謎にまつわる驚くべき新説が発表された。ドイツ、マックス・プランク海洋微生物学研究所のジュディス・クラット氏と米ミシガン大学の共同研究者らは、地球の酸素が急増したのは1日の長さが長くなったから、すなわち、地球の自転が遅くなったからである可能性を、2021年8月2日付で学術誌「Nature Geosciences」に発表した。

大気中の酸素濃度の上昇と自転速度の変化は、それぞれ何十年にもわたって研究されてきた。だが論文によると、両者が結び付けて考えられたことはこれまでなかったという。

地球の自転が遅くなる理由

酸素濃度と自転速度の関係の前に、まず地球の自転が遅くなる理由を説明しよう。

地球の歴史において、1日の長さはこれまで大幅に伸びてきた。30億年以上前の地球では、1日はわずか6時間程度だったとも言われる。現在、1日が約24時間となっているのは、長い時間をかけて地球の自転が遅くなってきた結果だ。

その変化は潮の満ち引きと関係している。海のそばで1日過ごしたことがある人はおそらく、海岸で潮が満ち引きする様子を見たことだろう。あの一見穏やかな動きは、地球と月の間に生じる巨大なエネルギーから生まれるものだ。その結果、海に潮汐(ちょうせき)が生じて海水と海底との間に摩擦が生まれる。いわゆる「潮汐摩擦」だ。

潮汐摩擦は地球の回転エネルギーを奪うため、自転の速度が遅くなり、1日が長くなる。このプロセスは、何億年もかけて非常にゆっくりと進行するせいで、1日の長さの変化は容易には観測できず、また海底の地質記録を追跡するのも困難だった。

「5億5000万年前の地球の自転速度については、かなり確かなことがわかっています。というのも、貝にある成長線から1日の長さがわかるからです」と、米プリンストン大学の惑星科学者クリストファー・スポルディング氏は言う。「しかし問題はそれ以前の、サンゴや貝が存在しない時代です」

そんな太古の昔の地球の姿については、「モデルを使って検証を行います」と、米カリフォルニア工科大学の惑星科学者ウッドワード・フィッシャー氏は言う。「日長は規則正しく変化してきた歴史があり、その変化の方向性も把握しています。ただし、細かいことについてはあまり多くはわかっていません」

地球の自転速度を再現するモデルは数多く存在するが、1980年代末から用いられてきたあるモデルによると、1日の長さは着々と伸び続けた後、25億年ほど前に約21時間で安定し、その後は数十億年にわたってさほど変化しなかった。

そのころ、地球の自転速度は「共鳴ロック」と呼ばれる平衡状態に到達していた可能性がある。地球の自転に影響する力には、実は速度を速めるものもある。太陽が地球の片側をより多く加熱して、海や大気を膨張させると、地球の自転をわずかに前進させる力が働く。この力が自転を遅らせる力と釣り合う「魔法の自転速度」に到達すると、その後はかなり長い間変化が見られなくなる。

そして、クラット氏らが今回の研究でこのモデルを使用したところ、1日の長さと酸素濃度の変化がほとんど重なったのだ。「酸素のパターンと自転速度の類似を見たときは、非常に興奮しました」とクラット氏は言う。

多方面に及んでいた日照時間の影響

シアノバクテリアは今も地球の水中で繁殖を続けている。そして、米五大湖のヒューロン湖の底にある「ミドルアイランド・シンクホール」の微生物マットに生息するシアノバクテリアが、研究チームに新たなパズルのピースを提供してくれた。

深さ約23メートルの陥没穴であるミドルアイランド・シンクホールの水には、高濃度の硫黄が含まれる一方、酸素は少ない。科学者たちは、こうした条件は数十億年前の古代の海に似ていると推測している。この環境を研究すれば、古代の生態系がどのように振る舞っていたかを大まかに把握できる。

その結果判明したのは、シンクホールのシアノバクテリアが含まれる微生物マットでは、酸素の生産と消費が極めて拮抗していることだった。

「微生物マットは、ゼロサムゲームに非常に近い状態にあります。たくさんの酸素を生成する一方で、たくさんの酸素を消費しています」とフィッシャー氏は言う。「まさにギリギリといった状態であり、ごくわずかに酸素が外部に漏れ出していることが、この論文からはわかります」

興味深いことに、1日が長くなってもシアノバクテリアの光合成の効率は変わらなかったものの、微生物マットから放出される酸素の量は増えた。昼夜が切り替わるペースが落ちて日照時間が長くなると、酸素が拡散しやすくなるからだった。事実、クラット氏の実験でも、湖底の微生物のサンプルをより長く日に当てるほど、より多くの酸素が大気中に放出されることが確かめられた。

「だれもがすぐに思いつく観点ではありません」

今回の結果は、初期の地球やそれ以外のさまざまな環境について今後研究を進めるうえでの、新たな道を示している。

「1日の長さがもたらす効果は、地球の酸素増加に関する根強い謎を解決する鍵となるかもしれません」と、マックス・プランク研究所の計算生物学者で、クラット氏の研究の共同執筆者であるアルジュン・チェンヌ氏は言う。

「この研究はまた、そのほかの地球化学プロセスが、1日の長さの変化にどのような影響を受けるかを考える際にも役立つかもしれません」。例えば、日長や酸素濃度の変化は、初期の大陸における地球規模の炭素循環や風化に影響を与えていたかもしれない。

米ジョージア工科大学の地球生物学者デボン・コール氏によると、この研究はほかの惑星における生命進化を考察するうえでも役立つ可能性があるという。今回のクラット氏の研究は、1日の長さが地球以外の生物圏や大気にどのような影響を与えるかについて、より明確な知見をもたらした。

ほかの恒星の周りを回っている幾多の惑星の中には、自転と公転の同期によって、片側では昼、もう片側では夜が永続的に続くものもある。「そうした惑星では、大気を再生できるような生物圏が存在できるのでしょうか」とコール氏は言う。「もしかすると生物の居住が可能な場所は、昼と夜の間に位置する、恒久的な『日没』状態にある輪の部分だけかもしれません」

さらにコール氏は、酸素と生命誕生についての研究において、1日の長さというのは「だれもがすぐに思いつく観点ではありません。そこに着目したのはすばらしいと思います」と述べている。

(文 REBECCA DZOMBAK、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年10月3日付]

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